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監査法人による見解ひっくり返しを防ぐ3つの方法

この記事の目的


こんにちは。
日が長く、そして暑い日が続きますね。
経理やIRを経験していると、監査を受けていて、せっかく、決算前から、前もって、何度も監査法人に相談していたのに、見解のひっくり返しをくらって泡を吹きそうになるという経験に何度か遭遇した方がいらっしゃるのではないでしょうか。
今回は、監査法人側でも事業会社側でも、どちらの経験もある私が、「監査法人による見解ひっくり返しを防ぐ3つの方法」を、この夏にふさわしいくらい、熱く語ります!

筆者のご紹介

14年ほど大手監査法人にて監査業務をやってました。直近1年半程度は事業会社で連結決算、適時開示や監査法人に対する対応も行っています。副業で、少しですが、一般事業会社の方に監査法人対応のご支援をすることもあります。

よくある監査法人による見解ひっくり返しシナリオ

本記事における、見解ひっくり返しというのは、以下のようなシナリオです。

(決算事前Mtgにて)
事業会社側:AとBという会計判断がどちらもありうると思ったのですが、当社としては、当社の状況を考慮し、会計基準X、に当てはめた結果、Bという会計処理判断よりも、Aという会計処理判断が妥当であると判断したのですが、よろしいですよね。

監査法人側:う~ん、聞いた感じ、貴社の判断には特に違和感はないです。関連する資料をご依頼するかと思いますが、基本的には、了解しました。

事業会社側:ありがとうございます!

(1ヶ月後:決算発表直前)
監査法人側:先日Mtgであがった会計判断について、法人としてAという会計処理判断は認められず、Bとさせていただきたい。

事業会社側:え?明日が決算短信発表日ですよ?適時開示とか、決算説明資料とか、どうするのですか?今から直せませんよ。1ヶ月前に相談したじゃないですか。なんで、今言うんですか。

監査法人側:大変申し訳ないが、先日の会計判断について、法人としてAという会計処理判断は認められず、Bとさせていただきたい。上との話し合いを経てお伝えしてますので、この結論は、変わりません。

事業会社側:(沈黙・・・。やばい。どうしよう・・・)

ありえるのですよね。こういうやり取りは。
ただし、上記のやり取りでは、監査法人による見解ひっくり返しは防げません。
むしろ、監査法人による見解ひっくり返しを誘発しているとも言えます。

見解ひっくり返しが起きる理由

見解ひっくり返しが起きる理由は、以下のように3つの要因に因数分解できると考えます。
見解ひっくり返し=(1️⃣決算事前Mtg前での情報提供不足)×(2️⃣決算事前Mtgでの確認不足)×(3️⃣決算事前Mtg後決算開示までのコミュニケーション不足)

では、どうすれば、よかったのでしょうか。
一つ一つ考えて行きましょう。

1️⃣決算事前Mtg前の相談の仕方

いきなり、決算Mtgで口頭で相談するのではなく、事業会社が、会計処理判断に至った、外部統計資料含む全ての根拠資料、会計基準の当てはめを行ったポジションペーパーを準備して、監査法人に事前送付しておきましょう。

当該資料の事前送付は、検討に十分な時間を確保できるよう配慮する必要があります。
そのうえで、決算事前Mtgに臨んだほうが、監査法人側の検討もし易いと言えますし、決算事前Mtgの議論の中身がより充実するでしょう。
場合によっては、主査や担当者に資料の読み方など、口頭で事前に補足説明などしておきましょう。

2️⃣決算事前Mtgでの確認の取り方

  1. 資料は監査法人に、どなたまで、ご覧頂いているか。しっかり、相談の前提含め、理解をされているか、の確認。業務執行社員まで話しがしっかり通っているかどうか、の確認。

  2. (重要な話であれば)監査法人内の、どこまで了解がされているか。審査パートナーまで了解を得ているのかどうか、の確認。

  3. (重要な話であれば)本相談事項が、重要な審査事項にあたるのか。あたるとした場合、重要な審査事項に関する監査法人ポリシーに従って、どういうスケジュールで、いつまでに法人としての見解が得られるのか、の確認。

  4. 上記の、スケジュールは、事業会社側のIRスケジュールと整合はしているか、の確認。

基本的には、以上と思います。もちろん決算Mtgの内容は、議事録に残して相互に認識齟齬がないようにしましょう。

3️⃣決算発表前までの確認の取り方

仮に見解が得られていたとしても、そこで、安心しきって、決算発表直前まで、何も積極的なコミュニケーションをしないというのは、誤った対応です。
業務執行社員や主査が、往査しているのであれば、監査の進捗について、それとなく、聞いてみるとよいと思います。
往査していなくても、決算概況や後発事象などの状況とともに、数値が固まった時点で、業務執行社員及び主査に説明し、積極的に事業会社側から、情報を監査法人側に提供しておくことも重要です

まとめ

まとめると、
見解ひっくり返しを防ぐ方法=(1️⃣決算事前Mtg前に十分な情報提供をする)×(2️⃣決算事前Mtgでのしっかり確認する)×(3️⃣決算事前Mtg後継続して監査チームとコミュニケーションをとる)
になります。

いろいろと書いてしまいましたが、実際には、上記の対応をとっていたとしても、監査法人による見解ひっくり返しは、起きることがあります。

その場合はどうするか。
事業会社側でできることは、そこから全力でリカバリーするしかないでしょう。
徹夜してでも、会社に泊まることになっても、休日全てを犠牲にしても、身命をとして、経理・IRとしては、会社の信用を守る行動を取らなければなりません。
日々株価が動いていて、企業価値が、毎日ついているわけですから。
それが、資本市場に対する責任だから、です。

一方、監査法人に対しては何が言えるでしょうか。
こういうことがないように、日々、危機意識をもって、全力で監査・四半期レビューをしていただく、それしか、言えないかもしれません。
ただ、大変失礼ながら、最近の監査法人の方とお話していると、どこか、考えが甘いというか、プロフェッショナリズムが不足しているような方、資本市場と向き合う覚悟がない方が、以前より増えてしまった気がしてなりません。

これは、私個人の杞憂であることを祈るばかりです。

以上、「監査法人による見解ひっくり返しを防ぐ3つの方法」の記事でした。
ふと思ったのですが、もしかしたら、今ころ、ちょうど四半期決算のMtgを監査法人の先生方とされている事業会社の方、いらっしゃるのかもしれないですね。
本記事が、監査法人の先生方とのMtgの仕方、コミュニケーションの取り方を考える一つのきっかけになりましたら、望外の喜びでございます。

今日はこのあたりで、終わりたいと思います。読んでいただき、ありがとうございました!
ではまた!



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