どうやら小学校の廃校にいるらしい…大きな道路に面していて、反対側には公園も見える。 教室の中には、中央に学習机を集めて造られた即席のステージがある。 そのステージ上から、汚い衣装の…男が一人…狂ったように台詞を叫んでいるのだが、何を言っているのか理解不能だ。 その男…先ほど校庭にいた男だ!背中に焚き木を背負って、分厚い本を持っていた。二宮金次郎さんじゃないか! あれっ!彼をこの芝居にキャスティングした覚えはないぞ?なんで彼が? 金次郎は舞台の下手から、下にいる客席の
夕まずめの海…大きな岩の三ツ石が見えてるから俺の大好きな真鶴半島だ。 伝馬の漁船で漁師の松五郎と鯛を釣っている。手ばねのシャクリ… エサは車エビ…サイマキだ。 「夕日がオー、あの三ツ石の20センチぐれいの時に、ここいらの鯛は口を使うだおー」 夕日が真っ赤に燃えて、三ツ石の上に落ちて来た。その時だった! 俺のシャクリ竿が空中で止まり、竿の先がいっきに海中に持って行かれた! 海底に突っ込んで行く、明らかに大鯛の当たりだ!今までに経験のない物凄
黄砂に包まれたように、ドンヨリと霞む地下駐車場…視線を凝らすと可成り広い…どうやら東京駅の八重洲口地下駐車場だ。 ここに女性が軟禁されている。それは若くて美しい女性社長なのだ。 その女性社長の救出依頼がスマホで届いたばかりなのだ。 俺はその犯人の…犯人と云っていいか分からないが…目星はつけてある。 なにしろ俺は江戸川乱歩の愛読者なのだ。 犯人はこの地下駐車場にいる!そう断言していいだろう。更にそいつの正体は…殺人ウサギなのだ! なぜだかもう、俺はこの地下駐車場で殺
早朝の河原…季節が急ぎ足で通り過ぎ、対岸は早や緑の葉桜になっている。自然が浄化した透明な清水の流れ… その飛沫が朝もやを産み、密集している深緑の草々を濡らしている。 その美しさにスマホを向ける…と一羽の野鳥が近くに舞い降りて来た。 ゴイサギだ! 俺はスマホで連写した。 ゴイサギはコウノトリの仲間だから肢体がシャープで美しい。 俺はそのゴイサギに向かって、エアラケットでシュートした。 驚いたゴイサギが飛び上がった! …その瞬間…
その男は まるでマシンガンのように世間に疑問と侮辱を叩きつける。 俺の前に佇む、その男 ジミー・オズボーン すでに確立された社会に疎外された青年だ。その怒りをぶつけようがない。その怒りの矛先を爆発させる力もない。行動に移しえないのだ。 「オレ達の世代の人間はさぁ、何か立派な主義主張の為に死ぬ事もできねぇし、そう云う事は、オレ達がガキだった頃に終わっちまったのさ」 「今はもう、人をドキッと感動させる主義なんか残っちゃいねぇ。どうせ何も残っちゃいないなら、せめて女にでもさ
ひっそりと佇む古い洋館の玄関を入ると、薄暗い廊下が延々と続いている。何処から流れて来るのか…乾いた空気の中にエタノール臭が… 更に、その中に中学生の頃、化学の実験室で嗅いだホルマリン臭も… 裸電球が灯る廊下の左右には、検査室や薬品室や放射線室を示すプレートがある。けれども人の気配は全くない。 都会の大きな大学病院…人はいる筈なのに…どうして…病院なのに… この廊下は三途の川に向かう道のようだ。 暗い廊下の右に折れた突き当りの部屋…古びた木製の扉…突然!それが外
海の岩場に、大勢の釣り人がいる。俺はどうやら見物人だ。若い女性が簡単な仕掛けの延べ竿に、オキアミをつけただけで鯛を一荷で(2匹一緒に)釣り上げた。 鯛の目玉がやけにデッカイ! よく見ると鯛の頭しかないのだ。岩場の下にオットセイがいて、釣った魚を喰ってしまうのだと云う。 確かに海の中には、巨大な黒い生物が蠢いている。釣った魚を速攻で食ってしまうのだ。 大人たちの中に釣り師の少年が一人… 「みんなから離れて釣った方がいいよ」 俺がその少年にア
何処かで見たことのある町を飛んでいる。すべてが俯瞰で見えるのだ。 下へ降りてみた。歩き回ると思い出した。この町は知っている。 一六地蔵がある。横浜の伊勢佐木町7丁目だ。俺が子供の頃に住んでいた町だ。おお!懐かしいなぁ…と思った瞬間に突然、激しい尿意に襲われた。 そこで梅沢ゆう子の棲むマンション6階へ駆け上がった。小綺麗な部屋の奥のトイレは、鍵が純和風の蝶つがいがついている。 便器は白い土管を立てた様な、丸い小さな筒状で、そこへ放水するのは難しそうだ。気をつけながらジョ
電車に乗っている。二両編成の知らない電車だ。 江ノ電?かとも思うが、窓の外の景色が違う。各駅に停車するが駅名がまるで分らない。駅名のプレートを見ても一瞬で忘れてしまうのだ。 東京都内かとも、岩手の三陸鉄道かとも思うのだが、何処かが違う。 夢の銀河鉄道のようでもあるのだった。 目的地に近くなる頃、その電車がなぜかバスになっている。バスにはそこそこ乗客がいて、俺は吊り革につかまっている。 バスは何処かで見た様な街の中を走っている。ここいらにバロンと云う名の喫茶店がある
ダンススタジオのような鏡張りのフロアー。 ウッドの床に汗が滴り落ちている。 「いちっ にっ さんっ しっ ごっ・・・」 可愛いらしい掛け声の中で空手の道着をまとった女性たちが正拳顔面突きの型練習をしている。 続いて、上段蹴り、後ろ廻し蹴りが次々と決まる。 「終わりの始まりは、突然っ!」 ひとりの美しい女性空手家が叫ぶ! 「終わりの始まりは、突然っ!」
夜の遊園地だ。大観覧車のイルミネーションからすると横浜のみなとみらい公園のようだ。 俺はなぜか、港の潮風に吹かれてベンチに座っている。すると…白いスーツの女性が2名、横に座って来たのだ。 二人とは初めから打ち解けていて、ここは俺の生まれ故郷だと説明した。 ロングヘアーの女性は、話す態度に妙に警戒感がない。 これは一体なんなんだ?と自問自答する。俺に気があるのか…ヤバイな… 話の流れで彼女がやけに俺にすり寄ってくる。 髪の毛を触ったり、腕を掴んだりしてくるのだ。これは…
私鉄沿線らしき駅のホーム…ダークスーツを着た中年の男が、畳んだ傘を逆さに持ってゴルフのパターの練習をしている。 そこへ電車が入って来てドアーが開くと、件のゴルファーは車内にボールを打ち込んだ様子… 慌てて満員電車に乗り込み、人混みの中でボールらしきものを探し回っている。なんと傍若無人な男なのかとテレビのニュースが伝えている。 俺はテレビを見ていたのだった。…すると、ここはどこ? 周りを見回すと、小綺麗な女性の部屋のようである。 なんと… バスルームからは
深夜のストリートを独りで歩いている。マンハッタンのタイムズスクエアのようだ。 高層ビルの陰で街のネオンサインが寂しそうに瞬いている。なんだかネオンの灯りが黄ばんで見える。コロナ禍で人々がいないせいなのか… わずかにポートから霧が流れて来た。その時だった! 道に何かが落ちている。しゃがみこんで見つめると、それはハートのようなものだった。わずかに鼓動しているので、それと判った。 「こんばんは」 突然!そのハートが俺に話しかけて来た。 「やぁ、こんばんは」 俺も挨拶を返し
人々の喧騒で溢れかえる繁華街にいる。なんだか中国 海南島のダウンタウンのようだ。 真っ赤なチャイナボディスーツのシャオチェに出会った。彼女は脚にケガをしているようだ。 話す言葉は中国語のマンダリンとは違うので分からないが、目で助けてほしいと訴えているのだ。 彼女を背負ってホテルを探していると、鬱蒼とした緑の中に瀟洒な純和風の旅館があるではないか! いつしか俺と彼女は、その部屋の中に潜り込んでいる…と、その時、どかどかと中国人らしき集団が部屋の中に乱入してきた。 みん
夜の波止場の桟橋に、透明な壁(多分、ガラスらしい)のベッドルーム… 群青色の小さな世界に、二つだけ灯りが点っている。 シュールリアリズム感がいっぱいだ。ベッドにはポール・デルヴォーが描き出したような金髪の裸婦が純白の裸身を横たえている。 その傍らに、ココア色のストールを裸身に巻いただけの少女が佇んでいる。裸婦は長いまつ毛の目を伏せている。 形の良い乳房が静かに波打っている。可愛い鼓動さえ聞こえるようだ。 夜の波止場に魚釣りに来た俺は、この情景にたじろぎ逡巡する。
赤いドレスの女が港町の酒場にいる。そのカウンターバーの止まり木に俺も確かにいる。ドレスの女はホステスなのか… 女がつくったジントニックが俺の前に置かれた。グラスに敷かれたコースターは黒く四角い。 ジントニックを口に含むと、視覚にそのコースターが入っている。 何かが動く…凝視すると、何かが蠢いているのだ。 左手の中指でちょこっと触ると、5センチほどの丸くてプリプリした青い虫が出て来た。その時だ! シーンが突然に転換した!そこはそのドレスの女の家だった。