&(アンドのマーク)は使わない
ビジネスに使えるデザインの話
ビジネスにデザインの知識はけっこう使えます。苦手な人も多いから1つ知るだけでもその分アドバンテージになることもあります。noteは毎日午前7時に更新しています。
欧文のルール
日本人は知らない欧文(主に英語)のルールというものがあります。これは英語の授業でも教えてくれません。それゆえか翻訳者からの原稿にも、このルールに則っていないものがすごく多くあります。
知っておくと何かとアドバンテージになるので少しずつご紹介していきます。ご紹介した欧文のルールはこちらのマガジンにストックしていきます。
「&」の正体
日本では「アンドマーク」と呼ばれていることが多いこの記号。正しい名前は“ampersand”(アンパサンド)です。日本でも馴染みのある記号で、企業名などでもよく目にするのではないでしょうか。
さてまずこの「アンパサンド」とはどんな意味の名前なのか、という話から始めます。
ampersandは、“and per se and”という言葉群で構成された名前で、
「この記号(and)は、それ自体で(per se)で「and」を意味するもの」
という意味があります。これが「アンパサンド」という名前の意味です。つぎに記号について。
“&”この記号は、“et” または “ET” の合字(ごうじ:くっついで一つになった文字)で、etはラテン語で「and」を意味した言葉です。この「et」で構成されているという出自は、イタリック体や筆記体では、その字形から、とてもわかりやすいものがあります。
「&」は使わない
至る所でよく目にする「&」(アンパサンド)。しかし実は基本的に「文章内ではこの記号は使わない」ことになっています。どこでそんなルールが設定されているのか。
それは、欧文のルールを記載した本がアメリカ版とイギリス版であります。前者が“The Chicago Manual of Style”(シカゴ マニュアル オブ スタイル)で後者が“Oxford Style Manual”(オックスフォード・スタイルマニュアル)です。
これらのマニュアルのなかでは、この「アンパサンドは文中では使わない」としています。通常の文章、見出し、タイトルでは、アンパサンドをandの代わりとして使わないこと、とされています(*3)。
ではいつ使えるのか。Spec Aid(世界標準のスペック英語)およびBusiness Writers' Blogでは、「&が使える例外」として以下の場合が紹介されています。
会社名などの固有名詞、例えば "Crown & Co."(注:ここではスペースが使われます)。
ロゴ、タイトル、名前がデザイン要素としてマークを含む場合。
小説、歌、アルバムなどの創作物のタイトル。ストーリーや脚本などの映画のクレジットでは、&はandよりも緊密なコラボレーションを示す。The Writers Guild of America(全米脚本家組合)では、特定の脚本で2人の脚本家が共同で執筆していることを示すために&を使っています。
スペースが限られている場合は、表や括弧の中に入れる。
“R&D”、“rock & roll”、“country & western”などの一般的な省略表現。
アンパサンドは、リストアップされた項目の "and "が項目名の一部であり、区切りではないことを示すために使用できる(例:“Rock, pop, rhythm & blues and hip hop”)→こで“rhythm & blues”を“rhythm and blues”としてしまうととても読みにくく、誤解を招く表記になる。
AT&T "や "A&W "のように、それ自体が略語である場合(注:ここではスペースは使用しません)。
出典に複数の著者がいる場合の引用では、最後の2人をつなぐためにアンパサンドを使用する(Smith, Greene & Jones, 2008)。ここにアンパサンドを使うことを推奨しているスタイルガイド(APA)もあれば、"and "と書くスタイルガイド(Chicago Manual of StyleとThe MLA Style Manual)もあります。
複数の宛先を指定する場合 "Mr. & Mrs. Pitcairn”とか“Judy & David Pitcairn.".
一般的にetc.と表記されるet cetera(「そして、そのような」)というフレーズも、et + c(etera)の組み合わせを表す“&c.”と省略するのが適切です。
ご覧の通り、けっこう面倒くさいです。なので基本、社名や何かで元々から“&”が使用されていないときには“&”を使わないのが良いようです。
前後にスペースを入れるのか?
&の前後にスペースを入れるのか、入れないのか。上記の「&が使える例外」は、“Chicago Manual of Style”をベースにしたもので、この場合は
「&の前後の文字がすでに略字である場合は&の前後にスペースを入れない」というルールになっています。
Johnson & Johnsonは、Johnsonが省略されていないので&の前後にはスペースが入ります。しかしAT&Tは、American Telephone & Telegraphの略であるため、&の前後にはスペースが入りません。
しかしOxford Style Manual(イギリス版の欧文ルールブック)では、いつでも&の前後にスペースを入れることになっています。
余談:ヤン・チヒョルトによる「アンパサンドの研究」
ヤン・チヒョルト(Jan Tschichold)(1902–1974)というドイツの著名なタイポグラファー・カリグラファーが、1953年にアンパサンドの複数のバージョンの歴史をまとめて出版しています。これは、288のアンパサンドを厳選し、解説を加えたもので、西洋の文字とタイポグラフィの歴史を簡潔かつ簡潔に紹介したものでした。
ヤン・チヒョルトについてはこちらの記事で詳しく解説しています。
まとめ
アンドマーク「&」についての細かいルールは覚えなくても良いわけですが、ちゃんとした表記をしたければ、
もともと名前についていないなら「&」が使わない
というのが良さそうです。たとえばメニューなどで“Fish & chips”なんて表記したくなるかもしれませんが、”Fish and chips”にしておいたほうが良いわけです。
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参照
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*3
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