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表情作りの話 第一話~表情の効果~

はじめに

こんにちは。「コミュニケーション・トレーナー」の荒木シゲルです。
私はパントマイム・アーティストと活動していたことがあるのですが、現在はその身体表現の経験を活かしてCGアニメーション制作の仕事をしたり、プレゼンや接客で使える非言語コミュニケーションのセミナーを開催したり、しぐさについての本を執筆したりしています。
2年ほどまえにFACS認定コーダーという資格も取得しました。
FACS(Facial Action Coding System)とは、アメリカの心理学者ポール・エクマン氏らによって開発された表情分析のシステム(つまり理論みたいなもの)で、そのマニュアルをしっかり理解して試験を受けて合格するともらえるのがFACS認定コーダーという資格です。
FACSは犯罪捜査やカウンセリングなどの現場で使われたり、CGキャラクターの表情作りにも応用されています。
私は人の表情を「分析」すること、つまり表情から感情やウソを読み解く勉強もしていますが、どちらかというと専門は「表現」に関係しています。ですのでどうすれば強く、効果的に感情が相手に伝わるのかとか、どうすれば自然に見えるかといったことを日々研究しています。
まだまだ勉強中ではありますが、今の自分の知識の整理も兼ねてこの記事を書いてみようと思いました。

記念すべき第一回目は、「表情の効果」についてです。

皆さんは表情を作るとどんな効果があると思いますか?
私は大きく3つの重要な効果があると考えていますので、それぞれ詳しく説明してゆこうと思います。

表情は自分の意識を変える

まず1つ目。豊かな表情は「自分の意識を変える」という効果があります。
表情を作ると「より強くその感情を感じる」ということがわかっています。私たちは楽しいから笑顔を作るわけですが、笑顔を作るとことでより強く楽しい気持を実感しているのだそうです。これは「フィードバック仮説」といった名称で呼ばれています。
「フィードバック仮説」はとても繊細な現象で、物凄く落ち込んでいる人が強引に笑顔を作った瞬間に気持ちがハッピーになる、というほどのものではありません。ただ、表情を作ったときと作らないときとで、同じ体験をしても印象が異なるということが実験によって明らかになっています。
どんな実験をしたのかというと…
まず被験者を2つのグループに分けて、一方は鉛筆を口にくわえて口角を上げた状態を作り、もう一方は鉛筆をくちびるではさんで口角が動かない状態に固定してもらいました。鉛筆を口にくわえると強引に口の周りを笑顔で固定した状態になり、くちびるではさむと笑顔が作れないように固定させた状態になります。そして両方のグループに幸せな気分になるような動画を見てもらいました。すると口角を上げたグループの方がもう一方のグループに比べて、「より強い幸福度を感じた」という結果が出たのです。
ただしこの結果は被験者が一人で動画を見たときに限られます。実験の最中、その場に検査官など第三者が見ていたりすると、二つのグループに感じ方の違いは出ませんでした。鉛筆をくわえたりはさんだりしているところを誰かに見られていては、動画の内容よりも人の目が気になってしまうのは当然のことかもしれません(笑)。
それくらい繊細ではありますが、私たちは自分の表情から感情の信号のようなものを受け取っていると言えるのです。
表情が豊かにすることで強くその感情を感じことができるのであれば、気分が乗らないときとか、朝テンションが低いな、と思ったら意識して表情を豊かにしてモチベーションを高めることができそうです。逆に冷静になりたいときには自分の意識的に無表情にしてみる、というのも手かもしれません。

表情は信頼関係を深める

表情が人にもたらす重要な効果の2つ目は、「信頼関係を深める」ことです。
人が誰かを信用する際に「相手の感情がわかるかどうか」がとても重要なポイントであることがわかっています。考えてみれば当然の話かもしれません。会話中に何について話しても相手が無表情でどんな感情を抱いているのかわからなかったら、誰でも怪しいと感じると思います。宝石な車など高価な買い物をするときや、初めての取引先と契約を結ぶようなとき、いくら金額や条件が良くても躊躇してしまうのではないでしょうか。逆の言い方をすると、自分の素直な感情が相手に伝われば、信頼関係は結びやすくなります。
このとき笑顔だけでは不十分です。不愛想よりも笑顔のほうがマシではありますが、何を言ってもニコニコしてだけでは、やはり怪しく見えてしまいます。深刻な話は真剣な顔で、明るい話題は笑顔で、というように感情にバリエーションがあることで生きた人間としての共感が生まれるのです。
楽しいのか、怒っているのか、悲しんでいるのか、相手に伝えることで自分を理解してもらうことができ、結果信頼へとつながってゆきます。

表情は相手の感情を誘導する

さて表情を作ることでの3つ目の重要な効果は豊かな表情は「相手の感情を誘導する」ということです。
何か話す前に眉間にしわを寄せて「熟考の表情」を作れば、相手は深刻な話題だろうと思うはずです。

熟考の表情

逆に眉毛を上に持ち上げた「興味・関心の表情」で話し始めたら、話している内容が心がワクワクすような魅力的なことだ相手はイメージします。

興味・関心の表情

これは単に相手に話す内容の心の準備を促すだけでなく、潜在的に相手の意識にも働きかける効果があります。
デートに行くお店を相手に提案するときなど、真顔で話しながら自分がオススメのお店を伝えるときだけ「興味・関心の表情」で伝えれば、そこが魅力的な提案なように相手は伝わります。プレゼンや接客販売でも使えるテクニックですね。
これ以外では「心配の表情」と私が呼んでいるものがあります。

心配の表情

相手に助けてもらいたいとき、怒っている相手の気持ちを落ちつかせたいときに使える表情です。是非皆さんも試してみてください。

という訳で、まとめると豊かな表情は
① 自分の意識を変える
② 相手との信頼関係を深める
③ 相手の気持ちを誘導する

という効果があります。
皆さんも興味が湧いてきませんか?
これからも「表情ってすごい!」と皆さんに思ってもらえるような記事をアップしてゆきたいと思いますので、期待しててください!
最後まで読んで頂きありがとうございました。
次回は「万国共通の表情」について書きたいと思います。

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