日向ぼっこ04

第4話

「すぐに所長を呼んできてくれ」
ナツはいつもと違い、震えた声でレオとクロに話しかけた。クロはその声から察してすぐに部屋のドアを蹴破る勢いで飛び出していった。
「一体なにが見えたんです?」
レオはナツがいまも目を離さずにいるモニターをみた。
「……これがカメラの映像ですか?」
モニターにはドローンから送られてくる映像は空に浮かぶ円盤を映し出していた。それは戦前の映画に出てきそうな見た目で空の上で比べる基準となるものがない分余計に非現実感を出していた。

ドアが勢いよく空き所長が入ってくる。すこし遅れて息を切らしたクロが部屋に入り、ドアを閉めた。
「ナツくん状況を簡潔に教えたまえ」
所長はスリッパが片方脱げてしまったのも気にせずパソコンのモニターをレオを押しのけるようにして覗き込んだ。
「目標の座標付近に到着したら上空に浮かぶ謎の円盤を発見、ドローンを手動で円盤を中心として旋回させている状態です」
「ビーコンはつけたかね?」
「発見した直後につけました」
「レオが苦労してつけてたやつじゃん、ほら『射出装置』って名前の部品だよ」
クロがレオの背中を強めにバンバン叩く。
ドローンを改造した時につけた「射出装置」というのはこれのことだったのかとレオはようやく理解した。
「ビーコン以外はどうだ?」
「ちゃんとデータも送られてきています。あと何回か周回すれば十分かと」
「よし、その調子でなナツくん」
所長はようやく熱が冷めたようで脱げた片方のスリッパを取り戻しに部屋の入り口あたりまで戻ってなれた動作でひっくり返ったスリッパを返しながら履いた。所長は椅子に座ったはいいものの、まだソワソワしていた。
レオはまた何もすることがなくなった。また小説を開いて、ため息をついた。

 「データ集め終わりました。ドローンを帰投させます」
ドローンの帰りは自動でいいらしくナツはキーボートをいくらか叩くと席を立った。
「それでデータは?」
ナツが髪をいじりながら聞いた。
「これです」
ナツがいつも使っているノートパソコンにグラフ化されたデータが映し出されている。
「これからあの円盤がなんのために浮かんでいるのかを調べなきゃいけないのかぁ」
クロがそうつぶやき、レオ以外の全員がみるには小さいパソコンの画面を取り囲み、うーんと唸っている。
「湿度が……」
「気圧が……」
近くで聞いている限り行き詰まっているらしい。
「おーいレオ」
クロがペンをレオに向かって投げた。レオはそれをノールックでキャッチする。
「なんですか?」
「お前も見るんだよ」
こういう時クロは何を言っても聞かないと知っていたので仕方なく小説を閉じて、パソコンの画面をみる。
「…僕が見ても科学者じゃないし、わかりませんよ」
レオはクロにペンを返しながらそういった。
「だからだよレオくん。科学者じゃない違う畑にいたからこそ違う目線からものを見れるだろう?」
ナツはほらはやくと言わんばかりにパソコンの画面が見えるように体をどかした。ナツの言い分ももっともなので真面目にグラフをみる。
「うーん、なんか二酸化炭素のグラフおかしくないですか?」
「おいおいレオ、大気成分なんてどこみて…」
クロがバカにしようとしてグラフを見た所で言葉がとまる。
「これ…明らかに異常値ですね」
「そうだな」
所長もナツもそのグラフを見始めた。
 「レオ早速お手柄だな」
 クロがレオを肘でつついた。