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のぞみ号で短歌を披露したい

趣味で短歌を作っています。

私がいまハマっているのは「ただ31文字(くらい)である」というだけで、情動や感興が少ないような短歌です。少し前に話題になった『偶然短歌』に少しだけ人間味をまぶしたようなもの、あるいは発見を一巡りして述べたようなものがマイブームです。

2短歌

↑こういったそのまんまだね~みたいな短歌とか

3短歌

↑こういうメタっぽい短歌を作って遊んでいます。パソコンに創英角ポップ体がなかったのでこれは教科書体です。すみません。

しかし、作ったものはEvernoteに書き付けるばかりで誰かに披露する機会はあまりありません。

また「趣味は短歌です」というとだいたい「え、じゃあ詠んでよ」と言われるのですが、自分の作歌意欲は尿意みたいなものでコントロールできません。仕方なくEvernoteから適当に読んでみても、上にあげたような邪道短歌だし、なんなら皆さん小馬鹿にしてやろうと待ち受けているのであまりウケがよろしくない。

しかし、定型短歌(5・7・5・7・7)というのは一種の保存形式です。つまり節がついてるから覚えやすく、印象に残りやすい。私のへっぽこ短歌でもたぶん、強制的に数回読ませられると覚えてしまう魔力を、この31文字の形式は有しています。

誰かに自分の作った短歌を口ずさんでもらいたい……。

そんなことを考えていた先日、天啓ともいうべきアイデアが降ってきました。とうとう私の短歌を載せるにふさわしい場所を見つけたのです。それは……

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新幹線車内前方の電光掲示板です。昨年度末、ニュースの放映(放流?)をやめると発表されましたが、広告枠としては健在。しかも今日日珍しいテキストオンリーの媒体です。東京⇔新大阪間ならおよそ3時間は乗っているわけですから乗客が複数回目にすることは確実。これほど短歌を発表するのに適した媒体があったでしょうか。

多少お金はかかるかもしれませんが話題性で十分ペイできる範囲だと思います。そういうわけで早速JR東海エージェンシーのサイト(https://www.jrta.co.jp/mediadiv/train-express.php)で料金を確認します。20万円くらいかな~?

4料金表

330万円/月でした。この前「除湿器ほしいな~」と考えて電気屋の店員さんに「3000円くらいで~」って言った時の顔を思いだしました。見積もりが甘すぎる。

上限64文字なので、普通に考えれば短歌が2首。欲張るなら皇(すめらぎ)とか屍(しかばね)とか使って圧縮することで3首入るか……?

なにか始めるときに金銭制約が邪魔をするのは寂しいことです。このnoteが330万円で売れないかな……。除湿器も欲しいから332万5000円くらいで……。

「最善の努力をしてみよう。努力しないよりもはるかによい結果が得られるはずだ」とはゲーテの言葉ですが、私も奇特なお金持ちの登場を待つ間に一番大切なこと、つまり載せるべき短歌を考える作業を行います。先ほど2首か3首と申しましたが、やはり1首での勝負が定石でしょう。頭を捻っているうちにどんどんわけがわからなくなってきて、最初に書き出したのはこちら。

5短歌

野暮ですが、それぞれ「まいじさんびゃっきろ」、「まいびょうさんじ」と呼んでもらえれば収まりが良いと思います。

まず、短歌を流すにあたって一番困るのがそれが短歌だと気づかれないことです。これならば最後に「え、短歌なのか」となってもう一度見て確認したくなるという寸法です。しかし注釈を入れた通り単位が入っていることで読み方が安定せず、口にしたとき微妙に気持ちよくない=覚えにくい可能性があります。これでは目的は達せられません。

また「スマホ傀儡の現代人はあの電光掲示板を見ないのでは」とこの話の根幹を揺るがす疑問も湧いてきました。

そこであの電光掲示板を絶対に見る人、つまり「車内で寝てしまい、いまどこなのか慌てて確認する人」向けの短歌を作りました。

それがこちらです。

6短歌

寝起きでこれが流れてきたら流石にびっくりするでしょう。勝手に空便にトランジットさせられていたらインパクトは十分。反芻するまでもなく一発で覚えてしまうこと間違いなしです。問題は普通に嘘だということです。

同じようなシリーズとしてそのほかに「晴天につき右側の窓からは富士山だったものがみえます」というのもありましたが、絶対に許可が下りないと思うのでボツとなりました。

というかそもそも広告だということを忘れていました。危うく330万円払って詠み人知らずの怪文を垂れ流すだけになるところです。

作者が自分だということを明らかにしつつ自分の好みにも合い、宣伝にもなる短歌……そんなものがあるのならもうとっくに歌人になっているような気がします。

しかし、答えはいつも自分の中にある。何回も見返したはずですが見落としていました。『金色のガッシュ‼』の魔本のように、自分自身が深化するまで詠むことのできない短歌が、今回の場合はEvernoteの中にもう書き込まれていました。

それがこちらです。

7短歌

発句(最初の5文字のこと)から短歌であることが明示されているし、自分の好みにも合う。おまけに高評価とチャンネル登録のお願いまでできるという、手前みそながら秀歌を生み出していました。この後ろにアカウント名を明示すれば新大阪への道中、皆さんがチャンネル登録してくださることでしょう。

問題はそのチャンネルというのが存在しないということです。一刻も早く短歌系YouTuberとしてデビューしなければなりません。

そういうわけで紆余曲折あり動画デビューをする結論になりましたが、この夢自体は超本気なので、330万円用意出来たら叶えたいと思います。


ちなみに「パロディもいいなあ」と思って新幹線のアナウンスなどを調べていたところ、

8短歌

字足らずながら短歌でした。

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