「神は細部に宿る」って、会社のどこに宿るのか?

現在、「ビジネスパーソンのためのマインドフルグッズ」を開発している関係で、ワーク中に香炉で焚く茶葉を手に入れるために色々な製茶メーカーにコンタクトをとりました。パッケージにオリジナルのロゴを入れられることが条件です。以下がコンタクトの結果です。

・島根の製茶メーカー

→パッケージにロゴを印刷できるのは片面のみ。ボリュームディスカウントはなし。

・福岡の八女の製茶メーカー

→問い合わせフォームに入力しても返信なし。2度ほど電話しても受付の女性が要領を得ず。

・静岡の製茶メーカー

→担当者からすぐにメールが来たが、「材料の一部はお客様が用意されるのでしょうか?」というトンチンカンな内容

・鹿児島の製茶メーカー

→専務さんから返信のメールが来るとともに、よかったらさらに詳しいお話をお電話で伺いたい、と。両面の印刷も可能ですし、ボリュームディスカウントも考えましょう、と言って専務さんが具体的な額を提示。

もちろん、鹿児島の製茶メーカーさんにお願いすることにしました。それにしてもひどかったのが、福岡の製茶メーカー。こちらは営業ではないし、問い合わせフォームに入力していると言っても、どの女性の受付も要領を得ませんでした。おそらく来客対応のオペレーションを身につけていないのでしょう。

「真実の瞬間」という本があります。これはスカンジナビア航空を短期で立て直した伝説の経営者ヤン・カールソンが書いたものなのですが、著者は、「会社の売り上げは、社員が顧客と接する1分1秒(つまり真実の瞬間)の集積である」と喝破しています。

だとするなら、顧客が最初に接する瞬間を福岡の製茶メーカーはことごとく失い、鹿児島の製茶メーカーは確実にモノにしていることになります。

世界的な作家の村上春樹氏が、エッセイの中でこんな話を書いています。彼が店を国分寺から千駄ヶ谷に移した頃、どうしても当座を開設してくれる金融機関がない。当座を開設するなんて、アメリカじゃあ靴紐を結ぶより簡単と言われているのに、日本では零細の事業者が開設するのはだった、と。

どうしたものかと彼が原宿を歩いていると、「今度この近くに支店ができたんでよろしくお願いしますね」とティッシュを配っている男性がいた。ティッシュをもらったついでに「実は当座を開設できなくて困っているんですよ」と話すと、その男性はその近くまでできたという支店に村上さんを連れいて行き、支店の女性スタッフに「この男性に当座をお作りして」と命じたそうです。あとで男性から名刺をもらうと、その男性は支店長だったそうです。

支店長が自らティッシュ配りをしていたこともさることながら、自分を人間として扱ってくれたことに感謝・感動してその銀行は以降も大切に利用することにした、と村上さんは書いています。

まさにこの支店長さんは、お客さんとの最初の接点を大事にされた方ではないでしょうか。

最近の飲食店メーカーは、各店舗にマネージャーもエリアマネージャーも置かないため、ガラス窓やドリンクバーやメニュー、座席の下など、「顧客が接する部分」が常に薄汚れがちです。コスト削減も大事ですが、それ以上に失っているものがある気がします。

神は細部に宿る。その細部とは自分にとってなんなのだろうと自問する時間を作りたいものです。

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