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小説を書く。その8【BL小説】

 教室はざわざわした空気に包まれている。
 僕は配膳されたばかりの給食の皿を目の前に、じっと動けずにいた。

 今日のメインは、レバニラ炒め。
 レバーってなんだかモソモソしてるし、味だってそんなに美味しくないし。口に近づけたら何かヘンな臭いするし。
 今年の担任の先生は、『一口でも頑張って食べましょう』って主義の先生で、苦手なものがたくさんある僕にとっては、給食の時間は地獄に等しい。

 そもそも一口でも食べられるなら、それはキライな食べ物じゃないんだよな。
 あーもう。

 箸も持たずにじっと動かない僕を見て、隣の席の水谷くんが声をかけてきた。
「なに。食べねえの?」
 俯いた姿勢から、ゆっくりと首を傾けつつ彼を見て、僕はため息をついた。
「うん……苦手なんだ、レバー」
 そうなのか、と牛乳パックを片手に水谷くんは目を見開いた。

 水谷くんは、体も大きくて、運動神経もよくて、クラスでも目立つ方だ。唐揚げとか余ったら率先して取り合いじゃんけんに参加してるし、給食が楽しみで仕方ないってカンジで、ある意味羨ましい。

 給食がなかったら、学校もまだ楽しめるのになあ。アレルギーではないから、お弁当を持ってくるわけにもいかない。

 はぁ、と大きく息を吐いた僕を、水谷くんが何故かじっと見ている。
「?」
 何だろうと僕も彼を見上げたとき。
「……内緒だぞ」
 ぼそっとつぶやくと、すでに空になっていた自分の皿と、僕の憎っくきレバニラ炒めの皿を、素早く交換した。そして僕に向かってにやっと笑う。

 ……救世主だ。

「あ、ありがとう」
「……また、食えないモンあったら言えよ」
 うん、と僕は大きくうなずいた。

 僕が自分の気持ちに気づいたのは、それからまもなくのことだった。



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