伝統芸能(詩吟)と育児の両立の難しさ~見落とされている悪影響~
私は10歳から詩吟を習い始め、今年で25年目になります。
しかし、実際のところは昨年から子育てが始まったのを機に、詩吟をお休みしている状況です。
お休みして1年以上経ちましたが、まだまだ再開できるような気がしません。
そこで、伝統芸能(私の場合は詩吟)と育児の両立の難しさについて今感じていることを整理しつつ、業界が対策しないことの悪影響についても書き記したいと思います。
理由1:詩吟業界に育児中のパパママの受け入れ態勢がほぼない
両立が難しいことの一番の理由は、詩吟業界に育児中のパパママの受け入れ態勢がほぼないことです。
詩吟教室に行く際に、まだ立てるかどうかの子供を抱えたまま1~2時間練習を受けるのは困難です。
そもそもじっとしていませんし、泣くことだってあるでしょう。
場所は公民館や学校などの教室を使うことが多いのですが、子供を自由にさせたり、おむつ替えができたりといった育児に関して整っている場所とは言い難いです。
詩吟教室を開催するにあたって、場所探しの難しさは良く分かります。ですので、場所を変えるというハード対策よりは、やり方というソフト対策が現実的なのでしょう。
理由2:今のパパママの価値観と上の世代の価値観にギャップが大きい
理由の2つ目は、今のパパママの育児に対する価値観と、上の世代(60~80代)の価値観にギャップが大きいことです。
これもまた仕方のないことです。
しかし「子供が泣いたらママが面倒を見るのが当たり前」「私のころは便利なものが無かったからもっと大変だった」「パパが育児してくれるなんて恵まれてる」みたいな話をされると、女性側としてはつらいものがあります(妻は詩吟を習っているわけではないですが、同席してくれたときに若干の居心地の悪さを感じていました)。
多少は受け流すしかないのでしょうが、そのような人がマジョリティという空間にいると、ストレスは決して小さくありません。
理由3:育児が始まると習いごとの優先度が劇的に変わる
理由の3つ目は、育児が始まると習いごとに対する優先度が変わってしまうことです。
育児をしていると、空いた時間というのは恐ろしく貴重です。
しかもその時間は、定期的に生み出せるものではなく、イレギュラー的に生まれます。
その時間を使って習いごとをする、というのは、今の自分にとってはあまり現実的ではありません。
その場ですぐにできることやオンラインで完結すること、やり残した生活維持のために必要なこと、これらを優先してやることになります。
…というか、ほっと一息をつくこと、が真っ先に入りますね笑。
そのため、これまで何十年も詩吟を続けてきた私ですら、詩吟の優先度が劇的に下がります。
そこに何のフォローも無ければ、物理的に・精神的に詩吟から離れていくのはとても自然なことでしょう。
対策:正直とっても難しいです(苦笑)
これらの理由に対してどんな対策が取れるでしょうか?
冒頭でも言いましたが、正直言って非常に難しいと思います。
場所の問題、人の問題、優先度の問題。いずれも誰かが悪いから直せというものではなく、環境的で構造的な問題です。
また、伝統芸能の世界における育児中のパパママというのはごくごくマイノリティな存在なので、その人たちのために全体を変えるというのもきっと難しいでしょう。
対策を取らない悪影響とは?
だからといって、何にも対策を取らないというのは悪影響が大きいと思っています。
育児をしているのは脂の乗っている20代~30代の人です。
ましてやそれまでに長年伝統芸能を続けてきた人なら、業界における宝みたいなものです。
今の時代は子供を持たない人も少なくありませんが、一般的には結婚して子供を持つ流れがまだまだ大きいでしょう。
そのタイミングで、貴重な人材がことごとく伝統芸能の業界から離れる恐れがあるのです。
確率的な問題というよりは、年齢さえ重ねればほぼ確実に起こり得る問題なのです。
どれだけ伝統芸能に真摯に向き合っていたとしても、子育てが始まると違います。自分の子供はめちゃくちゃかわいいし、何よりも大切です。長年続けてきた伝統芸能よりも。
だから、どんな人であっても子育て中という期間は伝統芸能から離れざるを得ません。
であれば、子供が十分に育った数年後にまた伝統芸能に戻ればいいじゃないか!という人がいるかもしれませんが、本当にそんなので良いのでしょうか?
今の時代、数年たてば周りの環境も自分自身の趣味嗜好もどんどん変わっていきます。
数年後にまた戻ってきてくれるのでしょうか?
伝統芸能の世界に生きつつ、パパママとして発信している人はごくわずかなので、このような問題は中々表に出ないと思います。だから、今回は問題提起という意味で書いてみました。
対策が立てられないから何もしないのではなく、問題を認識した上でじゃあどうしていくか、という姿勢がこれから必要なのだと思います。
問題投げっぱなし感はありますが、今回はこの辺で。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
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