これまでに無い「人間の価値」が問われているのだ。
『特にAI(人工知能)技術の発展によって雇用を失うのは、事務職や技術職のホワイトカラーと呼ばれる人々だ。この人たちが荷馬車の馬と同じ運命を辿ることになるかもしれない。政治面においてハラリは、民主主義が機能不全を起こしていると考える。〈国民投票や選挙は、人間の合理性にまつわるものではなく、つねに感情にまつわるものだ。もし民主主義が合理的な意思決定に尽きるのなら、すべての人に同じ投票権を与える理由は断じてない。いや、投票権そのものを与える理由すらないかもしれない。他の人よりもはるかに博識で合理的な人がいることを示す証拠はたっぷりある。特定の経済問題や政治問題に関するときは、間違いなくそうだ。ブレグジットの投票の後、著名な生物学者のリチャード・ドーキンスは、自分も含め、イギリスの国民に投票で意見を問うべきではなかったと、不満の意を表した。なぜなら一般大衆は、判断に必要とされる経済学と政治学の予備知識を欠いていたからだ。「アインシュタインが代数学的な処理をきちんとこなしていたかどうかを全国的な投票を行なって決めたり、パイロットがどの滑走路に着陸するかを乗客に投票させたりするようなものだ」〉~今日、急速に科学技術が発展しているが、この状況に生物としての人類はついていくことができない。ハラリは、近未来に地球的規模で危機的状況が発生すると警鐘を鳴らす。〈テクノロジーが進歩するうちに、二つのことが起こった。第一に、燧石で作ったナイフが徐々に核ミサイルに進化すると、社会秩序を乱すのは、前より危険になった。第二に、洞窟壁画が長い時間をかけてテレビ放送に進化すると、人々を騙すのが前より簡単になった。近い将来、アルゴリズムはこの過程の仕上げをし、人々が自分自身についての現実を観察するのをほぼ不可能にするかもしれない。そのときには、私たちが何者で、自分自身について何を知るべきかは、私たちに代わってアルゴリズムが決めることになるだろう〉そのような状況になると、人類は自らが作りだした機械に隷属することになってしまう。マルクスが述べた疎外された状況になる。この危機を回避するために、ハラリは各人が自覚的な努力をしなくてはならないと考える。〈あと数年あるいは数十年は、私たちにはまだ選択の余地が残されている。努力をすれば、私たちは自分が本当は何者なのかを、依然としてじっくり吟味することができる。だが、この機会を活用したければ、今すぐそうするしかないのだ〉危機を避けるために人類に残された時間的余裕はあまりない。』
「知識」労働なるモノで稼いでいたホワイトカラーはほぼ絶滅するだろう。アルゴリズムで人生の選択が行われる様に成るまでに各自が「人」の「価値」というモノをどう捉えるか?が重要だ。これまでに無い「人間の価値」が問われているのだ。
AIが、仕事どころか「人の選択肢」まで奪ってしまう可能性
『サピエンス全史』著者からの警告
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/69465
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