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金の糸

金の糸は刃で持って切ろうとすればするほどに
強度を増し、刃は刃こぼれする

辛くて苦しくてもう終わりにしたい
再び金の糸にハサミを添えても
さらに金の糸は強度を増す


金の糸の強さに圧倒される
ああ、なんて強いんだ
この糸を切れる人はいるんだろうか


自分で糸を切ろうとして
きれなかったのだから
わからない


糸は、心そのものである糸は
人の言葉や、自分が自分でかけた呪いによって
心がグサリグサリと傷つけられるたびに


色を失い、細く脆くなってゆく


雨風に長い間さらされるうちに
ボロボロに老朽化した糸は


ちょっと誰かが軽く触れただけでも
ぷつり、と切れてしまう糸になる


雨風にさらされた糸は
雨を避ける術を知らないんだ

だって金色の切れない糸であることを
知ってるから


雨風にさらされたって自分は金色の強い糸だと
思ってるんだ


だって金の糸だったもの。


人知れず脆く薄く細くなっていく糸を
そっと察知し、


糸が金色に光れる場所へそっと誘う



ボロボロになるまで繋いだ糸
どうかその糸をさらに踏みつけることをしないで


きれいに、丁寧に、大海原へ
そっと旅させて



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