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【小説】あと81日で新型コロナウイルスは終わります。

~10万円がかかっていても、
あなたは冷静でいられますか。~

「『千代田区民に一律化12万円を給付』だって。」

昼休憩中、同僚の看護師がマスクごしにアキナに話しかけてきた。

「えっ‼ 羨ましい!今から千代田区に引っ越そうかな。」

アキナが答えると、同僚の看護師は、

「今から引っ越してもダメみたいよ。『対象は4月27日時点で住民基本台帳に記録されている住民。新生児は来年4月1日までに生まれた子であれば支給する。』だって。」

と言った。

「ということは、また例の問題が起きるわけだね?」

アキナが眉間に皺を寄せながら言うと、同僚の看護師も、

「だね~。」

と同調した。



新型コロナウイルス感染者の対応で医療従事者に多大な負担がいっているのは有名な話だが、

特別定額給付金10万円の給付の影響で、お産施設のある全国の産婦人科の医師や助産師にさらなる負担があったのはあまり知られていないと思う。

そのときは『新生児も含め、4月27日時点で住民基本台帳に記録されている住民』とされたため、

出生証明書を求める人で、お産施設のある産婦人科は混乱した。



「このクリニックはお産施設がなかったから良かったけど、知り合いが勤めている産婦人科病院なんて、4月27日前後に新生児の家族がひっきり無しに問い合わせしてきて、ちょっとしたパニックだったって。」

同僚の看護師がそう言うと、

「4月27日なんて、緊急事態宣言中で院内に妊婦さんと新生児以外入れないようにしていたから、事務の人が駐車場に待機していた旦那さんに出生証明書を渡しに行っていたって言っていたわ。『院内の感染予防対策のために10万円を諦めてください』って言っても、金額が高いから誰も納得して諦めてくれないだろうから、現場はやるしかなくて、ほんとうにてんやわんやだったって。」

アキナも同調した。さらに、同僚の看護師は、

「あと4月28日に生まれた新生児のパパが、『27日に生まれたことにしてください』って医師に懇願して、それを近くで聞いていたママが可哀そうだったって。『わたしがもっとイキんでいれば』って。」

と言った。アキナは、

「うわ~、それは可哀そすぎる。本人の前で言わないでほしいよね? ただでさえ、コロナ禍での出産は心の負担が大きいのに。」

と言うと、同僚の看護師は、

「4月28日以降の出産予定日の妊婦さんが、『陣痛促進剤で出産を早めてください』って言ってきたり。どうやら旦那さんがコロナで給料が大幅ダウンしたから、奥さんが何とかしようとしたみたい。あっ、昼休憩おわりだ。」

そう言うと立ち上がって、休憩室をあとにした。

新型コロナウイルスが終わるまで、
あと81日。

これは、フィクションです。

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