トークンエコノミーについて書いてみた

「トークンエコノミー」が持つ可能性について書いてみる。
web3を学び、さまざまな価値観のアップデートがあったが、その中で特にこの概念は衝撃的だった。うまく説明できるかまだ自信はないけど、チャレンジしてみる。

トークンエコノミーのざっくり理解は「通貨発行権が民主化された」ということ。今回は詳細技術の話は一旦置いておいて、機能、価値、ガバナンスの3つの要素で整理してみた。

そもそもトークンエコノミーっていったいなんのこっちゃ、という感じだと思う。

機能についてポイントエコノミーと比較してみる

まずは身近な例として、楽天ポイントやTポイントなどのポイント制度(=以下ポイントエコノミーと表現)と比較しながら、機能という切り口から解説をはじめてみる。

楽天ポイントなどのポイントエコノミーは稼ぐ方法、使う方法がある。楽天市場での買い物はもちろん、楽天クレジットカードを使ってもポイントは稼げる。ブログのアフィリエイト収益でも楽天ポイントは稼げる。そしてそれを使って楽天市場で買い物ができる。更にポイントで投資まで出来る。楽天帝国が発行した専用通貨みたいなものだ。

楽天ポイントに限らず、Tポイント、クレカのポイント、飛行機のマイル、携帯キャリアのポイントなどは「専用通貨」的な概念を導入して、どこかで稼ぎ、どこかで使えるかを設計している。ポイントエコノミーの目的は顧客の囲い込みだ。

ただこれらのポイントエコノミーは円という法定通貨と等価であり、しかもそれらが構成する経済圏以外では使えない。日常生活での消費を置き換えているだけ。

またこのようなポイントエコノミーを作った運営をするには、システムを自分で作らなくてはいけない。他にもインフラ、セキュリティ、フロントエンド、、やるべきこと山のようにある。個人でこんなシステムを作るのは到底無理だ。

それがブロックチェーン技術を使えば、比較的簡単にそういったポイントエコノミーに近いシステムが作れる。高い暗号技術で作られたブロックチェーン技術を使うためには、ブラウザにメタマスクというプラグインを入れるだけでインフラが成立する。そしてブロックチェーン上で価値をドルや円などの法定通貨と交換できる。それがビットコインなどの暗号資産だ。

ポイントエコノミーとトークンエコノミーの最大の違いは、非中央集権か中央集権かという点だ。ポイントエコノミーは楽天などの運営者が全権を握った中央集権型だ。極端な話、楽天ポイントをどうするかは楽天という民間企業の意志に依存している。しかしトークンエコノミーは設計によっては中央集権型も可能だが、非中央集権的運用が可能な仕組みだ。

通貨における「価値」とは?

ただ勝手に通貨を発行しても、そこに価値があると第三者が理解しない限り意味はない。ビットコインはみんながビットコインに価値があると信じるから値段がつく。仮に僕が勝手に「シゲコイン」というトークン(暗号資産)を作っても価値は無い。孫がおばあちゃんに送る「肩たたき券」の方がまだ価値がある。

通貨とは第三者がその価値を信じて始めて通貨として成立する。
では「価値を信じる第三者」とは誰か?

それは「コミュニティメンバーの構成員」になる。法定通貨では日本や米国のような国というコミュニティ。ポイントでいうと楽天やTポイントの会員がコミュニティになる。

法定通貨やそれと連動するポイントが運用されるコミュニティと、ブロックチェーンを使って発行されたトークンが通用するコミュニティの違いは、そのコミュニティの中で共有された価値観の幅の違いである。

現代の貨幣制度、いわゆる「お金で買える価値」はそのコミュニティの構成員の最大公約数が求める価値に連動している。不動産、消費財、サービスなどに共通の物差する。同じ通貨で土地も自動車もラーメンも買える。「幅広い価値観の共有」だ。

一方で一部の人にしか通用しない「価値」もある。いわゆるマニア、ヲタクの世界のみで通用する「狭い価値観」。

※ここで言う「広い価値・狭い価値」はいわゆる「心の広さ」とは関係が無いので、念のため。

例えば、僕がライフワークにしているクライミングの世界は、クライマー同士しか通用しない「達成と貢献」という価値がある。岩場の開拓という貢献、メンテナンスという貢献、ルートの達成という価値、などなど。

それらの価値を見える化するためにクライマーコミュニティだけで交換できる「達成と貢献」をデジタル資産である「トークン」化する。そしてその「トークン」をコミュニティへの貢献度に応じてやりとりするイメージ。

例えば、クライミング初心者が岩場の掃除をしてトークンを貯める。そのトークンを使って経験者からレスキューの方法を習う、などといった価値の交換が可能となる。お金に代えるほどでは無いが、感謝を表す意味でトークンを送り合う。

クライミングのようにお金では買えない価値を重要視する人たちにとって、このテクノロジーは新たなコミュニケーションの手段になりうるのでは無いかと思っている。

そういった「達成と貢献」を重要視するコミュニティはクライミング以外にもあるかもしれない。それぞれのコミュニティごとに専用通貨を発行していけば良い。

ただ技術的には専用通貨をお金に変える仕組みは作れるが、今の法律ではかなり慎重にやらなければいけない。個人的な意見としてはこの手のトークンは換金性はない方が健全なコミュニティになるのではと思う。

ガバナンスについて

法定通貨は法定金利や税の制度などの、適切に通貨の価値を維持し、流通させるための統治機構がある。そのガバナンスを適切に効かせるのがいかに難しいかは、日々の経済ニュースが示している通り。

トークンエコノミクスは法定通貨ほど関わる人口が少ないが、独自のガバナンス設計が必要となる。そのために投票制度を持つDAOという概念の導入も必要になる。DAOについてはいずれ別の機会に書いてみる。

さいごに

いずれにせよweb3テクノロジーもそれを活用する社会もまだまだ発展途上の状態。トークン供給量や報酬メカニズムなど考えるべきことも多い。引き続き「トークンエコノミクス」をテーマとした社会実装やビジネスの可能性への研究は続けていきたい。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?