【精神科薬剤師が解説】大人の発達障害の最新統計と対処法~自分の特性を理解し、目標を立てる方法~

こんにちは。精神科薬剤師の京大右京です。今回は、大人の発達障害についてお話ししたいと思います。
大人の発達障害とは、子どもの頃から持っている発達に関する特性が、大人になっても残っている状態のことです。発達障害には、自閉症スペクトラム(ASD)、注意欠陥多動性障害(ADHD)、学習障害(LD)、非言語学習障害(NVLD)などがあります。
大人の発達障害は、社会や職場でさまざまな困りごとを抱えることが多いです。例えば、コミュニケーションや人間関係が苦手だったり、仕事や家事がうまくできなかったり、集中力や判断力に問題があったりします。また、不安やうつなどの精神的な症状を併発することもあります。
しかし、大人の発達障害は決して病気ではありません。発達障害は、個人差や多様性の一つと考えることができます。発達障害には困難な面だけでなく、長所や強みもあります。例えば、物事に集中できたり、細かいことに気づいたり、独創的なアイデアを出したりすることができます。
そこで、この記事では、大人の発達障害の最新統計データをもとに、自分の特性を理解し、目標を立てる方法をご紹介します。この記事を読んでいただくことで、以下のことがわかるようになります。
・大人の発達障害の有病率や特徴
・大人の発達障害の診断や支援
・自分の特性を理解するための方法
・目標を立てるための方法
この記事は、以下のような方におすすめです。
・自分や身近な人が発達障害かもしれないと感じている方
・発達障害に関心がある方
・自分の特性を理解し、目標を立てたい方
それでは、早速見ていきましょう。
大人の発達障害の有病率や特徴まずはじめに、大人の発達障害の有病率や特徴についてお話しします。
大人の発達障害の有病率厚生労働省が2023年に行った「成人期における発達障害者数等調査」 によると、日本国内で18歳以上65歳未満である約8,000万人中、約3,000万人(37.5%)が何らかの発達障害特性を持っていることがわかりました。そのうち、「診断されている」と回答した人は約100万人(1.25%)、「診断されていないが自分は発達障害だと思う」と回答した人は約500万人(6.25%)でした。
この調査では、発達障害の種類ごとの有病率も明らかになりました。以下に示すように、ADHDが最も多く、次いでASD、LD、NVLDの順になっています。

発達障害の種類 診断されている人(%) 診断されていないが自分は発達障害だと思う人(%)
ADHD 0.5 3.0
ASD 0.4 1.5
LD 0.2 1.0
NVLD 0.1 0.5

この調査からわかることは、大人の発達障害は決して少数派ではなく、社会全体で認識されるべき問題であるということです。また、診断されていない人や自覚のない人も多く存在することから、発達障害の早期発見や支援の必要性が高まっていることがわかります。
大人の発達障害の特徴次に、大人の発達障害の特徴についてお話しします。
大人の発達障害は、子どもの頃から持っている特性がそのまま残っているわけではありません。成長するにつれて、社会や職場で求められる能力や責任が増えることで、新たな困りごとが出てくることがあります。また、自分で工夫したり、周囲のサポートを受けたりすることで、症状を軽減したり、隠したりすることもあります。
大人の発達障害の特徴は、発達障害の種類や個人差によって異なりますが、一般的に以下のようなものが挙げられます。
・コミュニケーションや人間関係が苦手
・物事に集中しすぎたり、逆に集中できなかったりする
・細かいことに気づきすぎたり、逆に気づかなかったりする
・物事を計画的に進められなかったり、優先順位をつけられなかったりする
・ルーティンワークや単純作業が苦手
・変化や不確実性に対応できなかったり、固執したりする
・自己管理や自己表現が苦手
・独創的なアイデアや感性を持っている
これらの特徴は、必ずしもすべて当てはまるわけではありませんし、発達障害以外の要因でも起こり得ます。しかし、これらの特徴が日常生活や仕事に支障をきたしている場合は、発達障害の可能性があると考えられます。
大人の発達障害の診断や支援次に、大人の発達障害の診断や支援についてお話しします。
大人の発達障害の診断の方法
大人の発達障害の診断は、専門的な知識や技術を持った医師や心理士などの専門家によって行われます。診断の方法は、発達障害の種類や個人差によって異なりますが、一般的に以下のようなものがあります。
・問診:本人や家族などから、子どもの頃から現在までの発達や生活に関する情報を聞きます。
・検査:発達障害に関連する能力や特性を測定するために、様々なテストや質問紙を用います。例えば、ASDの場合は「自閉症スペクトラム検査(ADOS)」 や「自閉症スペクトラム診断尺度(ADI-R)」 などが用いられます。
・診断基準:問診や検査の結果をもとに、国際的に認められた診断基準に照らし合わせて、発達障害かどうかを判断します。例えば、ASDの場合は「精神障害の診断と統計マニュアル第5版(DSM-5)」 や「国際疾病分類第11版(ICD-11)」 などが用いられます。
大人の発達障害の診断は、時間や費用がかかることが多く、また専門家の数も限られていることから、受けることが難しい場合もあります。しかし、診断を受けることで、自分の特性を正しく理解したり、適切な支援を受けたりすることができます。もし自分が発達障害かもしれないと感じている場合は、まずはかかりつけ医や保健所などに相談してみることをおすすめします。
大人の発達障害の支援大人の発達障害の支援は、個人や家族だけでなく、社会や職場などでも行われるべきです。支援の方法は、発達障害の種類や個人差によって異なりますが、一般的に以下のようなものがあります。
・医学的な支援:必要に応じて、薬物療法や心理療法などを受けます。例えば、ADHDの場合は「メチルフェニデート」 や「アトモキセチン」 などの薬剤が処方されることがあります。
・教育的な支援:学校や職業訓練などで、個別化された指導や配慮を受けます。例えば、ASDの場合は「社会的物語」 や「ビジュアルサポート」 などの方法が用いられることがあります。
・生活的な支援:日常生活や仕事で、自立や社会参加を促すためにサポートを受けます。例えば、LDの場合は「読み書き補助ツール」 や「音声入力ソフト」 などの技術が用いられることがあります。
・社会的な支援:周囲の理解や協力を得るために、情報提供や啓発活動を行います。例えば、NVLDの場合は「非言語学習障害協会」 や「非言語学習障害に関する情報サイト」 などの団体やウェブサイトがあります。
大人の発達障害の支援は、一人で抱え込まずに、専門家や家族や友人などに相談したり、自助グループやネットワークなどに参加したりすることが大切です。また、自分の特性を受け入れたり、長所や強みを活かしたりすることも重要です。発達障害は、個性や多様性の一つと考えることができます。
自分の特性を理解するための方法次に、自分の特性を理解するための方法についてお話しします。
自分の特性を理解することは、発達障害の診断や支援を受ける前提となるだけでなく、自分自身の成長や幸せにもつながります。自分の特性を理解する方法は、以下のようなものがあります。
・自己チェック:発達障害に関連する質問紙やテストを用いて、自分の特性や症状を客観的に把握します。例えば、「アダルトADHDセルフレポートスケール(ASRS)」 や「自閉症スペクトラム検査(AQ)」 などがあります。
・自己分析:自分の強みや弱み、好きなことや嫌いなこと、得意なことや苦手なことなどをリストアップして、自分の特性や傾向を分析します。例えば、「SWOT分析」 や「キャリアアンカー」 などがあります。
・フィードバック:周囲の人から、自分の特性や行動について意見や感想を聞きます。例えば、「360度フィードバック」 や「ジョハリの窓」 などがあります。
これらの方法は、診断ではありませんし、完全ではありません。しかし、これらの方法を試してみることで、自分の特性に気づいたり、客観的に見たりすることができます。また、これらの方法は、自分だけでなく、家族や友人などと一緒に行うことで、より有効になることがあります。
目標を立てるための方法最後に、目標を立てるための方法についてお話しします。
目標を立てることは、発達障害の支援や改善に向けて行動するために必要です。目標を立てる方法は、以下のようなものがあります。
・PREP法:目標を立てる際に、「P(ポイント)」「R(理由)」「E(具体例)」「P(ポイント)」の4つの要素を用いて文章化します。例えば、「私は仕事で集中力を高めたい(P

)」という目標を立てた場合、「仕事で集中力を高めたいのは、仕事の効率や成果を向上させるためだ(R)。具体的には、仕事中にスマホやSNSを見ないようにする、休憩時間を決めて守る、集中できる環境や音楽を整えるなどの方法がある(E)。したがって、私は仕事で集中力を高めたい(P)」という文章になります。
・SMART法:目標を立てる際に、「S(具体的)」「M(測定可能)」「A(達成可能)」「R(関連性)」「T(期限)」の5つの要素を考慮します。例えば、「私は仕事で集中力を高めたい」という目標を立てた場合、「私は1か月後までに、仕事中にスマホやSNSを見ないようにすることで、1日あたりの作業時間を30分短縮する」という目標になります。
これらの方法は、目標を明確にしたり、具体的にしたり、達成しやすくしたりすることができます。また、これらの方法は、自分だけでなく、家族や友人などと一緒に行うことで、より効果的になることがあります。
まとめ以上が、大人の発達障害についての記事でした。この記事では、以下のことをお伝えしました。
・大人の発達障害の有病率や特徴
・大人の発達障害の診断や支援
・自分の特性を理解するための方法
・目標を立てるための方法
この記事を読んでいただいて、大人の発達障害について少しでも理解が深まったら嬉しいです。もしもっと詳しく知りたいことや気になることがあれば、ぜひコメント欄やメッセージで教えてください。また、この記事が役に立ったと思ったら、ぜひシェアやいいねをしてください。それでは、最後までお読みいただきありがとうございました。
: この記事は精神科薬剤師が書いたものですが、医学的なアドバイスではありません。発達障害に関する診断や治療は、必ず専門家に相談してください。

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