「カチカチ(価値価値)交換」が狭いコミュニティで行われ始めると資本主義経済の根底がグラついてくる。既に人類は縮小に向かい始めているのかもしれない。

『私はキャッシュレスこそがこの先「お金」が消えていく出発点だと認識しています。一方でキャッシュレスの動きとは別に「お金」を「使わない」「稼ぐ必要が無い」世界というものも急速に拡大し始めています。~とはいえ無料化が最強の戦略だということについては、今現在、そのとおりのことが起きていると言わざるを得ません。たとえばSNSサービスであるfacebook と検索サービス等を手がけるGoogle はいずれも、もはや生活と切っても切り離せないサービスを展開しており、Apple やAmazon と並んで、今や「GAFA」という括りで世界最強の企業群とも言われています。ここで注目すべきは、世界最強企業のうちの2社が「無料」を掲げている、ということです。実際、一般のユーザーからすれば、普通に使っているかぎり無料です。その分、彼らは企業からの広告によって収益を上げているわけですが、無料であるからこそ莫大な数のユーザーを集めることができ、そして莫大な数のユーザーがいるからこその価値を打ち出して、世界でも有数の企業として成長してきたわけです。無料サービスの発展には、大学が大きな役割を果たしています。Google はスタンフォード大学、Facebook はハーバード大学の学生らが立ち上げた、というのは有名な話ですが、ではなぜ大学に在籍中の学生から世界最強の企業が生まれたのでしょうか。大学とは、学部レベルでは将来の研究者をトレーニングするための機関だと言えます。そして大学院からは、実質的に研究機関です。研究者は発見、発明をすることが職能であり、すなわち、これまでにない価値の創出をすることが求められます。もちろん営利を追求する私企業も、新しいマーケットを開拓し、これまでにない価値の創出を追い求めていますが、興味深いことに、世界を激変させるような新しい価値は「利益を出さなければ」という発想の下からはなかなか生まれてこないようです。おそらく、最初は利益に結びつかないアイデアにこそ、その後、世界を変えるようなビジネスの「種子」が隠れているのでしょう。そして、実はそうした「種子」の発見は「NPO(Non-Profit Organization、非営利組織のこと)」のように、利益を出す必要がなく、自らの意思にもとづいて人々が協力し合う環境のほうがやりやすいのです。大学は正にその環境に合致しているというわけです。~つまり価値が認められるビジネスであれば、マネタイズは後でよいのです。実際、デジタルテクノロジーを通じて、貨幣メディアを自ら生み出すという考え方は、多くの企業がこれから事業を進めるうえで、その選択肢のひとつに入ってくると思います。そしてビジネス的な発明は、時に、ルールを最大限に利用するハック(賢くとも、ある意味ズルいやり方)のような形で現れます。たとえば、まったくテクノロジーと無縁に聞こえるかもしれませんが、東京都千代田区で営業されている「未来食堂」はそうしたハックのひとつと位置づけられると思います。元クックパッドのエンジニアがひとりでやっている食堂ですが、お手伝いを常に募集しており、厨房を50分手伝うと、一食、食事ができます。労働の対価として券をもらい、それで食事の権利が生まれるのです。その券は他人に譲ることができますし、お店の入口に貼って、不特定多数の人に食事をご馳走することもできます。この仕組みがすごいのは、誰かに働いてもらっているのに、その人件費がかかっていない、という点です。もちろん、給与相応の食事を提供することになるのですが、そこには原価分しかコストがかかっていません。しかも、働いた人が食事の権利を時に放棄することで、希望する人が無料で食事ができるオプションが提供されています。この仕組みが注目され、実際に人気を博している背景には、我が国においても深刻化している格差社会の広がりがあるようにも思います。このお店には、その日食べることに困っている人も、彼ら・彼女らを助けたい人も、格差や新しい経済の仕組みに興味を持っている人も集まってきます。そして、そうした状況の先に、「お金」に頼ることなく生きていくための方策が現実として生まれつつあるのです。』

「価値の貨幣化」をもって貨幣経済は世界中を席巻したが「物々交換」ならぬ「カチカチ(価値価値)交換」が狭いコミュニティで行われ始めると資本主義経済の根底がグラついてくる。既に人類は縮小に向かい始めているのかもしれない。

「お金自体を使わない」世界が広がっていく必然
キャッシュレスと並行して拡大する
https://toyokeizai.net/articles/-/312945

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