経営理念ってなんの役に立つのだろう

経営理念の浸透研修というのがよく行われています。新入社員や中途採用の社員が研修の対象だったり、合併後の吸収された社員が相手だったりします。

経営理念にも色々あります。「世界平和を」的な壮大なテーマが一行だけ掲げられている会社もあれば、何行も文章て掲げている会社もあります。

ただ、理念がどのように社員の行動指針に結びついて、どのように業績に結びついているのかを確認するのはなかなか難しいところです。

会社の業績が落ちたり、会社が潰れた時に何が原因だったのか。社長の能力なのか、経営環境なのか、社員の行動なのか。

会社の業績が上がった時は何が原因なのか。良い人を連れてきたからなのか、景気の波に乗れたからなのか、社員のチームワークが良かったからなのか。社歌を毎日歌っていたからかのか、企業理念を毎朝唱和していたからなのか。

なかなか抽象的で出口の見つからない話ではあります。

では具体的に。

昔、下北沢という東京の若者に人気な街に、イタリアン小皿居酒屋がありました。たちまち人気になり、20代で支店を増やしたオーナーは、たちまちマスコミに取り上げられました。

ところがこのお店、あっという間に潰れてしまいました。

知り合いの飲食店経営者に聞くと、そのお店、潰れる直前は、入り口の横で従業員が客の目も気にせずウンコ座りでタバコを吸っていたそうです。

従業員のウンコ座りが、店の倒産にどう直結したかわかりませんが、一事は万事、店の衰退を象徴する出来事だったのでしょう。

逆に、良い意味での一事が万事、つまり「さすがあの会社だ!」と語り草になるような出来事が存在する会社もあります。例えばリッツ・カールトン。

リッツ・カールトンでは、「新幹線に乗ってたら”お客様傘をお忘れでした”と言って自分が忘れた傘を渡された」というエピソードがあったりします。ちなみにこういう行動を社員が取れるように、幾らかの予算が渡されているそうですが、予算だけでなくこういった行動が取れる組織文化を持っているのだと思います。

また、個人的に最近こんなことがありました。アマゾンで中国製の除湿機を購入したのですが、性能が広告で書かれていたよりもイマイチだったので、使った時の写真も交えながら何故気に入らなかったかを具体的にアマゾンレビューに書きました。そしたら女性のマーケティング担当者から、今後の商品開発につなげたいのでレビューの内容をもう少し詳しく聞きたいという連絡が来ました。

そして自分が、それに協力すると今度は「レビューで顧客対応が良かったことだけ書き添えてもらえないか?薄謝を進呈するので」という申し出たありました。

顧客対応が良かったこと自体は事実なので、そのこともレビューに反映させると、なんと色違いの新品と電子マネーの薄謝を下さったのです!

この出来事には2つの重要な意味があります。

1つは顧客の声を大切にするという会社自体の姿勢と、もう一つは、この姿勢を社員が具体的な行動として体現できるように、社員に裁量と決定権がしっかりと与えられているということです。

こうして考えてくると、経営理念というものが社員に落とし込まれているだけでなく、行動として具現化されることが必要なのではと思えてきます。

伊勢丹というマーケティング巧者な小売業がありますが、社員が伊勢丹カルチャーにしたがって顧客を大切にし、顧客の欲求を伊勢丹としての商いに具体的に反映させることができるようになるまで25年かかったと指摘する有名コンサルタントもいます。

経営理念とはなんぞや、経営理念は企業の永続にどうやくに立つのか?というのは、経営者にとっても社員にとっても、追求してもし切れない永遠のテーマなのかもしれません。

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