ベンチプレスにおける腹圧について

ベンチプレスは腹圧を掛けにくい。

 ベンチプレスで腹圧を掛けることは意外と難しい。理由は、ベンチ台に寝た状態で脚を踏ん張ろうとすると、自然と背中が反らされ起立筋が収縮し、腹筋が緩むためである。腹筋の収縮と腹圧はイコールではないが、全身の力を振り絞ってブリッジを高く、脚の力を使おうとすればするほど腹圧は掛けにくい状態になる。思いっきり息を吸って腹に力を入れようとしたら、背中を反らす姿勢と背中を丸める姿勢のどちらがいいか、ということである。
 要は『正しいベンチプレスのフォーム(≒パワーフォーム)』は、腹圧を強く掛けようとするのにはあまり適していない。

 では、ベンチプレスで腹圧は不要かと言うと、そうではない。胸椎と比べて腹が高いブリッジで、脚の踏ん張りが苦手だとか、腰に不安を抱えているタイプは、(程度によるが)強く腹圧を掛けた方がメリットはあると考えられる。腹圧を高めることで腹の高さがさらに強調される、脚の踏ん張りの弱さなどを補える、または背中の過緊張の解消が見込めるからだ。

腹圧の掛け方

 よく言われている(気がする?)方法は、大きく息を吸い込むことだろう。だが、実際出来ている人はあまりいないと思われる。理由は単純で、ベンチ台で寝た姿勢からブリッジしつつ大きく息を吸い込むこと自体が難しいからだ。他にはベルトをすることで感覚がつかめる、という言説も聞いたことはあるが、ベルトをすると背中を反らす感覚も強くなるので、むしろ腹圧が掛けにくくなる可能性もある。

 じゃあどうすればいいのか。いわゆるエアベンチで練習するとやりやすいはず。個人的には以下の練習方法で感覚をつかめると思われる。

①鏡やカメラの前で上半身裸になって立ったまま『全力』で身体を反らしてブリッジを作る。
②脚や臀部に力を入れ、両手でバーを握った姿勢を取る。
③ゆっくり限界まで大きく息を吸い込み、小さく息を吐いて呼吸を止める。
④そのままの状態で、鏡などを通じて自分の腹を見る。恐らく、アバラが浮いていたり、腹が凹んでいるだろう。
⑤もう一度息を吸い込み、小さく息を吐いてまた呼吸を止める。これを可能な限り繰り返す。相当辛いはずだが、耐える。
⑥呼吸の限界を迎えたら、吸い込んだ空気を使って、ほんの少し腹を突き出すイメージで力を込める。もう一度鏡をチェックしながら片手で腹を触って腹圧が掛かっているか確かめる。
※腹を膨らませ過ぎようとしないように注意。

 いきなりベンチ台に寝て腹圧を意識しようとしても難しいので、立位で感覚をつかむと良いだろう。わざわざ裸になる理由は「腹圧が掛かっていない状態」を視認することが目的である。だいたいアバラが浮き出て、腹が凹んでいるだろう。限界まで背中を反らしてブリッジを作ると、自然とそうなるのである意味正しいが、その状態は腹圧がほとんど掛かっていないと言える。
 コツは呼吸の強さにある。経験則だが、自分では限界まで息を吸ったつもりでも、余力を残していることが多い。限界と思った地点からさらに大きく息を吸って小さく吐く、可能ならそれを何度か繰り返し、最後に息を止めることで、腹圧が掛かった状態のブリッジを体感出来るはずだ。

そもそもベンチプレスで腹圧ってそこまで大事か?

 最初に言ったとおり、ベンチプレスのフォームに強い腹圧は適していない。強いプレッサーに特有である、胸椎が高く、脚の踏ん張りが強いタイプには強い腹圧はむしろ邪魔になる可能性が高い。もちろん、一切不要とは言わないが、腹圧を強く掛けようとすればするほど、背中は反らし辛いのだ。
 まず考えてほしいのは「自分のフォームに強い腹圧が本当に必要か?」という視点。繰り返すが、一切不要とは言わないものの、掛け過ぎると逆に危険なので、自分のフォームとよく相談する必要がある。

追伸

 ベンチプレスと腹圧の関係をテーマにした記事を見たことがなく、自分で書いてみようと思いついたのがキッカケでこの記事を公開したが、当初、「これを1時間未満で書いた自分が怖い…おいおい天才か?」と思ったが、読み返すと文章ダラダラで理解し辛いし、大したことを言っていない気がした。
 写真を添えた方が分かりやすいだろうなと思ったが、写真を撮るのは本当に面倒。「絵で描けば?」と考えたが、芸術性が高すぎて理解されない可能性があったため、断念した次第である。

 長らくジムから離れ、久しぶりにベンチプレスをしたところ、わが身のあまりの弱体化ぶりに嗚咽を漏らしながら色々考えたり思い出したり、そんな中で出てきた記事なので、「割と実用性が高いのではないだろうか?」と自画自賛しつつ、「高いブリッジから逃げた人間の言い訳では?」みたいな気持ちもなきにしもあらず。なんつって。

以上

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