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Ep.9『同じハイボール』

同じハイボール(53歳、男性)

『マスター、ハイボール』

俺はこのバーに来る常連客の1人。

15年前に大阪から単身赴任で近くに住み、間もなくしてこのバーがオープンし、初日からお世話になっている。

俗に言う初期メンバーだ!

酒場のマナーは理解しているつもりだが、酒に呑まれる夜も何回かあり、マスターにも度々迷惑かけてきている。

そんな俺もつい最近まで禁酒していた。

いい年してお酒で失敗した訳では無い。

体調を崩し、治療の為医者から飲酒を止められたのだ。

健康には気を使って来たつもりだった。

週末には近くのプールへ行き、泳ぎ、鍛えているお陰で、今でも腹筋は割れている。

もともと暴食する方ではなく、その為栄養には気を配っていた。

単身赴任をいい事に、女遊びでストレスも解消していた。

健康診断で異常が見つかった時は、唖然とした。

健康に気を配っている人程、病気になり易いと聞いた事がある。

それから手術を経て、また酒が飲める喜び。

俺は酒の味はもちろんの事、酒場の雰囲気が好きだ。

酒場は人の良い部分と悪い部分の両方を見せてくれる。

その事を理解して酒と付き合っている、この店の常連客も好きだ。

『マスター、一杯飲みいや、御馳走したるわ』

『何飲むねん?』

マスター『同じハイボールです。また一緒に乾杯出来るのを嬉しく思います。いただきます。』

このバーも時間に伴い、常に環境が変化していった。

転勤や結婚で来なくなった常連客。

健康の悪化や、このバーでトラブルを起こし、自粛している常連客。

俺もいつ死ぬか分からん。

何かの事故に巻き込まれるかもしれん。

失ってから後悔してもしょうがあらへん。

そうならないよう、日々何かを感じ、伝えて行かなあかん。

『マスター、また飯連れてったるわ。』

『昔も行った、近くの同じ九州料理屋や。』

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東京銀座にひっそりと構えるバー。来店されるお客様と、今宵最高の一杯をお出しするマスターのお話。ダサくてもホットな気持ちにさせてくれるエピソ…

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