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銀河を揺さぶるシックスパッド

3年前の話です、僕アパートの中で、孤独だったんですよ、近隣住民に忌み嫌われて、っていうのも、壁にシックスパッドを貼りつけて、ずっと壁を揺らしてたんです、で、ある時からはっきりと隣人の声が聞こえるようになったんです、壁がね、痩せたんですよ、隣人との境界である壁はどんどん薄くなり、とうとう隣人の姿が見えました、渡辺謙さんでした、渡辺謙さん、アパート暮らしでした、でも渡辺謙さんって、人として僕と落差がありすぎるんで、僕は孤独なままでした、同じ空間に人が二人いるのに、僕は孤独なままでした、渡辺謙さんは、もっと孤独だったと思います、だって渡辺謙さんっていやこれ以上は話すのはやめましょう、で、壁が薄くなりすぎてそのアパートは違法建築になったんです、壁、太らせなきゃなって思って、なにかないかなにかないかなって頭捻って捻って、引っ越ししました、逃げました、はい、であれから3年やっと壁を太らせる方法を見つけたんですよ、アパート全体を太らせばいいんです、アパートが太れば必然的に壁も太るじゃないですか、アパートを太らすにはその町ごと太らす、ってなると、日本を太らす、じゃあそのためには、地球を太らす、結局宇宙を太らさなきゃいけないんですよね、ただ宇宙は常に膨張しています、膨張しているのに、壁は一向に太らない、いや実際は少しずつ壁は太っていってるんです、でも宇宙の膨張に比べたらそれは微々たるもので、あの壁ってもう何億年経たないと元の厚さには戻らないんです、それってつまり、シックスパッドが銀河を揺さぶったってことなんすかね?あんなに小さな振動だったのに、宇宙には大きな影響を及ぼしている、いいないいなシックスパッドっていいな、シックスパッドに俺もなりなたいな、腹筋始めよう、腹筋付いたら、俺はシックスパッドってことだ、いや、誰もが自分自身のシックスパッドなのかもしれない


小さい頃からお金をもらうことが好きでした