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ファーストリテイリングは、時価総額でアパレル世界一になったというが、実力はZARAに遠く及ばないかもしれないという話。

ファストリの時価総額がアパレル1位になったというニュース

ユニクロ、GUを展開するファーストリテイリング社(以下ファストリと略す)が時価総額でZARAを展開するINDITEX社を抜き、時価総額でアパレル世界首位になったとニュースになった。

日本の会社が世界のトップになるというニュースはなかなかないので、すごい!と思いつつも、「時価総額で」というところが気になった。

そこで、企業の実力をIR情報・財務数値含む様々な面から見てみよう。

実力比較その①ファストリとINDITEXの決算比較

まず、ファストリから(有価証券報告書より)。

コロナの影響もあると思うが、減収減益である。なお、直近四半期決算(11月決算)でも減収減益であった。

続いて、ZARAZARAブランドを持つINDITEX社(アニュアルレポートより)。

まとめると以下である。売上、利益ともにINDITEXがファストリを圧倒している。

実力比較その②セグメント

INDITEXでは以下のように開示されている。どのブランドで稼いでいるのか、どのエリアで稼いでいるのかもわかりやすく開示されている。

ファストリでは、以下である。

セグメント注記は、マネジメントへの報告資料が前提であるが、正直セグメント損益が、ブランドと、エリアがごちゃ混ぜになっていてわかりにくい。経営管理上もここまでわかりにくく説明しているのだろうか。

ただし、読み解いていくと、半分以上を日本で稼いでいるということがわかる。ZARAはSpainの比率が低く、世界中で稼いでいるのとは、対照的である。

会計士目線でのコメントであるが、ファストリも、同じIFRS(国際財務報告基準)基準であり、会計基準はZARAと差異はない。どこまでわかりやすく開示するかという企業の方針にもよってくるが、是非INDITEXを参考にして、セグメント情報をわかりやすく作成してほしい。正直、日本のIFRS適用基準会社の開示はわかりにくいものが多いと感じる。

実力比較その③アニュアルレポート

ファストリ(総ページ数 79ページ)

目次は以下です。

INDITEX(総ページ数 472名)

目次は以下です(デザインがかっこいい)。

アニュアルレポートが一番企業の実力差を感じた。INDITEXのアニュアルレポートは、内容(SDGsの記載に関する詳細な記載)、デザインの観点で、素晴らしいと感じた。SDGsの記載は実際にやっていないと書けない。このアニュアルレポートが作れる会社は、果たして日本に存在するのだろうか。

実力比較その④ホームページ

ホームページのデザインもINDITEXは素晴らしい。なんというか、わくわくしてしまう。ホームページは本当に会社の顔である。

結論~日本よ、今こそ世界に学べ

私個人は、ファストリは、平成において日本で最も成功した企業であり、最高のIPOであったと考えている。柳井CEOの「一勝九敗」にはファストリのIPO時の苦労や失敗談が惜しげもなくさらけ出されているので、興味がある方は手に取って読んでみてほしい。

そんな、ファストリが日本を代表するエクセレントカンパニーに成長したのは、間違いのない事実であるが、直近の株高で時価総額ではアパレル世界1位になったといっても、それは、株価の一時的な上昇によるものであり、企業の実力を反映したものではない。

株価上昇に一喜一憂などせず、日本企業は海外の真の世界トップ企業企業から真摯に学び、良いと思ったものを貪欲に吸収する姿勢が必要ではないだろうか。

明治維新後のかつての日本人がそうであったように、である。

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