けやきの木は時を越えて成長していく
僕の住む町、東久留米には大きな欅(けやき)の木があってね、大空にめいいっぱいの枝を伸ばし堂々とした姿でまちゆく人の視線を惹き付けているんだ
春、4月ころになるとね、その大欅は他の欅の木よりも遅く若葉を広げていくんだ
まわりに生えている若いケヤキ達は「いぇーい春だー」と言ってるように、いっせいに全ての枝に葉を付けていくんだけど、大欅はちがうんだな
そうだな、「まるで経験豊かな長老みたい」と言ったらいいかな、ゆっくりと季節が進むのを確かめながら少しずつ葉を茂らせて緑色の枝の数を増やしていく
実はこの大欅は僕の生まれた家の庭の中にそびえ立っているんだ
そうだな、だいたい木の高さは30メートルくらいで幹のいちばん太いところは5メートルくらいある、え?どんだけ大きな庭かって(笑)
いやいや別に大金持ちで庭が広いんじゃないよ、家は江戸時代から続く農家なんだ、農作業で使う機械や道具なんかをしまっておく物置小屋なんかがあるから庭が広いってわけ
自分で言うのも何だけど、とっても気持ちの良い場所
「あー、落ち着くなぁー」って心から思える場所
大欅はうちの初代が300年位前に入植してきた時に植えられたみたいなんだけど、枝は薪にして燃料に、落ち葉は腐葉土にして畑に使われてきたんだ、今でもそうしてるよ
あ、ごめん、ごめん、入植と言っても解らないかな?
入植ってね、ススキとかが生えてる原っぱに四角く大きな線が引かれて、当時の偉い人が「誰か~この土地を耕し、種をまき野菜を作り、江戸に食べ物を運んでくれる者はいないかぁ~」って声をあげたときに、「へい、わたしがやりましょう」と手を上げて他の土地から移り住んで来たってこと
昔の人は凄いよね、「クワ」一つで荒れた土地を耕し家を建て、小さな欅の苗木を植えた、何も無いところに、思い描く未来を想像していたんだ
ところで、あなたは普段どのような事を考えて、まわりの木を眺めています?
気にしたことも無いかなぁ
今度、学校に行く時でも、会社に行く時でも、デートで街を歩くときでも、ちょっと気にして感じてほしい、以外と木が植わっているんだなぁって思うはず
そして、その時に木を見上げながら鼻から大きく息を吸い込んで深呼吸をしてみて
木からエネルギーが貰えて、とーっても気持ち良くなるよ
この木はいつ、誰が植えたんだろうっ
名前はなんだろうっ
変な形だなぁ
あだ名をつけてみよう、とか
何でも良いので妄想しちゃったりして
さらに幸せ感じられるかもよ
あ、でも勝手に枝を折ったり、幹に直接「愛愛傘」彫ったりは、しないでね
さて、話しを戻すと、僕のおじいちゃんの、おじいちゃんの、そのまたずっと昔のおいじいちゃんが、その大欅を植えたんだよね
植えたては、きっと1メートルにも満たない苗木だった、それが、今では高さ30メートルだよ、凄いねまったく
うちに来る人が大欅に触ると「落ち着く~」「パワースポットみたーい」「癒される~」とキャッキャと盛り上がって気持ちよくなってくれるんだ
そんな時、僕は、おじいちゃんありがとね、こんなにみんな喜んでくれてるよ、って心の中でつぶやいたりもしたりもする
これからもこの木を大切にするよって思えてくるんだ
この大欅にはたくさんの「おじいちゃん」の魂と時間が宿ってると僕は感じるんだ、そして、大欅の生きものとしての魂と時間も、もちろんつまっている
だから僕は未来の子供達のために、この大欅に思いを重ねていくんだ
ちょっと難しいかな、でもきっと、わかってくれると信じてるよ
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