【耳読note】『水車小屋のネネ』津村記久子
(あらすじ)
2024年、本屋大賞作品 40年にわたる姉妹の物語
物語は1981年、18歳の理佐(りさ)と10歳の妹の律(りつ)が、身勝手な母親とその婚約者から逃げて、家を出るところから始まり、その後10年ごとの4章から成り、2021年のエピローグで終わる。
理佐は大学進学を希望していたが、母親はその入学金として貯めていたお金を、自分の勝手な都合で婚約者のためにつかってしまう。唖然とする理佐。
その後、理佐は就職をするのだが、母親の婚約者は、自分の気持ちが落ち着かないときは、まだ小学生の妹の律を家から閉め出したりしていることがわかり、理佐は律を連れて家を出る。
理佐が探した新しい住まいと仕事先は、山間部の水車小屋のあるお蕎麦屋である。水車小屋にはヨウム(オウム)のネネが飼われていた。ネネは片言の言葉をしゃべり会話ができる不思議な鳥だ。
理佐と律は、お蕎麦屋の夫婦とネネとの新しい生活が始まる。
理佐と律の姉妹が、色々な大人との関わりで成長していく過程が40年の歳月にわたって描かれていく。
(感想・ネタバレ)
言葉をしゃべる会話のできるヨウム(オウム目、インコ科の鳥類)のネネ。
タイトルからしてもっと、ファンタジーな非現実的な鳥がでてきて
不思議な世界に導かれていくのかと思ったがちょっと違った。
調べてみると、実際にヨウムは人間の言葉を覚え
人間の5歳児くらいの知能を持って会話ができるとのこと。
人間の5歳と言えば立派に子どもとして会話ができる。
ちょっと驚きだ。
身勝手な母親のもとに生まれるが家を出た後は
普通に常識のある大人にかこまれて環境によって
こんなにも素直に、また賢く勉強のできるように
成長していくのだなと思ってしまう。
決して、一人の超人的な大人に出会うわけでもなく
登場する人も色々な人が出てくるが
普通に出合い、そして普通に去っていく。
出会う人は、ごくごく普通の大人なのだけれど
みんな自分のできる範囲での優しさと愛情を差し出している。
このような人達に出会い、理佐と律も
人に対して優しさと愛情をさりげなく差し出している。
物語としては、淡々と進むのだが
悪い大人が出てきたり、変な事件が起きたり
ハラハラドキドキするような展開とはならずに
心、穏やかに聴くことができた。
母親には恵まれなかった姉妹だったけれど
そんな姉妹が変にひねくれずに
人に対して、そして鳥のネネに対して
優しさを出している姿に心惹かれた。
親切と優しさに温かみを感じた物語だった。
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