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【UXD】ストーリーマッピングのすすめ(後半)

1.はじめに

今年もよろしくお願いします。シイナです。
スクールでは卒業制作に向けて動き始めた今日この頃です。

さて今回も、前回に引き続き「ストーリーマッピング」についてお話しします。
↓前回のnote

前回は主に「ストーリーとは?」に目を向けて、サービスやプロダクトにおけるストーリーの重要性や、ストーリーとUXとの関係性をまとめました。
今回は、ストーリーに必要なものと、実際のサービスを例にしたユーセージストーリーというものについてまとめたいと思います!
参考文献は前回と同じく以下になります。

2.ストーリーに必要なもの

前回サービスやプロダクトにストーリーは重要と言いましたが、ではストーリーに必要なものはなんでしょうか。
それは、ピークの感動と良い終わり方といえるものだと思います。

参考文献に、次のような例が載っていました。

1970年台、人の痛みの感じ方の実験で、以下4パターンの被験者を準備した。
①治療期間が長く、ずっと激痛
②治療期間が短く、ずっと激痛
③治療期間が長く、最初は激痛だが徐々に痛みが消える
④治療期間が短く、最初は激痛だが徐々に痛みが消える

①②の被験者の感想は「最悪で二度と受けたくない」だった。
しかし、③④の感想はそんなに悪くなく「もう一回受けても良い」が多かった。
この実験の結果は「人間の記憶に一番残るのは、体験の長さではなく、体験のピークや終盤の山場に起こった出来事である」という「ピークエンドの法則」とよばれる。

参考文献p96を要約
参考文献p97より

この例を読んで私が思い出したのは歯医者での体験です。
親知らず(特にひねくれた生え方をしていて抜く処置が難しい親知らず)を抜歯する際、処置は非常に痛いものになります。
そこで確かに私も、最後までずっと痛い処置だったときは終わった後も気分が最悪になりましたが、
同じ痛さで同じ時間でも、最後に痛くない軽い処理(クリーニングなど)が入ると「あぁ終わった〜〜この処理ならずっとやっていいよ」と思うほど心穏やかになったことを思い出しました。
おそらくその時私の中で、
「(体験のストーリーの主人公である私が)痛いことを乗り越えたおかげで、痛い処理はもう終わって痛くない処理になった」というストーリーを成り立たせたのだと思います。(辛すぎて)
ピークを超えて、かつその後の感想も良いものであれば、本来痛くて嫌な体験であるはずの抜歯も「悪くなかったかな」くらいの体験になったのです。

前回ストーリーの重要性のところでも軽く触れましたが、実体験も相まって人間の感じ方について次のように考えました。

どんなサービスやプロダクトにもストーリーがあり、ストーリーをよくすることでUXを良くすることができる

そのストーリーの主人公はユーザ
そしてユーザは人間であり、人間には感じ方の法則(「ピークエンドの法則」など)がある


つまり、 人間の感じ方を考慮してストーリーを作ると、素晴らしいUXを生み出すことができる、と言えるのではないでしょうか。

3.ユーセージストーリー

3-1.ユーセージストーリーとは

最後に、ピークエンドに沿ってストーリーを組み立てる方法として、ユーセージストーリーと実際の例を紹介します。

ユーセージストーリーとは、ユーザーがプロダクトやサービスを以下のようなステップバイステップで使っていく過程を表した物語

状況説明:キャラクターや価値観、目的を明らかにする
事件/問題の発生:問題やきっかけ
盛り上げ:目的達成のためのいくつかのステップ
危機:サービスを使う上でのハードル
クライマックス:問題を素晴らしく解決され、価値を体験
落とし込み:締めに向かう
エンディング:目的達成

参考文献p98を要約
参考文献p98より

まさに、これまで述べてきたピークポイントが「クライマックス」という名前で感情の一番高いところにきています。
クライマックスで終わってはいけないので、しっかりその後の落とし込み・エンディングも必要になります。

3-2.ユーセージストーリー使用の例

参考文献に紹介されている「FitCounter」という運動アプリの例で、ユーセージストーリーを使用した実際の例を見ていきたいと思います。
(以下参考文献p122~133を要約)

FitCounterは、会員登録をすると話題や友人をフォローして友人と一緒に運動ができるということを売りにした運動アプリです。
ただ、「友人をフォロー」の段階でユーザの離脱率(プロダクトの使用をやめること)が非常に高いという問題がありました。

参考文献p123より

そこで問題解決のためそれまでのユーセージストーリーを分析したところ、以下のような離脱率の原因が明らかになりました。

状況説明:健康になりたい
事件/問題の発生:アプリの利用開始
盛り上げ:会員登録する、話題のフォローを求められる
→話題のフォローに何の得があるのかわからず、最初の本格的な離脱が起こる!

危機:友人のフォローを求められる
→自分や友人の個人情報を入力するほどアプリを信頼していない&運動をしたいと思って始めたアプリで友人をフォローすることで得られる価値がわからず、混乱し一気に離脱率があがる!

クライマックス:クライマックスがない
落とし込み:ここまで辿り着いたのになんの得られる価値がない
エンディング:離脱する

さらにストーリーのピークであるクライマックスの「友人のフォロー」についてインタビューなどでより調査を進めると、
・トレーニングをソーシャルなものと認識していない
・トレーニングはスポーツの種類や目的によって一人でやりたかったり友人とやりたかったりする
などの意見も出てきました。

そこで新しく立てたユーセージストーリーが以下です。

(中略)
盛り上げ:会員登録する、回答するほど個人的な内容になっていくアンケートによってオリジナルのトレーニングプランを作成
→「自分に関係のあるもの」と思うようになる

危機:トレーニングプランを一人でやりたいか、友人とやりたいかを尋ねられる
クライマックス:自分オリジナルのトレーニングプランを手に入れる、そのプランでの健康の向上も示される
落とし込み:プランも、利用のメリットもわかったので利用しようと思う
エンディング:プランと利用方法をもとに運動を開始する
→このアプリでのストーリーを長く続けるうちに健康になる「続き物」となる
→離脱率が下がり、アプリのサービスを愛するユーザが増える

この新しいストーリーにより、FitCounterは、
・新規登録2倍
・課金ユーザ10倍
となり、この後もいろんなユーザの状況に合わせたストーリーを描くというストーリー第一の精神で開発したところ、ユーザ数も価値も3倍に拡大したとのことです。

このFitCounterの例で私が考えたことは、
この「アプリの場合は」、UX改善においてストーリーが有効だったということです。
例えばもし今回のアプリの離脱率が高いという問題を、ペルソナというUXの手法でやっていたとしたらうまくいかなかったのではないかと思います。
理由は、このアプリは開発側が「ソーシャルな機能で友人と運動すること」に確信のある価値を置いて、そこにユーザが選択できるような(つまりユーザをプロダクトのストーリーの主人公にさせる)ストーリーを当てはめたから成り立ったものであり、
最初からソーシャルな利用方法を好むユーザのみを想定していては成り得なかった成功だと思うからです。

UX向上の手法はいろいろありますが、サービス・プロダクトに合わせた手法を取ることがかなり重要なのではないかと今回学びました。

4.まとめ

前半後半のまとめです。

まず、ストーリーマッピングとは、
「ユーザーに味わって欲しいプサービス・プロダクトの利用体験を視覚的にプロットごとに配置していくこと」でした。

そのためまず前半で、
・ストーリーがユーザを「ストーリーの主人公」にすることができること
・ストーリーを練ることでユーザは体験の中で感動し、良いUXにすることができること
そして後半で、
・ピークエンドに人間はストーリー性を見出すこと
・ピークエンドに沿ったストーリーの組み立てをユーセージストーリーでできることとその実例
を示してきました。

「ストーリーマッピング」にあてはまるものとしてはユーセージストーリーですが、それらを理解するための「ストーリーとは?」「ストーリーってなんで重要なの?」「ストーリーってどんな構造なの?」を丁寧めにまとめさせてもらいました。

5.おわりに

今回の「ストーリーマッピングをはじめよう」という参考文献が面白すぎて、何と今回の記事、3500字を超えてしまいました。
前回が1800字なので、合わせて5000字超えてますね。。軽くレポートですね。

たくさん引用させていただいた通り、参考文献は分かりやすい説明・図・文体でそれこそ物語感覚でサクサク読めてしまうので、よければ読んでみてください。

ただ、自分の意見を書くところはやはり勉強不足をまだまだ感じるところではあるので、自信を持って意見を言えるように、
引き続き今年も勉強頑張っていきます!!

応援よろしくお願いします!


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