【リブリオ小説】好きです☆よ〜言わんけど

▼2023年5月ふみサロ課題本
「その本は」ヨシタケシンスケ著、又吉直樹著(ポプラ社)

▼本文
 その本は、好きなのが誰なのか悟られたくない中学生男女4人の、本音の言えない葛藤を描いた、片想い専科のアオハル心理小説だった。
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 テレビで河合奈保子の「ラブレター」が流れていた頃、男女入り混じった4人の中学生が卒業を間近にして、グループで交換ノートを始めた。

稲田幸子「中学最後の思い出に、今日から交換ノートを始めたいと思いま〜す。記念すべき第1ページめは、私から書いていい? まずは、推しについて書きあう事から始めてみ〜ひん? 私が好きなのは巨人の中畑選手。今日も一日、絶好調!」

坂本弥生「私が好きなものって、占いかもしれない」

篠田智樹「俺が一番好きなんはYMO。そやから自分でも曲を作っとる。宗介に新しく出来た曲のテープ聞かせたる。オモロイ曲ができたと思うよ」

佐藤宗介「智樹の曲、ドラムがイマイチやと思う。俺は阪神ファンやから、幸子の好み、よう分からん。秀樹の妹、奈保子のボインが好きですなんて、よ〜言わんけど」

稲田幸子「私も智樹くんの作った曲、聴きたいのにな〜。女子は聞けないの? 宗介くん、よ〜言わん言うて、言うとる。中畑選手は憧れの大人の人なんだよ〜」

坂本弥生「運命数占いっていうのがあってね。その計算方法は、……。私は運命数が7の人と相性がいいらしい」

篠田智樹「稲田ごめんな! 俺の作る曲は男のロマンやから、女子は聞けん、男限定や。ちなみに、俺の運命数調べてみたら、7やった」

佐藤宗介「占い興味ないわ〜。俺もYMO好きやし、阪神ファンやから、篠田と友情感じるわ〜。稲田がマッチやトシちゃんより中畑の方が好きなんが信じられへん。ヨッちゃんが好きって言うんなら、まだ分かるけど」

稲田幸子「弥生〜! 智樹くんの運命数が7なんやったら、智樹くんと付きおうたらいいんじゃない?」

坂本弥生「私の今月の星占いは、こんな感じだったんやけど……」

 智樹は、ずっと弥生に片想いだったが、弥生の片想いの相手が誰なのか知っていたので、告白する事ができなかった。交換ノートを承諾したのは、メンバーの中に弥生が混じっていたからだ。幸子は、智樹が気になる存在だったからこそ、勇気を振り絞って交換ノートを提案したのであったが、途中で、智樹が好きなのが弥生である事に気づき、弥生の実らぬ片想いをなんとかしようと奮闘する。……が、不毛に終わる。最後まで互いに本心を告げられなかった4人は、別々の高校に進学する事が決まり、やがて卒業し、バラバラになるのだが……

 あれから5年、時が過ぎ、二十歳の成人式。久しぶりに再会した4人を待ち受けていたのは……
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 その本は、近年の研究によって、小説としての体裁を保ちつつ、実は作者の自伝であったという事実が明らかになっている。

▼今回の作品の執筆意図
「その本は」を読んで、久しぶりに小説を書きたくなったので、思い出を、そのまんま小説風にして書きました。もちろん、その本は〜で、書き出すというルールを自分自身に対して課して、書いたのは言うまでもありません。

 なお、以下のYouTubeを聞いてから、上記作品を読むと、より作品の中に没入することが出来るかもしれません。



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