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等身大に浮かぶ

向い風がふいてから、すぐに追い風が背中を押すと、海に揺蕩うような感覚を持って、そして海に沈む。夏の生暖かい水の中、瞬きをした。
瞳に纏う塩水は眼の奥の小さな傷にちりちりと染みる。7月が近い。

彼は“海が見たい”と言いながら、川を見つめていた。ついに彼が海を見る事は無かった。彼は“川の人”だったような気がする。いつまでも海に流れ着く事のない、細い川。それが一つの答えで彼の全てだった。

声を殺してみる。嫌な言葉が脳裏に幾つも流れ込んでくるのを留める薄い川。解ける光が壁を削り、誰もいなかった廊下に長い影が差すと、あなたは二人。同じ音を出し、同じ階を共に指す。求めていた夏、足を水で濡らした光景が夜を深く、あなたを見つめている瞳の血管は、赤い。

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