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司法修習の振り返りと二回試験対策(総論)

伝えたいこと
なんてったって仲間が大切
積極的になって、やりたいことは手をあげる
とりあえず、調べてみる!勉強してみる!

今回は、司法修習の過ごし方と二回試験対策の総論ということでお話したいと思います。

1.司法修習の流れと導入修習

司法修習は、導入修習→実務修習(民事裁判・刑事裁判・検察・弁護士)→選択型修習→集合修習→二回試験という流れで進んでいきます。
A班とB班と分かれていて、集合修習と選択型修習は、逆になることがあります。

導入修習では、白表紙に沿ったような内容の講義があったり、しっかり即日起案(半日のがっつりの起案)があったり、模擬弁論準備や模擬接見などがありました。予習も割とありました。

とはいえ、同期と仲良くなる大切な時期で飲み会なども結構あったので、完璧な予習をして、授業に臨むのは難しかったです。

白表紙ってなんやねんと思われた方もいると思います。
白表紙の修習で使う教材(各科目)が、司法修習の開始前に、たくさん司法研修所から送られてきます。これが、白表紙です。

司法修習が始まるまでに、事前課題も課されていました。起案の書き方も分からない中での課題だったので、かなり苦労したように記憶してます。

導入修習は、自分に何ができないのか、これからどんな研修を受けていくのか、どんな勉強をしていくべきなのかを把握するようなイメージでした。

すごく優秀な人がいて、焦ることもあるかもしれませんが、導入修習での差が、二回試験での差には繋がらないので、ご心配なく。

ただ、任官や任検志望の方は、ここから成績の戦いは始まっているとのことを聞いたので、ご注意ください。

即日起案の解説と、民事弁護系の講義のノートだけは、しっかり取っておくことをおすすめします。
実務修習中の起案と二回試験に関係するので。

【余談】
74期の導入修習がもし司法研修所であれば、持っていくべき物
寝具、冷蔵庫、電気スタンド、デスク、椅子、本棚以外には基本的には、いずみ寮の自室には何もありません。我々の代からの贈り物もありません。
服(スーツと私服)
延長コード
ポケットWi-Fi
パソコン
スリッパ
トイレットペーパー
洗剤、石鹸、ボディソープ、シャンプー類
タオル(バスタオル)
お薬
加湿器(部屋がすごく乾燥します)
ティッシュ
ハンガー
ドライヤー
電気ケトル
勉強用の書籍(あんまり使いませんでしたが、要件事実の本は持っていっといていいかなと思います。)
※ただ、スーパーなどが近くにあるので、和光で購入できるので、ご心配なく。みんなで、集まって買いに行くのも楽しかったですよ。

2.実務修習と集合修習

感想としては、楽しかったです!仲間にも恵まれたので、日々切磋琢磨して、修習に臨むことができました。
(1)刑事裁判
刑事裁判修習の過ごし方のオススメは、一回結審の事件をまずは複数見て、刑事裁判の手続きのイメージを持つことです。私は、刑事裁判修習の1週目は、一回結審のものばかりを見るようにしていました。
修習に当たっての準備として、やるのであれば、刑法総論・各論の復習、刑事手続に関する白表紙(プラクティス刑事裁判・プロシーディングス刑事裁判)をしっかり読むことが大切かと思います。とはいえ、これらをやっていないと修習についていけないわけではないので、それほど気にしなくてもいいかと思います。
即日起案(記録を読んで、一日中起案し続ける日)があるので、特に刑法総論の復習や刑事事実認定ガイドという白表紙を読んでおくのは有効だと思います。刑事事実認定ガイドに書いてる内容は、最初、難しくて、全くわかりませんでした。修習中に、裁判官から様々な課題が出されるので、その課題を通じて、段々と白表紙の理解が深まっていくイメージでした。
私は、アディーレ法律事務所の二回試験対策講義とjiji先生の墜ちない起案講義を受けてから起案に臨んでいました。
日々の裁判官からの課題は、難しい共謀に関する論文を読んだり、条解を読んで調べたり、刑事事実認定に関する書籍を読み漁って、起案していました。

【参考になった本】
条解刑事訴訟法・刑法、コンメンタール
刑事事実認定(上)(下)
刑事事実認定重要判決50選(上)(下)
プロシーディングス刑事裁判
プラクティス刑事裁判
基本刑法(総論・各論)
刑事事実認定ガイド
刑事事実認定入門(石井一正)
実践的刑事事実認定と情況証拠(植村立郎)

(2)弁護修習
私は、一般民事と刑事事件をよく取り扱う事務所で修習させてもらっていました。修習中は、交通事故、離婚、刑事事件、自己破産、中小企業のトラブル、ペットトラブル、債権回収などの事件がありました。
私の場合は、相談に立ち会わせてもらって、起案できそうな素材があれば、起案をさせてもらって、レビューをしてもらうような感じで修習を進めていました。起案する素材があまりない日は、過去の事件から起案できそうなものを見繕ってもらって、最終準備書面の起案などをしていました。
感想レベルですが、交通事故はすごく難しいし、これをシステム化して、きちんと処理できている事務所はすごいなと思いましたね。
修習先の先生方は、みんなで面倒を見てくださったので、それぞれの先生の仕事の進め方や相談の受け方などを間近で見ることができたのはすごくいい経験になりました。

断る時には、断る。
依頼者にとって必要なことであれば
厳しいことでも伝える。
締め切りは守る。
自分の身は自分で守る。
たくさんの読書を通じて、勉強し続ける。
自信を持って回答できるように準備して、
依頼者に安心感を与える。
裁判官や相手方の代理人でも、
言うべきことはしっかりと言う。

などを感じました。
精神論的なことばかりかもしれませんが、すごくためになったように感じています。
待ってても助けてくれないし、教えてもらえないので、分からないことは積極的に聞いていくべきだと思いました。

(3)民事裁判修習
コロナの影響下で、事件の数はどうしても少なかったです。あと、民事裁判は期日を見て、何かをすごく学べるという感じではありませんでした。
期日をごとに記録をきちんと借りて、要件事実と争点を整理して、裁判官とディスカッションするのが勉強になりました。
全部が全部、丁寧にはできないとは思いますが、事実認定の勘所が何処かや手続き疑問などを裁判官にぶつけるのが一番勉強になるし、調べる過程が勉強なりました。

私の配属先では、
争点整理→事実認定(証拠や尋問の結果からどんな事実が確定できるか)→和解案の作成
という課題が多かったです。

あとは、破産事件に興味を持ち始めたので、債権者集会を傍聴させてもらって、執行担当の書記官さんにお願いして、勉強会をさせてもらいました。これはすごくタメになりました。触れたことがあまりなかった、破産事件に深く触れることができたのでよかったです。
【参考になった本】
事例で考える民事事実認定(ジレカン)
新問題研究
紛争類型別要件事実
要件事実マニュアル
各コンメンタールなどの逐条解説
事実認定の考え方と実務
倒産法処理入門
民法(全)

即日起案対策は、刑裁ところにも書いたように、まずは型を固めたかったので、アディーレの講義もjiji先生の講義をベースにしていました。
その上で、ジレカンと要件事実の復習をしていました。
余裕があれば、即日起案までに民法の全体像の復習ができてるとそれ以降で安心感は生まれるかなと思います。
一回でも何か使って思い出してると、後はそのテキストを復習に使えますしね。
本当に、型を固めるだけで、即日起案は成績を取れると思うので、まずは型を固めることを意識するのがいいかなと思います。

(4)検察修習
本当に濃密でした。
私は選択修習でも検察庁にお邪魔したのですが、たくさんの事件に関わらせてもらいました。
もちろん、中身はあまり書けませんが、自分が積極的にどんどんやりたいと言えば、小規模庁ならたくさん事件を持たせてもらえると思います。
事件の補充捜査、勾留請求、取調べなど修習生でないと経験できないことをたくさんやらせてもらえます。あとは、決裁を通じて、検事正や次席検事とも関わることができます。
指導的な意図で、厳しくも優しい指導があるかとは思いますが、ベテラン検事がどういう思考をされてるのか触れることができる貴重な機会なので、積極的に決裁には行った方がいいと思いました。

日ごろ、起案することになるのは、捜査方針や問題点や終局処分(起訴するか否か)を整理した決裁メモかと思います。書き方は、終局処分の考え方にあるので、しっかり読んで臨んでいました。その上で、検事ごとで気にされるポイントが異なるため、しっかりと指導担当とコミュニケーションをとって、どこを意識して用意するべきかを知っておく必要があると思いました。

あと、被疑者や被害者の方とも直接コミュニケーションを取ることになります。私は、自分の発する言葉の重みにはきちんと気をつけるようにしていました。時には、言いすぎてしまったり、びびってしまったり、迷ってしまったりもあるかとは思いますが、ひとりの人とのコミュニケーションだと思って、敬意を持って、丁寧に関わることがすごく大切だなあと実感しました。
プレッシャーもありましたが、一番楽しかった修習です。
【参考になった本】
実例刑事訴訟法
刑事訴訟法(酒巻)
条解刑法
条解刑事訴訟法
犯罪事実記載の実務(これは私はあまり使いませんでしたが、参考にはなりました)
終局処分の考え方

(5)選択修習と集合修習
選択修習はなんだかあっという間に終わりました。コロナの影響で予定していた自己開拓プログラムや全国プログラムがなくなったので、ずっと配属庁にいました。座学がかなり多かったので、残念でした。もっと、ホームグラウンド(弁護修習先)で事件見せてもらってもよかったなと思っていました。

集合修習は、本年度はオンラインでの実施となっていました。
思いの外、すごくうまくいったように感じました。
司法研修所の教官や事務局のおかげだと思い、すごく感謝しています。
インターネットは各自で契約で、負担の大きかった人もいると思います。
スマートフォンの無制限プランやポケットWi-Fiで対応してる修習生が多かったような印象です。私は、auの無制限プランのデザリングとワイモバイルのポケットWi-Fiで対応してました。
集合修習では、民事系の科目がすごく多かった印象です。
何個かの事件を、事件受理から和解成立までグループワークで行っていくようなカリキュラムがあり、すごく勉強になりました。
刑事も、グループに分かれて、模擬裁判がありました。刑事の模擬裁判は、グループ分けは各自で名前をファイルに記入して決まるスタイルだったので、仲良い人と一緒にやってる人も多くいましたね。
集合修習のメインは、各科目2回ずつ(合計10回)ある起案とその講評かと思います。
集合修習の起案から、すごく問題のレベルが上がった印象です。
実務修習中の即日起案で、そこそこ成績取れてたのに、私は集合修習ではかなり苦労しました。
任官志望者含め、しっかり勉強してくる層が増えてくるので、油断せずに勉強を進めることが大切かと思います。
全くやってないって言うてる人もたくさんいましたが、コソ勉スタイルの人も多いので、勉強仲間見つけて、友人をペースメーカーにして、コツコツやるのがいいのかなーと思ってました。
私は、今日のノルマ!を報告したり、ラインで質問し合う等をしていました。
B班だと集合修習が終わってしまえば、すぐに二回試験なので、事前に選択修習の期間くらいから、コツコツ勉強してると安心できるのかなと思います。せめて、大嶋本をきちんと読んで、要件事実の復習だけでもやっておくことをお勧めします。

3.二回試験対策(総論)

結局、二回試験は、導入修習でやったこと、実務修習中の即日起案、集合修習でやったことがベースになります。
その上で大切なのは、司法研修所の求める型や書く順番を把握して、自分なりの書き方(型ではなく中身の部分、評価の書き方、接続詞の使い方など)をある程度固めることだと思います。
結局、白表紙読んでるだけでは書けるようにならないので、一回一回の起案について、復習して、次どう書くかを固める必要があります。
私は、自分の起案だけだと不安だったので、友人に起案を見せてもらって、見比べて復習をしていました。友人の答案のいいところを自分の起案に書き写したり、自分と答案にダメだしをするなどしていました。
ここは、司法試験の論文対策のときに推敲をしていた人も多くいると思うので、慣れたもんかなと想います。

使用教材ですが、以下のような感じです。

民事裁判
要件事実は30講と大嶋本、新問研、類型別(岡口先生の類型別を解説してる本も使用してました)と事実記載例を使っていました。30講は2周、大嶋本は2周と苦手なところを適宜復習していました。実体法は潮見の民法(全)と趣旨規範HBと工藤論パを使用して復習しました(思い出す程度)。事実認定は、ジレカンを何周もやりました。

民事弁護
書き方は白表紙にある訴状例等で勉強。
法律文書作成の基本も読みました。執行保全は、導入修習レジュメ、白表紙、事例に学ぶ民事執行保全法を読みました。
法曹倫理は職務基本規程の解説本を出そうなところを読みました。和解は白表紙が分かりやすかったです(書記官本は不要)。要件事実と実体法は民裁と同じ

刑事弁護
白表紙(事実認定ガイド、刑弁の2冊)を主に利用して、小問対策は刑事弁護の基礎知識を利用していました。刑事弁護実務(分厚い白表紙)は使用しませんでした。あとは、ひたすら講義で言われたことを復習してました。書き方分からんのが一番点数落とすので、型を守って量を書くのが大切かと。

刑事裁判
事実認定ガイド、プロ刑、プラ刑を読み込んでました。講義の復習に加えて、友人と自分の答案を読んでました。刑法の実体法は基本刑法と工藤論パと趣旨規範HBを利用して復習しました。刑裁はふわっとしてて、分かりにくかったので、教官に質問させてもらっていました。

検察
終局処分の考え方を理解するに尽きる。実体法の復習は刑裁と同じ。時間が絶対的に足りないので、時間の使い方や書く順番などは工夫していました。たくさん書く必要があるので、友達にも起案を見せてもらって、抑えるポイントがどこかを把握していました。

上に書いた教材以外も勉強はしましたが、他のは一周くらいしかやってなくて、試験直前に支えになったような感じはないので書いていません。

大切なこと
●型を知る→事実認定の手法を知る
●起案するときには事実を証拠から丁寧に認定
→しっかり評価(意味付け等)を考えて書く
→総合評価をさぼらない
→書き切る。
●問題文をしっかり読んで、書くことを間違えない

これを守れば、きっと大丈夫だと思います。
詳細は、各科目の各論で書きたいなあと思っています(余裕があれば・・・)。

4.おわりに

私は、二年間司法修習にいくことを遅らせていました。かなり、ブランクがあり、知識の抜けがすごかったです。自分でも思うくらいには、結構勉強には時間を割いたと思っています。現役で修習に臨んでいた友人たちには、「やりすぎちゃう?肩の力抜きなよ」と言われていました。なので、上に書いてることを全部やらないと二回試験に合格できない訳ではないと考えています。
74期の修習がどのように行われるのかは分かりませんが、ひとりひとりの取り組み方次第で、すごく充実した内容にできると思います。
コロナ禍で不安があることと思いますが、不安や気になることは、先輩方に連絡して聞いてみるといいと思います。
今なら、先輩方も資料捨ててないと思うので、守秘義務に反しない範囲で、見せるくらいはしてもらえるかもしれません。
司法修習は情報戦と色々言われましたが、同期と仲良くしてれば、わからないことは教えてもらえますし、質問も気軽にできますし、実務修習での経験と導入や集合修習の講義と要件事実などの知ってないと対応できないことをしっかりやっていれば、きっと大丈夫です。
なので、二回試験に過度にびびらず、目の前の講義や実務修習に全力で取り組んでもらいたいなおもいます。

ーおわりー

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