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Ep.11『スパークリングワイン』

スパークリングワイン(25歳、女性)

ここだここだ、

『1人です。』

空いていたカウンターに座り、スパークリングワインを注文した。

私は近くの美容室に通って1年が経つ。

前回、髪を切った時に偶然通りかかって、初めて入ったのがきっかけだ。

バーとは言うものの、カジュアルなスタイルで、一杯だけ飲んで帰る1人のお客さんも沢山いる事を、前回チェックしたのだ。

しかも女性でも1人で入りやすい、一階にあるオープンなお店。

今回も美容室後に一息ついて、待ち合わせまでの時間調整。

今日の仕事は半休を取ったので、まだ外が明るい。

夕方とはいえ、お日様の光を感じながらお酒を飲むのは、なんだか少し優越感。

今の会社に転職して、もうじき2年が経つ。

仕事内容にも慣れ、この頃はサボり方も覚えて来た。

と言うよりは、後輩が順調に育ってくれているのだ。

そのおかげで、希望した日に休みを取る事ができる。

後輩の存在に感謝感謝。

今回は随分とヘアカラーを明るくしたからな…

と言っても、

きっと誰も気づいてくれないんだろうな…

『(ゴクリ)』

『マスター、おかわり下さい』

マスターは、

新しくキンキンに冷えたフルートグラスを冷蔵庫から出すと、スピーディーかつ静かにスパークリングワインを注いだ。

そして最高の状態で私の手元に置くと、

マスター『今回も素敵なヘアスタイルですね。』

思い掛けないマスターの一言に私は動揺したが、

『ありがとうございます。今回も美容室帰りなんです。』

と私はとっさに応えた。

きっと前回初めて来たときに、近くの美容室帰りだという会話を覚えていたのだろう。

『覚えていてくれたんですね。』

そう私が言うと、マスターは照れ臭そうに、目線をそらしながらうなづいた。

こういったお店は、マスターの愛嬌や気配りがが心地良くて、リピートしちゃうのよね。

次回もまた、マスターに会いに来れる様に、仕事頑張ろうっと!

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東京銀座にひっそりと構えるバー。来店されるお客様と、今宵最高の一杯をお出しするマスターのお話。ダサくてもホットな気持ちにさせてくれるエピソ…

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