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ビッチなキャリアで何が悪い。

離婚を考える際、「収入に対する不安」は多くの母において最も重い足かせのはずだ。離婚に関する相談を受けたり、メディア主催のシングルマザー座談会に呼ばれたこともあるが、皆口を揃えて言うのが「お金を理由に迷っていた時間がとにかく長かった」だった。離婚に踏み切る上で本当に苦しいのは、感情面の整理が完了しても、次から次へとやってくる壁の多さに疲弊してしまうことだと思う。ことお金の話については、ほぼ全てのシングルマザーの脳内9割を占める大問題だろう。これだけの割合を占め、さらに悩んでも悩んでも解決しない人が多い理由ははっきり言うと「時すでに遅し」だからだ。お金に関して興味・関心を持たぬ女性が多すぎるのだ。もちろん過去の私も例外なく、だ。

私の履歴書はキレイじゃない。

”真っ白なまま嫁ぎ、生涯添い遂げる”なんて到底無理で、恋愛・結婚と同じように私のキャリアも”新卒から定年まで”という美しい履歴書とはかけ離れていると思う。ただし並ぶ企業名はいわゆる”ハイスペ”。職歴上の私はとてもビッチな女だ。

故によく誤解を受ける。”ハイスペ”に選ばれてきた港区女子にでも見えるのだろうか。職歴を話すたびに、正直な話、心の底から申し訳なくなる。なぜなら私は自分のキャリアにはコンプレックスしかないからだ。

社名だけが立派なキャリアへのコンプレックス。

先日の小田急線の事件に関して、少し面白い考察記事を見た。「勝ち組の女」というパワーワードが先行し過ぎていて「モテない・冴えない中年男の僻みによる犯行か」という感想を抱きがちだが、彼の社会人としてのスタート期が”就職氷河期”という点を絡めて考えると何だか自分のツギハギだらけのキャリアや人生とも少し重なって見えた。

私もとんでもない求人倍率時代を経験している。リーマンショックの影響ももろに受けた。詳細は伏せるが、あるエリアのHR部門売上が「昨対同月比3%」という驚愕の数字を弾き出した時代。某自動車メーカーの新卒採用がサクッと消え、数億円という予算を預かっていた専属部署が丸ごと吹き飛んだ。やりたい仕事なんて選べる余裕はない(選択肢は黒字部署のみ)、希望のキャリアを歩もうとしたら外に出ざるを得なくなった。女性としての賞味期限も実感している。社会人としての市場価値と女性としての賞味期限を考えたら、どんなに厳しい求人倍率でも大海へ大冒険に出るしかなかった。

その後も、女の人生の変遷に応じてキャリアは次々と変わっていった。「仕事は充実しているが、激務過ぎて長く続けられる環境ではなかった(連日深夜3時帰宅)」「結婚・出産後、復帰したものの病弱な子どもの対応でディレクター職を続けられなくなった」「シングルマザーで仕事と子育てを両立させるには時間を切り売りする働き方では限界がきた」…理由はともあれ、結局のところ私は中途半端なのだ。

だから”狭く深く”人生やキャリアを歩んできた人のことは猛烈に尊敬している。私のようなツギハギだらけの人間とは全く違うからだ。新卒時の上司は「不器用にも程がある」と言った。返す言葉もない。鼻息荒く外に飛び出したくせにこの有様だったからだ。

所詮、どの隣の芝も青く見える。

女性にも思い描いていた理想の人生がある。それが「結婚して家庭に入る」の場合もあれば、「何も諦めない欲張りな生き方」を求めている場合もある。もしかしたら初見の方には、私の生き方は後者で、それを実際に手にしてきた女のように見えているのかもしれない。

でも事実は全く違う。
私もまた、自分の未熟さに泣きながら離婚を決意したのだ。

夫と向き合わなかっただけではなく、私は「お金」とも向き合っていなかった。離婚する前提で結婚なんかしていないし、まさか自分が離婚することになるとは思いもよらなかったし、お金で頭を抱える日がやってくることも全く想像していなかった。

だからこそ、今、自分の経験も含めて声を大にして言いたい。

女性こそお金について貪欲になるべきなのだ。稼いで、貯めて、そしてもっと欲張りに増やすべきだと思う。それはいつか細切れ・ブツ切れになるキャリアをリカバーする役割も担ってくれるし、一馬力だろうが二馬力だろうがそんなものは関係なくあなたにとって大切な家族の人生を豊かにする一翼になるだろうから。

このご時世で「働かないで家庭に入る」という選択肢は、もはやリスクだと思う。過去に女性の再就職支援という国の委託事業に携わったことがあるが、それはそれはもう地獄絵図だった。しかも元キャリアウーマンだった女性ほどド派手に玉砕する。そりゃそうだ。多くの女性が自宅から近く(しかも乗り換えは嫌だという方がとても多い)て安定した大手企業の事務職で、子ども達が登校後〜帰宅するまでの時短勤務を希望する。一方で彼女達が”使える”というPCスキルはもはや化石で、子育てで10年近く社会から離れれば電話をとりシステムに入力することもできない。にも関わらず、世代が違うのに過去の実績を自慢し、プライドだけが幹部クラスだった。元社長秘書だろうがなんだろうが、とにかく扱いづらくて仕方ない。居心地の悪さから日に日に足が重くなり、結局家庭に舞い戻ってしまう。自分の市場価値を客観視できない環境で古漬けになっていた現実は、いくら「私ならきっと大丈夫!」と思っていても自尊心を容赦なく傷つける。当初のモチベーションなんて、見事なほど(跡形もなく)木っ端微塵に打ち砕かれていった。

離婚決意できない理由が、もしも「お金」だったとしたら。どんな些細な接点でも構わないから、今すぐ社会復帰をするべきだと思う。働きながら考えた方がいい。社会に出て「なりたかった自分は何なのか」「家族以外から必要とされる喜びとは」「経済的自立で得られる自由さ」について、実感を伴いながら考えるべきだと思う。

社会人になりたての頃、上司から「考えると悩むは違う。悩むは思考停止の状態だが、考えるは前に進んでいるんだ」と教えられたが全くその通りだと思う。誰かの人生を羨んだり、自分の人生を後悔したり、これからの未来に不安を感じて悩んでいてもその場で足踏みしているだけで何も変わらない。時間だけが過ぎ、あなたはどんどん老いて、より一層市場価値を落としていくだけだ。

順風満帆な人生の人なんていないと思うし、仮にいたとしてもほんの一握りだ。皆、何かしらのコンプレックスを持ち、それとどう向き合うか受け止めるかの違いで人生の結果が変わるのだと思う。(小田急線の事件なんてまさにだろう)

「私には何もない」「何もできない」なんて決めつけないで。現時点でできないことだらけだったとしても、それはできるようになればいいだけのこと。
●縦軸:できること⇆できないこと
●横軸:やりたいこと⇆やりたくないこと
の2軸マトリックスで整理すればいい。「できないこと」は切り捨てなくていい。できなくてもやりたいことなら、少しずつ始めればいいだけなのだから。現時点での自分のキャリア・スキルの棚卸しをすることから始めれば、”悩む”からきっと卒業できるはず。

人生行き当たりばったりの私が言うのも説得力に欠けるが、今がどん底だったとしたら、その場にいるよりは些細な一歩でもそこからズレた方がきっといい。視点や視座が変わったら、自然と何かが動き出すと思うから。自分を諦めないで。私に言えることはこれだけだけど…。

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