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『書く習慣』1ヶ月チャレンジ Day9 最近泣いたこと


大人になると人前で泣く機会はめっきり減る。

子どもの時はちょっと転んだだけで泣いていたのに。

大人になってもすぐにわんわん泣いているようじゃ「この人は大丈夫か」と心配されてしまう。



大人になってから泣く機会と言えば、「本や映画を見たり読んだりした時」が一般的に多いのではないだろうか。

最近よく『涙活(るいかつ)』という言葉も聞くけれど、敢えて意識的に泣いてデトックスのようにストレスを発散する方法もあるらしい。

私は泣いてストレスを発散したい!という動機で本や映画を見たり読むことはないしあまり泣きたくない(見られたら恥ずかしいから)人間なのだけれど、それでも泣いてしまった本や映画、ドラマのお話をちょっとだけしようかなと思う。


①『トッケビ』(ドラマ)

韓国ドラマと言えばまずこれ、というほど有名な作品。
韓国ドラマ好きなら説明はいらないほど有名だが、かなりざっくり説明すると一千年の歴史を超えた大掛かりなタイムトラベル系ロマンスである。


私が初めて見た韓国ドラマがこの作品で、そして初めてドラマを見て大号泣したのもこの作品である。
ドラマを見て泣くなんてそんなこと今までになかったからかなり強烈に記憶に残っている。

初めて観たのは7年くらい前なのでだいぶ前になるが、今でも時々見返すとほろほろっと泣いてしまう。
初めて見たときはベッドに寝っ転がって観たせいで涙で溺れかけた。
ドラマを見るときは決して寝転がって観てはいけないと学ぶ機会にもなった。

もしドラマのように人は4回転生するのなら、今隣にいる人は前世でも大事な人だったかもしれないし、逆に決別したり不遇な別れ方をした人かもしれない。
そう思うと周りにいる人たちが愛おしく思えるし、こうやって毎日他愛もない会話をして生きられているだけで有難いなとすら思える。

自分がドラマのような輪廻転生をしていたかは分からないが、視聴後は一気に世界が美しく見えるから不思議である。



②そばかす(映画)

この作品は比較的最近上映されていて、今年の年明けに新宿の小さい映画館で観た作品だ。

人に恋愛感情を抱かない主人公が"恋愛至上主義"のこの世界で幸せを探していく様を淡々と描いている。

私自身恋愛感情を抱いたことのない人間だし、恋愛至上主義に嫌気が差していたため、主人公に自分を重ねて観てしまった。

先程挙げたドラマでは非情な運命のすれ違いに切なさで涙したり愛の美しさに涙したのだが、この作品はまた少し違う。
主人公に降りかかる周囲の言動がまるで自分に言われているかのように感じて悲しくなったり、怒りが込み上げてきて大号泣してしまった。

映画館であんなに泣いたのははじめてである。
一番後ろの端っこの席を取って良かった。


ストレス発散のための涙活と言うにはあまりにも負の感情が強い涙だったが、普段から言われている言葉にこんなに傷ついていたのだと気がつく事が出来た貴重な映画体験となった。

それでも途中途中に出てくる主人公と周囲の人間との温かい関わりに心慰められ、最後には心も身体が軽くなった走り出したくなったのを覚えている。


個人的には時間を置いて何回か観たら自分の中で感想が変わるかもしれないし、色々な人に観てもらって感想を聞きたいなと思う作品だった。


③ムーミン(本)


ムーミンと聞くと世代によってもイメージが異なると思うが、子ども向けの童話、アニメーションのイメージが強いのではないだろうか。

子ども向けの面白おかしいムーミン一家の珍道中、と思えばどこからともない陰鬱さや少し暗い色彩。
ムーミンのアニメがトラウマだという人もよく聞く。(現に私の母がそうである)

私がムーミンの原作本にたどり着いたのは社会人2年目の休職中だった。
元々キャラクターは好きだったが内容までは詳しいわけではなく、暇を持て余し図書館で借りたことがきっかけだった。

3日くらいで一気に読み進め、ドはまりしてしまい4日目には全巻セットを買った。


ムーミンの原作は全9巻。
1冊1冊の分量はそこまで多くはなく、本を普段あまり読まない人でも読みやすいのではないかと思う。
かと言って子ども向けだから物語が単純でつまらないということはない。

むしろどちらかと言うと大人向けだなと思う話も多々ある。

私が特に読んで泣いてしまったのは6巻の『ムーミン谷の仲間たち』である。
実際、この巻から「大人向けに書いた」と作者であるトーベは言っており、短編集のようになっている。


その中のお話で、いじわるなおばさんから冷たい仕打ちを受け他人の目から姿がみえなくなってしまった『ニンニ』という少女が登場する。

ひょんなことから温かいムーミン一家に迎えられ、世話を焼かれたり特に気を使いすぎることなく自然体で子どもたちと遊んでいるうちに少しづつ姿が見えるようになってくる。

そんな中、いじわるをされても黙っているニンニにミイが
「それがあんたの悪いとこよ。
戦うってことを覚えないうちは、あんたには自分の顔はもてません」
と挑発するように言い放つのである。

ああ、これ私のことだなと思ったのだ。
私も自分に危害が加えられたとしても滅多に怒らない。
戦うのは疲れるし、そもそも戦い方も分からない。自分の気持ちに蓋をしてニコニコしていたら、いつの間にか自分が何を考えているのか、嫌なことさえ分からなくなってしまっていた。

ムーミンパパがふざけてムーミンママを海に落とそうとするのを見たニンニはムーミンパパのしっぽに噛みつく。
”怒る”という気持ちを取り戻したとき、ニンニは元の姿にやっと戻ることが出来たのである。

この話が私の心にかなり強烈に響いたし、私もニンニのように”怒る”ようになった。
そして最近やっと本当の自分の気持ちが見えてきたのである。
やっと自分の心と身体を使って生きることが出来た感覚だ。


他にも、人に嫌われ疎まれることでどんどん身体が冷たくなり周囲のものを全て凍らせてしまうが明るく温かいものを求めさまよい続ける女の魔物。

夏の明るく温かいところでは生きづらく、冬になるとやっと姿を表わし活動できる生き物たち。

几帳面で生真面目な性格からどんどん神経質になってしまい、嵐がくるのを極端に恐れ何もできなくなってしまう人。

”男として、父としてのプライド”を守るため家族を巻き込み孤独に突き進んでしまう人...


読む人は皆どれかに「こういう人どこかで見たことある」「これ、私かもしれない」と当てはまるエピソードやキャラクターがいるんじゃないかと思う。

読みながらクスっと笑えたり登場人物の言葉にグッときたり、背中を押してもらえる大好きな作品だ。





最近泣いたことを話そうと思ったら最後はやけに長く好きな作品を語ってしまった。

脱線もいいところである。

しか誰かしこうして書いていると「作品で泣く」と言っても色々な種類の涙があるなあと思う。

作品に触れてることで感情を揺さぶられ、新しい自分や隠されていた自分を発見できる面白さ。

作品を見て泣くことはあまり好きではなかったが、なかなか悪くない。

これからも感情を揺さぶられたいなと思う。


それとやっぱり最後にどうしても付け加えたいのだけれど、個人的にはムーミン作品が染みる人間は皆友だちになれるんじゃないかと勝手に思っている。

誰かいませんか、私と友だちになってくれる人。

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