Ep.8『にこやかさと可愛らしさ』
にこやかさと可愛らしさ(21歳、女性)
『(最後の一杯は何にしようかな…)』
私は社会人一年目。
地元の短大を卒業してから、憧れの東京に出て来た。
今日は同期と2人でご飯を食べてから、このバーに来た。
彼女はお酒が好きで、最近はこのバーに通い始めたらしい。
一緒に行きたいバーがあるとの事で、お酒初心者の私は半分無理矢理連れてこられた。
どうやら彼女とマスターの田舎が同じらしく、仲良くなったそうだ。
それはさておき、
私は絵に描いたようなお酒初心者。
どんな味が好きなのか?
アルコールは強いのか?
何が分からないかも、分からない状態だ。
ーマスターにオススメを頼んでみたら?ー
彼女はそう言うが…
頼み方すら分からない…
ーマスター、彼女、お酒初心者なんだけど、オススメ作って頂けますか?ー
『ちょっと、勝手に話を進めないでよ。』
『でも、お願いできますか?』
『私、お酒初心者で、種類も味も分からないの…』
そうするとマスターから3つの質問があった。
一つは甘口か辛口が良いのか。
二つ目はアルコールが強いか弱いが良いのか。
三つ目は私が今知っているお酒について。
質問に答えてしばらくすると、
マスターは小振りで可愛いタンブラーに入ったカクテルを、私の前に置いた。
マスター『スプモーニです。女性に親しまれていて、とても人気のあるカクテルの一つですよ。』
私は初めての出会いに、恐る恐る口を付けた。
美味しい。
カクテルってこんなに美味しいの?
上手に表現出来ないけど、爽やかで甘苦い、大人の味って感じ。
私は何が入っているのか細かくマスターに聞いた。
何にせよ、色が可愛い。
あたたかい照明の色も手伝ってか、みずみずしいいピンク色に見える。
私は勢いよく飲み干してしまった。
その様子を見て、隣にいた同期が驚いている。
お酒って楽しい。
そう言う意味では、どこで何のカクテルと出会うかが大事かもしれない。
別の場所で、別の人が作ったカクテルだったら、真逆の結果になっていたかもしれない。
このカクテルとの出会いがこのお店で良かった。
『ねぇ、また一緒にこのバーに来ようよ。』
ここから先は
グラス一杯の物語【シーズン1】
東京銀座にひっそりと構えるバー。来店されるお客様と、今宵最高の一杯をお出しするマスターのお話。ダサくてもホットな気持ちにさせてくれるエピソ…
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?