ジズス(3)
父のイゴールは野卑な性格で口数も少なく、仕事から帰ると酒を飲んで寝るだけ、といった生活をしていた。政治や読書やスポーツなどの多くの事柄と同じく、私たち兄弟にもまったく関心を持っていないようだった。
彼が私たちと接触してくるのは、母の体を欲したときだけ。
深夜、寝室のドアを手荒く叩く音。暗闇の中、そっと部屋を出ていく母。
私にとっては腐っても父親であったが、兄にとってイゴールは、愛する母を苛む、不潔すぎる害虫であった。
兄の憎悪は黒い炎となり、その熱は彼の内側を日に日にただれさせていったのだ。
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