私がSNSを使う二つの理由。

『「こいつはスロットマシンなんです」。インタビュー開始から間もなく、ハリスは自分のスマートフォンを持ち上げてそう言う。「スロットマシン? どういう意味でしょう」。クーパーが訊き返す。「携帯をチェックするのは、“さあ、当たりは出るかな”と期待しながらスロットマシンのレバーを引くようなものだからです」。ハリスは答えた。「ユーザーがサービスを使う時間をできるかぎり長くするために(テクノロジー企業が)使うテクニック集が存在するくらいです」「シリコンバレーは、アプリをプログラミングしているのでしょうか。それとも人をプログラミングしているのでしょうか」。クーパーが尋ねる。「人を、です」ハリスは答える。「テクノロジーは善でも悪でもないとよく言いますよね。どのように使うかを決めるのは使う側だという意味で。しかし、実際にはそうではなくて──」「テクノロジーは中立ではないということですか」。クーパーが質問を挟む。「中立ではありません。ユーザーに一定の方法で長時間使わせることを目的としています。企業はそこから利益を得ているわけですから」トリスタン・ハリスが警告したとおり、新しいテクノロジーへの依存に認められる特徴は、多くの場合、偶然の産物ではない。巧妙にデザインされた機能によって引き起こされたものなのだ。~その中から、テック企業がどのようにして行為依存に拍車をかけているかを調査した私のリサーチでも繰り返し現れた2つについて、ここで簡単に紹介したい。“間歇(かんけつ)強化”と“承認欲求”である。人の脳はこの2つからの影響を極めて受けやすい。この事実が重要なのは、暇さえあればスマートフォンをチェックしたりブラウザのタブを開いたりさせるアプリやウェブサイトの多くは、この2つの罠を利用してユーザーが誘惑に抵抗できないようにしているからだ。~オルターはさらに踏みこんで、SNSユーザーは何かを投稿するたびに“ギャンブル”をしているようなものだという──“いいね”(あるいはハートやリツイート)をもらえるか、それとも何のフィードバックもないまま放置されるか。前者は、あるフェイスブックのエンジニアの呼び方を借りるなら「まがいものの幸福感をもたらす高らかな鐘の音」であり、後者は悲しい気持ちにさせるものである。いずれにせよ、結果は予想できない。つまり依存の心理学が示すように、投稿してはチェックするという行為が狂おしいほど魅力的に思えてくる。~これもまた、ランダムな報酬によって引き起こされる行動だ。ほとんどの記事は“はずれ”だが、義憤であれ笑いであれ、何らかの強烈な感情をかき立てる記事に時々“当たる”。面白そうな記事タイトル、面白そうなリンクをクリックするという行為もまた、例えるなら、スロットマシンのレバーを引くのと同じなのだ。テクノロジー企業はこのランダムな正のフィードバックの罠の威力にむろん気づいていて、それを意識しつつ、訴求力をいっそう強めようと製品を改良し続けている。トリスタン・ハリスはこんなふうに説明する。「アプリやウェブサイトは、予想不能なパターンで報酬を与える仕組みを製品のあちこちにちりばめています。それが金銭的利益を生むからです」。注意を誘う通知バッジ、面白いかもしれない次の投稿や次の記事をスワイプ1つで表示させられる痛快さ。これらはたいがい強烈な反応を引き出すことを狙って巧妙に作られている。ハリスが指摘するように、フェイスブックの通知のシンボルは、もとはサイト全体の色調に合わせた青だったが、「誰も使わなかった」。そこで警告色である赤に変更したところ、クリック数は急増した。つまり、ほとんどのソーシャルメディア・サービスに浸透しているランダムなフィードバックは、サービスに絶対に必要な要素というわけではない。この機能を取り払ったとしても、ユーザーが得るメリットが減少することはないだろう。それでもこの仕組みが広く取り入れられている理由は、ユーザーに画面を見つめ続けさせる効果が絶大だからだ。「60ミニッツ」で自分のスマートフォンを見せて「こいつはスロットマシンなんです」と発言したとき、トリスタン・ハリスが何より伝えたかったことは、これらがいかに人の心理に強い影響を及ぼすかということだった。~アダム・オルターはこう書いている。「われわれは社会的動物であり、他人からどう思われているかをまったく意識せずにいることはできない」。これが順応行動であることはいうまでもない。旧石器時代には、部族のほかのメンバーから尊重されているかどうかは重大な関心事だった。それは生死に関わる問題だったからだ。しかし21世紀の今、この本能的衝動は新しいテクノロジーによって乗っ取られ、金銭的利益をもたらす行為依存を生み出すことに利用されている。この進化の代償は、当然のことながら、好意的な評価が得られないと苦痛を感じることだ。これは旧石器時代人の脳にとっては一大事であり、この“生死に関わる”情報を抜かりなくチェックしておかなくてはという急き立てるような衝動につながりうる。~ショーン・パーカーは、これらの機能の設計哲学を述べる中でこう言っている。「社会的証明のフィードバック・ループ……いかにも私のようなハッカーが思いつきそうな手法だね。人の心理の弱点を食いものにするわけだから」。』

ヤバい!私はFacebookと言うかTwitterもInstagramもnoteでも「スクラップブック」と「俺の話を聞け!」の二つの方法でしか使っていない。ま、そんな程度が良いのかもしれない。

「SNS」がどうしてもやめられない2つの理由
「依存症ビジネス」の巧妙すぎる手口
https://toyokeizai.net/articles/-/306220

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