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ファッション業界の危機を憂うMagazine

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日本のファッション市場が停滞している。長きにわたる消費低迷や通信やデジタルなどへ支出シフト、そしてシェアエコノミーの台頭など様々な背景があるが、ファッション好きの筆者として今後の… もっと読む
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ファッショントレンドのしくみと業界構造 その2

二年ぶりくらいの継続記事になります。 この記事一回目は筆者の記事としては超ロングセラーで、寄稿から2年間も様々な読者の方に閲覧いただきました。 前回の記事は欧州のトップトレンド発信から、どのように日本のアパレル&小売業界に落とし込まれてトレンドが伝搬してゆくのか?概要フローを書きました。しかし時代が進み、日本人の生活価値観やライフスタイルの多様化でトレンド発生のメカニズムも大きく変遷してきたのです。 ファッショントレンドの発信源の拡大 ファッション業界の企画担当、バイヤー

『服を“売る”ならこんな風に』……ファッション市場救済のために。

『ファッション市場』が縮小してる。 これは様々な複合要因があるが、その中の大きなものとして ●服(お洒落)の楽しみ方を今の時代に合わせて啓蒙する人がいない ●従来のアパレル業界人と激安リテイラー、オンラインプレイヤーや通販専業メーカー等の意識ギャップや確執の存在 ●ファッションのロールモデル(憧れを喚起するリーダー)不在 などがあるだろう。 筆者は、文章はさほど上手ではないのだが、 『視覚的なチャートで構造を解き明かす』ことは得意としてる。 なので、図式+解説という

プラットフォーマー幻想、その実態は『グローバル・マス80億人』に縛られた“がんじがらめ”ビジネス その1。

我々が今触れてるデジタル空間は『自由な世界』か? そんな問い掛けをちょっとしてみたい。 なぜかと言うと、僕たちは、ここ10年くらい猛烈な洗脳を受けてきたことに、つい 3日くらい前に(笑) 気づいたからだ。 例えば…… 僕たちが普段普通にモノを買うようになったECサイト(On-line Shop)。 これって、どこもかしこも似たり寄ったりのUI(画面、操作、使い勝手)だけど、ホントに使い易くて、楽しい売場(店舗)だろうか? 素面に帰って良く良く眺めてみると…全然イケてない

今年の気温推移とファッション消費雑感。

衣料市場の低迷が続いている。原因は色々複合的だけど、昨今の天候不順、長期的な高温化傾向は大きな要因。これはファッション業界には悩みの種だ。 以下、直近4カ月の今年と昨年の気温比較をグラフ化してみた。 見ての通り、昨年は7月末をピークとして半端ない酷暑だったが そこを頂点として気温上昇も降下も急カーブ(登りも下りも急坂)。 これに対して今年は、はっきりしない夏。 7月がそもそも異常な低温。 8月以降は気温変化が非常に小さく、超なだらかな下降曲線だ。 このなだらかな変化とい

ファッション店舗の『売場作り』を変えよう! その2

商業施設のフロアレイアウト日本のファッション市場とそれを担うはずの店舗が縮小して苦戦している理由は数多くあるが、 まずは商業施設(ショッピングモール)側の事情とテナント店舗側の目論見の食い違いがある。以下の大型郊外型SCのフロアマップを見て欲しい。 この中で 知っているブランドやショップ名称はたくさんあると思うけど、この広大なショッピングモール内で、何か単一のファッションアイテムを捜そうと思ったとき、貴方は探せるだろうか? 例えば今年のトレンドで言うと、“偏光レンズ”のお洒

“モテ”とファッションとの距離 その1

モテ系ファッションと正統派ファッション(そんなものが在れば…だけど)の間には大きな距離がある。 さらに、女性の場合は、異性モテファッション以上に結構意識されるのが、同性モテ(うけ?)ファッションだ。 一方で男性の場合は、かなり昔からモテ意識よりも『自己主張とこだわり』がファッション要素として強かった。なので男性のお洒落とかテイスト追求型はことごとく女性受けしなかった(笑)。女性から見ると、変な恰好の突飛な人!アクの強い人!自分をわかってない人。……にしか見えないのだ。 まあ

『パーソナライズし過ぎ』って「提案の放棄」!状況はヤバイことに…。

これ結構笑い話じゃない。 『パーソナライズ』ってオンラインビジネスの世界では、とっても良い事でそれによって顧客の買上数や買上頻度が上がる!と言われてるけどホントは嘘だ。パーソナライズの種類と精度にもよるけどね。 パーソナライズのメカニズムってその人の過去の行動履歴にレコメンドエリアの表示(商品やコンテンツ)を合わせちゃうってこと。 ECサイトとかを運営してる人ならわかるだろうけど、一番単純なのがカート放棄対策で、カートに入れて買わなかった商品を片っ端からDMPで広告に出しち

“剛腕”経営者や“剛腕”ミドルが居なくなった時代。だれが『横断的経営課題』を牽引するの?

タイトル通りの疑問と懸念と愚痴。 中堅以上の企業の中がみんな『調整マン』になっちゃった。 で、起業家だったらわかると思うけど、みんなで調整して妥結した折衷案って最悪のダメダメなケースが多いよね。 一人の強烈な信念とコンセプト、自分自身が一人の生活者である人の考え…を貫き通したサービスとか商品の方が、圧倒的に顧客に伝わるし、成功確率も高い。 どうしたもんだろうか? 大企業同士はサービスのクオリティが低くても、お互いのブランド力で社内を説得できれば良いと思ってるみたいだけど、最

プラットフォーマーが壊した消費・市場経済を再構築する未来図と未来職種 その2

前回の続きです。 まず僕の考えている未来の(といっても5年以内位)メディアデバイス型社会空間は、都市の建物の室内の内壁、内装、テーブルの上面が全てディスプレイ化されて、GUI化されたイメージだ。 びっくりしないでね。そのコンセプトは20年以上前からあり、海外では一般的になってきてるから。 言葉にするならば『フルUI型インテリア』とか『フルUI型内装』。 以下の複数の欧米の紹介動画をご参照。 (別に全部じゃなくても良いんだが、イメージしやすいので一旦その観点で議論する) 流

日本の『ファッション業界』建て直しの提案【その3】。“服の楽しみ方”再構築。

ファッション市場の沈滞。 洋服が売れなくなったり、平均購入単価が下がったことの原因として、 服の訴求価値そのものが『ライフスタイル型消費』と結びつきにくくなったこと、それに対してファッション業界側が何も対応をしてこなかったこと……があると僕は考えている。 例えば、インテリア雑貨や食品販売の場合は、生活の楽しみ方、部屋のデコレーション、インスタ映え、健康習慣…などを提案することでコトに付随する需要を喚起してきた。 それに対してファッションはあくまでも、『貴方が綺麗になります』

服を着るならどんな風に?…ファッション業界は男のカッコよさに寄り添えてない。

ファッション産業って、元来機能やサービスを提供するというよりも、 『カッコ良さ』『外部受け』『自己アピール』を価値として提供するビジネスだ。 レディスファッションに関しては、雑誌媒体、オンライン媒体、アパレルメーカーの企画などでもこのポイントを踏まえて生活者の気を惹いてる気がするのだが、メンズファッションに関してはここが見事に失敗してる!と感じる。なにがまずいのか?ちょっと考察してみた。 まずは、男性にとってのかっこ良さ(本来)の基準をちょっと抽象化してリストアップしてみた

ファッション店舗の『売場作り』を変えよう! その1

苦言を呈してみる。 僕はファッション業界に特化したコンサルティング会社からキャリアをスタートした。それから30年近く経つけど…… ファッションショップって実は栄枯盛衰の歴史で……専門店⇒DCブランド⇒百貨店⇒インポートブランド⇒セレクトショップ⇒SPA⇒ファストファッション⇒オンラインモール……を長らく見届けてきた。 まさに歩く業界年表(笑)かしら。ちなみに以下はその実年表を絵にしてみたものだ。 で最近、 Eコマースに対して旗色が悪そうな実店舗の活性化を促進するために 『実

メンズファッション・オンライン購入記2019SSまとめ版①@ZOZOTOWN

僕は小売業のコンサルタントで かつEコマースや通販についても2000年くらいの勃興期から色々お手伝いをしてきた。 でも、今、日本No.1のファッションモールであるZOZOTOWNやそれに追従するオンラインファッションモールに危機感を感じてる。 端的に言うと、 『これだとファッション商品をその質やテイストやデザイン、ライフスタイルとかで選べない』『安ければ買うって感じになっちゃうよ!』という印象だ。 実際にZOZOTOWNの客単価や一品販売単価はここ数年ダダ下がり。クーポン&タ

ZOZOランキングに見る女子ファッショントレンドと背景マインド。

ファッショントレンドとそののアイテム毎のギャップを見るのは面白い。 トレンドと言っても欧州のコレクションから発信されるTopトレンドではなく、ベタなボトムアップ(市場発)の売れ筋だ。 ただ単に何が売れているかの全体感を眺めてエッセンスを嗅ぎ取るのも面白いが、それ以上に楽しいのは、品種によるトレンドと用途のギャップだ。それって、どういことか?まずは以下のZOZOランキングをご覧あれ。 ウィメンズのワンピースのランキング@20190422 ざっと見てもらうと以下の特徴が垣間