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消費行動と社会心理・構造Magazine

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生活者の価値観や心理と行動はどう変化したのか?それによってこれからの社会はどうなってゆくのか?マクロな視点で世界とニッポンの経済成長に直結する潮流を分析します。
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#ファッション

ファッショントレンドのしくみと業界構造 その2

二年ぶりくらいの継続記事になります。 この記事一回目は筆者の記事としては超ロングセラーで、寄稿から2年間も様々な読者の方に閲覧いただきました。 前回の記事は欧州のトップトレンド発信から、どのように日本のアパレル&小売業界に落とし込まれてトレンドが伝搬してゆくのか?概要フローを書きました。しかし時代が進み、日本人の生活価値観やライフスタイルの多様化でトレンド発生のメカニズムも大きく変遷してきたのです。 ファッショントレンドの発信源の拡大 ファッション業界の企画担当、バイヤー

『服を“売る”ならこんな風に』……ファッション市場救済のために。

『ファッション市場』が縮小してる。 これは様々な複合要因があるが、その中の大きなものとして ●服(お洒落)の楽しみ方を今の時代に合わせて啓蒙する人がいない ●従来のアパレル業界人と激安リテイラー、オンラインプレイヤーや通販専業メーカー等の意識ギャップや確執の存在 ●ファッションのロールモデル(憧れを喚起するリーダー)不在 などがあるだろう。 筆者は、文章はさほど上手ではないのだが、 『視覚的なチャートで構造を解き明かす』ことは得意としてる。 なので、図式+解説という

今年の気温推移とファッション消費雑感。

衣料市場の低迷が続いている。原因は色々複合的だけど、昨今の天候不順、長期的な高温化傾向は大きな要因。これはファッション業界には悩みの種だ。 以下、直近4カ月の今年と昨年の気温比較をグラフ化してみた。 見ての通り、昨年は7月末をピークとして半端ない酷暑だったが そこを頂点として気温上昇も降下も急カーブ(登りも下りも急坂)。 これに対して今年は、はっきりしない夏。 7月がそもそも異常な低温。 8月以降は気温変化が非常に小さく、超なだらかな下降曲線だ。 このなだらかな変化とい

ファッション店舗の『売場作り』を変えよう! その2

商業施設のフロアレイアウト日本のファッション市場とそれを担うはずの店舗が縮小して苦戦している理由は数多くあるが、 まずは商業施設(ショッピングモール)側の事情とテナント店舗側の目論見の食い違いがある。以下の大型郊外型SCのフロアマップを見て欲しい。 この中で 知っているブランドやショップ名称はたくさんあると思うけど、この広大なショッピングモール内で、何か単一のファッションアイテムを捜そうと思ったとき、貴方は探せるだろうか? 例えば今年のトレンドで言うと、“偏光レンズ”のお洒

“モテ”とファッションとの距離 その1

モテ系ファッションと正統派ファッション(そんなものが在れば…だけど)の間には大きな距離がある。 さらに、女性の場合は、異性モテファッション以上に結構意識されるのが、同性モテ(うけ?)ファッションだ。 一方で男性の場合は、かなり昔からモテ意識よりも『自己主張とこだわり』がファッション要素として強かった。なので男性のお洒落とかテイスト追求型はことごとく女性受けしなかった(笑)。女性から見ると、変な恰好の突飛な人!アクの強い人!自分をわかってない人。……にしか見えないのだ。 まあ

ファッション店舗の『売場作り』を変えよう! その1

苦言を呈してみる。 僕はファッション業界に特化したコンサルティング会社からキャリアをスタートした。それから30年近く経つけど…… ファッションショップって実は栄枯盛衰の歴史で……専門店⇒DCブランド⇒百貨店⇒インポートブランド⇒セレクトショップ⇒SPA⇒ファストファッション⇒オンラインモール……を長らく見届けてきた。 まさに歩く業界年表(笑)かしら。ちなみに以下はその実年表を絵にしてみたものだ。 で最近、 Eコマースに対して旗色が悪そうな実店舗の活性化を促進するために 『実

メンズファッション・オンライン購入記2019SSまとめ版①@ZOZOTOWN

僕は小売業のコンサルタントで かつEコマースや通販についても2000年くらいの勃興期から色々お手伝いをしてきた。 でも、今、日本No.1のファッションモールであるZOZOTOWNやそれに追従するオンラインファッションモールに危機感を感じてる。 端的に言うと、 『これだとファッション商品をその質やテイストやデザイン、ライフスタイルとかで選べない』『安ければ買うって感じになっちゃうよ!』という印象だ。 実際にZOZOTOWNの客単価や一品販売単価はここ数年ダダ下がり。クーポン&タ

ZOZOランキングに見る女子ファッショントレンドと背景マインド。

ファッショントレンドとそののアイテム毎のギャップを見るのは面白い。 トレンドと言っても欧州のコレクションから発信されるTopトレンドではなく、ベタなボトムアップ(市場発)の売れ筋だ。 ただ単に何が売れているかの全体感を眺めてエッセンスを嗅ぎ取るのも面白いが、それ以上に楽しいのは、品種によるトレンドと用途のギャップだ。それって、どういことか?まずは以下のZOZOランキングをご覧あれ。 ウィメンズのワンピースのランキング@20190422 ざっと見てもらうと以下の特徴が垣間

ウェザー・マーチャンダイジング。

気温とか天気・天候によって売れるものが大きく変わるということをご存じだろうか?小売業の現場(店舗)の人はこれをリアルに体験してるはずだ。 飲食とフードビジネスの場合はかなり直接的にその日の気温が影響するが、ファッション業界の場合は若干複雑だ。そのメカニズムを紐解いてみよう。 上記の引用記事では主に食品のウェザーマーチャンダイジングが書かれているが、ファッションは実はこれとはかなり異なる。簡潔にいうと、一定日数の天候変化+消費者マインドが影響するのだ。 あとはその天候変化がど

ラストワンマイル物流っていらないんじゃね?

これって、Eコマース使いまくってて、かつEC業界へのコンサルも仕事にしてる筆者が言うのはダメなんだろうけど、正直な思いだ。 ホントに『体が不自由な方・病気の方・移動できない方』向けならわかるんだけど、普通の人は毎日なんらか外に出てるのだ。 自宅という多極分散な場所へ個別にモノを届けるというのは、社会的に非効率なんじゃないか?と思うわけだ。 それを考えると店舗という出先倉庫へ配送して、生活者はそこに買いに行く(ピックアップしにゆく)というかつての(今も)しくみは、 運動にも

ファッショントレンドのしくみと業界構造 その1

ファッションの流行ってどうやってできるの?誰かが作ってるの?誰かが流行らせてるの? 一般のヒトはその辺のしくみがわからないらしい。ということで、長年ファッション業界で仕事をしてきた筆者が簡単に解説してみる。 以下、ファッショントレンド発生と伝搬のメカニズムだ。 ①流行色をインターカラー(国際流行色委員会:INTERNATIONAL COMMISSION FOR COLOR)が選定。これが当該シーズンの2年前。 JAFCAより転載 ➁主にパリを中心としたスタイリングオフ