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ほぼコーヒーで出来ている

いつからの習慣か定かではないが、中学生の頃にはもうコーヒーを飲んでいた。高校を卒業して、札幌の学生会館で浪人時代を過ごしたが、その部屋で、毎日レギュラーコーヒーをペーパードリップで小さなサーバーに溜め、ウォーマーで温めていた。毎日、1リットル以上は欠かさず飲んでいたと思う。

ジム・ジャームッシュの作品でコーヒー&シガレッツというお洒落モノクロ映画がある。カフェでコーヒーとタバコを嗜む何組かの人たちのワイルドでアナーキーなやりとりを淡々と描いていたように記憶しているが、昔観た映画なので、あまり覚えていない。タバコが悪者扱いされ、喫煙者の権利が奪われるようになる以前、タバコとコーヒーの組み合わせは、世界共通でイケていたのだ。

それがどんなに酷い口臭を醸し出す組み合わせだったか、当時は、まったく意識することはなかった。恐らく、同世代の男たちは皆、コーヒー&シガレッツがカッコイイと思っていたから、そのカッコいい価値観の前に口臭など屁でもなかったのだ。屁は昔も今も臭いが、タバコとコーヒーの口臭は、当時、ギリギリカッコイイニオイで耐えられたのだと思う。

お酒に弱い私の、生まれてから一番飲んでる飲み物ランキングで考えても、コーヒーは水に次ぐ2位。最初は味などどうでもよく、コーヒーであれば何でもいい、というスタンスだったが、いつのまにか違いのわかる男になっていた。昔CMでやっていた「違いがわかる男のネスカフェゴールドブレンド」含むインスタントは味の違いがわかるようになって、ほぼ飲まなくなった。今考えるとあれは墓穴掘るタイプのCMだった。

高校3年の冬、友人と5人で行った受験旅行先の喫茶店で、コーヒーは何にしますか?と聞かれ、迷いなく「キリマンジャロ!」と答えひんしゅくを買ったことはどんなコーヒーよりも苦い思い出である。当時、普通の喫茶店でコーヒーと言えば、ブレンドかアメリカンか、この2択だった。

大学2年の冬、彼女がコーヒーミルをプレゼントしてくれた。大学の近くにあった自家焙煎珈琲の店で豆を買って、自分で挽いて、飲むようになった。パチンコで勝つと、飛びぬけて高価なブルーマウンテンを買い、2番目に高価なハワイコナno1はハワイ粉no1だと思って敬遠した。その当時、日本に上陸したトアルコトラジャが高品質で値ごろ感もあったので、好んで飲んでいた。多分、今でいう中煎りもしくは浅煎りだった。

社会人になり数年経った頃、札幌市内の円山裏参道界隈ディープエリアのカフェが高感度な若者の間で話題となっていた。とりわけ高感度でもない私の耳にもその噂が入り、飲んでみて衝撃を受けた。それが森彦。深煎りとの出会いだった。その後、数年後に札幌にも上陸したスターバックスも深煎りがベースとなっているが、それからしばらくは、飲むコーヒーはほぼ深煎りのものになり、深煎りによく合う豆を選ぶようになった。カカオ感の強いどっしりしたマンデリンばかりを飲んでいた。

東京の暮らしでは、浅煎りを好んだ。フルッタメルカドンという酸味の効いたフルーツ感の強いコーヒーをよく飲んだ。その土地土地で、気候条件や匂いが違うから「美味しい」と感じる味が異なる。冷涼で乾燥する北海道では濃い味が美味しく感じるのだ。後になって、スターバックスやタリーズを生んだシアトルという都市が、北海道と同じ気候帯であることを知って「なるほど」と納得した。

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