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「補色」とは“エヴァンゲリオン初号機”

ビジネスに使えるデザインの話

ビジネスにデザインの知識はけっこう使えます。苦手な人も多いから1つ知るだけでもその分アドバンテージになることもあります。noteは毎日午前7時に更新しています


エヴァンゲリオン初号機のカラーリング

画像引用:映画『エヴァンゲリヲン新劇場版:序』

1995年、今から30年ちかく前にテレビ放映が始まった『エヴァンゲリオン』。そのストーリーの奥深さには当時から現在まで多くのファンが魅了されてきましたが、また同時にこの作品のクオリティをぐっと強く支えるデザインの質の高さにも強い魅力があります。

今回はエヴァンゲリオンのデザインのなかでも「色」、それもエヴァンゲリオン初号機の色に注目したいと思います。奇抜な紫と黄緑色の配色、これは補色(ほしょく)同士のコンビネーションです。

さて「補色」とは何なのか?組み合わせるとどうなるのか?ということに注目してみたいと思います。

補色の前に色相環(しきそう)

マンセルシステム(アメリカの画家・美術教育者であるアルバート・マンセル(1858-1918)によって作り出された表色系)での色相環
日本語版ウィキペディアの+-さん - 原版の投稿者自身による著作物, CC 表示-継承 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=114755149による

色相とは、「色味の違い」です。英語だと「hue」。色の三属性(後述)の一つ。赤とオレンジ、オレンジと黄色または、黄緑と緑などの近い色は「類似色」とよびます。

色相環

アイザック・ニュートン『光学』
Public Domain, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=510265

この類似色同士を並べてできた円環を色相環(しきそうかん)と呼びます。英語では「color wheel」「color circle」と言います。万有引力のアイザック・ニュートンが、著書『光学』(Opticks)において、この色相環について触れています。

クロード・ブーテに夜1708年の7色と12色の色相環
By C. B. (probably Claude Boutet or it's editor, Christophe Ballard[1]) - Traité de la peinture en mignature (The Hague, 1708), reproduced in The Creation of Color in Eighteenth-Century Europe, Public Domain, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=3359814


補色

この色相環の円において、隣にあるものは「類似色」でしたが、正反対にあるものを「補色」(Complementary color)と言います。

補色には、互いの色を引き立て合う相乗効果があります。これを補色調和といいます。ただし色の明度が同じ場合は、目がチカチカしていまう現象を引き起こしてしまいます。

補色残像

手術着が青緑色なのは理由があります。
画像出典:レタスクラブ

ある色をしばらく見つめると、見なくなったあとも視界にその補色が残像として残る現象があります。これを補色残像(ほしょくざんぞう)と言います。英語は“complementary afterimage”。これは元刺激と負の方向の残効が生じる陰性残効 (negative afterimage) の一種です。

今一度、色相環
日本語版ウィキペディアの+-さん - 原版の投稿者自身による著作物, CC 表示-継承 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=114755149による

色相環をみるとわかりますが、赤色を見続けると青緑色が残像として残ります。医者は白衣を着ているのに、手術をするときには青緑色の手術着を着用しています。これは身体を切り開き、血にまみれた内蔵などをかなり明るい(明度と彩度が高くなる)医療用照明のもとで見続けると青緑色の補色残像が視界に発生してしまうのですが、残像が発生してしまうと精密な作業に支障をきたしてしまいます。手術着や手術室が青緑色だとこの補色残像効果が軽減します。


色の三属性

色の三属性、色相、明度、彩度
画像出典:dic Color & Comfort「色の三属性と色立体とは

色相は「色の三属性」のひとつ、と冒頭あたりで説明しましたが、では色の三属性とは何か。それは色そのものの違いが色相ですが、この他に「鮮やかさ」と「明るさ」という属性が色にはあります。それぞれを「彩度」「明度」と呼びます。これら3つの属性の値により、色が決まってきます。たとえば色相が同じ「赤」でも鮮やかなで明るい赤とくすんで暗い赤もあるということです。

ちなみに属性が3つのあるので、色は三次元にして表すことができます。これを「色立体」と言います。英語は「Color solid」。

1900年のアルバート・マンセルによる色球体
Albert Henry Munsell - A Color Notation, パブリック・ドメイン, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=3499398による


エヴァンゲリオン初号機の配色の関係は補色

画像引用:映画『エヴァンゲリヲン新劇場版:序』

さてエヴァンゲリオン初号機の配色に話がようやく戻ります。ご覧の通り、紫と黄緑色がエヴァンゲリオン初号機の配色で、この2つはバッチリ補色の関係にあります。

明度に差がある

補色の明度が一緒だと目がチカチカしてしまう」と説明しましたが、エヴァンゲリオン初号機の紫と黄緑色は明度に差がある配色です。ゆえに目はチカチカせず、そして黄緑色が発色しているように感じます。これは紫の明度が低く、黄緑色の明度が高いために起きる現象です。


現代の映画は補色だらけ

映画、アニメなど数多くの映像作品は、今オレンジとブルーの補色を使った配色で溢れています。『ジョン・ウィック』から『鬼滅の刃』まで予告動画のみならず作中でっもオレンジとブルーにあふれています。中でも『ブレードランナー2049』という映画が特徴的です。

映画『ブレードランナー2049』
Image source: IMDb “Blade Runner 2049”

なぜブルーとオレンジの配色に溢れているのか、という理由についてはこちらの記事で詳しく説明しました。



余談:エヴァンゲリオン初号機は企画段階では「白色」だった

エヴァンゲリオンの企画書
画像出典:cinefil

エヴァンゲリオンの企画書は後に公開されており、そこで見る当初のエヴァンゲリオン初号機は白色でした。しかし批判が多く、配色が練り直され、紫と黄緑になりました。


まとめ

では、補色をどう利用するのか? 色に関して、ゲーテやニュートンの時代よりずっと以前から研究されて続けていますが、不明なことも多々あります。補色なら良いかと言えば、そうでもなくエヴァンゲリオンの他のユニットは、補色を使っているのは初号機のみで、他のユニットは類似色を使っている場合が多いんです。

それでも配色を考えるさいにはまず補色をトライしてみるのはとても有効です。

そのまえに「どんな印象を与えたいのか?」という狙いの設定を行うことが重要ではあります。つぎにその印象に近いモデルを探し、よく見る配色を調べる、というがスムーズな手順となります。王道を知らずして「崩し」(オリジナル感を出す特徴)はできません。

このとき実は「補色」の知識が役立ってきます。ストックした王道デザインに「補色」を使っているものが多いのか、あるならそれはどんな補色なのか、または類似色なのか、その理由はなぜなのか?

ここまで調べて考察を重ねていくと、使う色についての方向性がある程度まとまっています。あとはひたすらトライアル&エラーでベストを選ぶ、ことなります。

これが補色という知識の制作における使い方のひとつです。


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参照


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