見出し画像

生理学からみる更年期症状の機序

エストロゲンは排卵前の期間に分泌され、妊娠しやすい体づくり・外見上にもいわゆる丸みを帯びた『女性らしい』とされる体つきをもたらしてくれるホルモンです。

更年期症状は、『エストロゲン』と『プロゲステロン』という2種類の女性ホルモンのうち、主にエストロゲンの分泌量低下により引き起こされます。

ですが、意外と具体的に何がどうなって起こっているのか分からないことが多いのではないでしょうか。

問題が生じる機序が具体的に分かると、具体的な対処法もイメージしやすいですし、問題改善に取り組む意欲も湧きやすいですよね。

ですので、今回はそんな更年期症状の機序について生理学の視点からやさしくお伝えしてみようと思います。


☆エストロゲンの働き

・コラーゲンの産生を促すことで弾力に満ちた瑞々しい肌を作り、関節のしなやかさを守る。

・膣粘膜の厚みを保ち分泌物を促し自浄作用を作ることで細菌の繁殖を防ぐ。

・毛髪の太さ・その密度を保つ。

・コレステロールを材料に産生される為、血中コレステロール値を抑えてくれる。

・血中の骨吸収を穏やかにすることで破骨スピードを穏やかに、またカルシウムを骨に取り込むホルモンであるカルシトニンの分泌を促し、骨形成を促す。

・精神的ストレスにより交感神経活動が亢進した際に起こるレニンーアンギオテンシン系=RAS(血圧上昇させるための一連の生理学的現象)作用を抑制することで、過剰に交感神経優位の状態となることを防ぐ。

・セロトニン合成を促す為、セロトニンがノルアドレナリンやドーパミンの働きを適度に抑制し、精神安定・睡眠状態を整える。

・アセチルコリン・ノルアドレナリン・ドーパミンを調整する為、記憶・集中は高まりやすく楽しさや心地よさといった情動も得られやすい。

・その分泌が安定して行われることで、同じく中枢を視床下部とする自律神経系のバランスを整える。心拍・発汗・血管作用など。



更年期にはエストロゲン分泌量が減少することで、エストロゲンが関与していた上記の働きがうまく行えなくなり、不快症状が引き起こされます。

その症状を『更年期症状』と呼びます。

また、『更年期症状』が日常生活を阻害してしまうほど酷くなると『更年期障害』とされます。



★エストロゲン分泌量低下により引き起こされる不快症状

・コラーゲンの産生が減少することで肌にはシワ・たるみが、関節には痛みを生じやすくなる。

・膣粘膜の萎縮や分泌物減少により性交痛が生じやすく、また自浄作用低下により痒みが生じたり雑菌の繁殖により膣炎が引き起こされやすくなる。

・毛髪の一本一本が細くなり薄毛・白髪が生じやすくなる。

・コレステロールが消費されない為、血中のコレステロール値は上昇しやすく動脈硬化が起こりやすくなる。動脈硬化により脳血管系の疾患リスクが高まる。

・血中の骨吸収が促進されることで破骨が進み、一方で骨形成は緩やかとなることで骨形成のサイクルは乱れ、骨粗鬆症のリスクが増加する。また炭酸カルシウムで構成される『耳石』の配列に乱れが生じることでめまいが生じやすくなる。

・RASの抑制効果が弱まることで自律神経は交感神経優位に傾きやすくなり、冷え・頭痛・肩こりといった症状が起こりやすくなる。

・セロトニン減少により、不眠・不安感を生じやすくなる。

・アセチルコリン・ノルアドレナリン・ドーパミンの分泌バランスの乱れにより物忘れ・うつ・意欲の低下・イライラが起こりやすくなる。

・その分泌が滞ることにより視床下部から分泌の指令が連続して出され続ける為に、同じく視床下部を中枢とする自律神経系機能が混乱し、動悸・息切れ・過剰な発汗・冷え・のぼせなどが生じやすくなる。




生理学的に見るだけでも更年期症状は多種多様ですが、環境要因やメンタル要因といった複合要因でその症状はまた変動するようです。
またそのお話は別の機会に掘り下げてみようと思います。

更年期以降は、無理せず。
やわらかく自分に寄り添ってあげましょうね。

            参考文献:世界文化社 『更年期の教科書』 高尾美穂


本日のやわらかなアーサナ

●合蹠(がっせき)のポーズ

 副交感神経の働きを高めてくれる前屈のポーズです。
 ゆったりとした呼吸を深めながら全身の緊張をほぐしましょう。

①両脚を前に伸ばして座った姿勢から立て膝→左右に開く→左右の足底を合わせる。※この時、出来るだけ骨盤は起こして座りましょう。難しい方は、お尻の下にクッションなどを敷いて無理なく骨盤を起こした姿勢を作りましょう。

②一度、息を吸って頭頂から天井へ糸で釣り上げられるような意識で背中を伸ばし、息をゆったり長く吐きながら出来るだけ骨盤を起こしたまま前屈しましょう。首・肩はリラックスしておきます。

③両手は無理のない範囲で前方へ伸ばし、そのままの姿勢で呼吸を数回続けます。吐く息に合わせてすこ〜し手を前に歩かせ、前屈を深めましょう。

④吸う息に合わせてゆっくりと体を起こし①の姿勢に戻り、全身の緩みを感じましょう。




最後まで読んでいただき有難うございます。

以下のオープンチャットでは、自律神経についての知識を持つ専門家(理学療法士・作業療法士・栄養士)が無料で定期配信を行なっています。私の記事もこちらで紹介させていただいています。
ご興味のある方は、登録してみてくださいね。




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?