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寒月 いつも死装束を傍らに於いて…

コールドムーン 寒月の丘に満開の桜がシルエット、時折の疾風に紅い花弁が舞い踊る、奥山の吹雪の凄まじさで。

桜木の根元に鎮座する独りのモノノフ、純白の和紙のこよりで長髪を結び、白無垢の衣に水色の裃を着けた姿は、覚悟の決まった死装束、凛とした背筋の流れが見事。

「老いはつらくはない。目標を失うことが辛いのだ」男が呟いた。    俺も、そのモノノフの傍らに正座して瞑想する。

こうして寒月を見つめていると、人の世の儚さを憂う。別れ去った人々を忍ぶ。愛別離苦…人にはどうしても受け入れなければならない悲しみがある。一生の内には何度もある。

せつない別れがあるからこそ、出会う感動もある。死を受け入れなければ、生の意味を理解することはできないのだ。

一日の終焉の夕映えは美しい。歳を経た場所から見た世界が美しいように。俺は今、寒月に向かって問う。己の生を、生ききる覚悟が有や無しやと…

ある!その返答は間髪を入れずに出た。我が楽しみの闘争。戦略は決して、暴力的ではないアグレッシブ。ディフェンスは苦手だ。攻撃は最大の防御。

兄事する先輩が逝ったのは、満月の夜半だった。いつしか俺は死装束を纏い傍らのモノノフは姿を消していた。

十六夜の月が記録的な寒波の中で天空に凛と存在感を見せている。こうして小さな窓辺からいつまでも見つめている。様々な想いがかつ結び、かつ消えてゆく。間もなく今年も消えてゆく。


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