デザイナーとしての初めての仕事は、紙焼きでした
サムネ画像出典:MONO SWITCH
こんにちは、シノハラシゲシです!
グラフィックデザイナーやクリエイターは
パソコンでイラレやフォトショップを使い・・・
って時代じゃない90年代のデザイン事務所での仕事のお話。
20代前半だった私は、横文字の仕事にちょっぴり憧れをいだいて
大手広告代理店系のデザイン事務所に入社しました。
当時のデザインの世界的常識は「手作業」
高校の美術部も美大も大手デザイン事務所でさえも
手作業が当たり前の時代でした。
線を引くのも円を描くのも全て手作業。
素人同然の私は、その横文字仕事とは程遠い現場に初めて降り立った日に
絶句したことを今でも鮮明に記憶しています。
なぜなら、その頃の私はすでにワープロで文章をうったり、
パソコンでグラフィカルな画像のゲームなどを見ていたからです。
そんな当時のデザインの作業工程は、
原寸よりひとまわり大きめの方眼紙に
ロットリングペンというペンで規定サイズのトンボを書き、
おおまかにレイアウトしていき
その各所に写真や文字を配置していくといったながれ。
この一連の作業を「版下作成」と呼んでいました。
カラーコピーやプリンターなども普及していない時代。
写真も白黒コピーしたものを、だいたいこれくらいというサイズで仮配置。
そして文字は、写植印字という
これまた別場所で打ち出された写真のようなきれいなモノクロの文字を
ゴムのりでペタペタときれいにはりつけていく。
こんな感じで・・・
まるで犯人が怪文書を作るような工程(笑)
出典:日本リテラル
↑このラフから版下作業を経て↓最終的にこんな感じに仕上がる
出典:Mac世代におくるレイアウト術/新谷雅弘 (著)
そしてこの写真植字は、
写植機という機械を持っている写植屋さんという業者さんに、
ほぼほぼ外注。
その際も、ここの見出しのサイズはこのくらいでフォントは○○明朝。
この文章は行間はこのくらいで、このようにおくるなど、
発注前にこまかな指示をだして、
打ち出されたものを受け取り、
版下にはりつけていく。
デザイナーというカッコイイ響きとはほど遠い
びっくりするような業界でした。
しかも、その写真植字は1文字いくらといった感じで外注していた関係で
経費削減のため何度も気軽に外注をしないよういわれていました。
ではどうするのか?
昔作った版下からはがして再利用したり、
写真植字を同じように複製する手法「紙焼き」という作業をして、
新しい版下にその文字をカッターナイフでキレイに切って、
ふたたびゴムのりでペタペタとはっていくのです。
そんな私の初めてのデザイナーとしての仕事はこの工程の中の、
写真植字を再利用するための紙焼きを一日中すること
からのスタートでした。
デザイナーさんのアシスタントといったところでしょうか。
しかし、私は本当にラッキーでした。
こんな作業一生無理!と思いかけていた入社して1年半後に
業界にあのデザイン界の黒船、Macが入り込んできたのです!
当時会社で一番若かった私が、Mac担当者となり
0からMacの操作やAdobeのイラレ(当時のバージョン3.0)を
独学で習得していきました。
今でこそなつかしいと思える、あの面倒な版下作成作業も
けして無駄ではなく
白黒のみの世界で作成していくその過程は、
デザイナーとしての創造力をやしなううえでは
とても大きな経験だったと思えます。
この春いろんな業界で、新卒ではじめて働かれる方もいれば
転職で今までとは違う業界で働かれる方もいるかと思います。
はじめは、間違いなくあなたが想像していた職場とは違うかもしれません。
しかし、今だからこそ言えることそれは、
けして無駄なものはひとつもない!
やがていつの日か、その経験が必ず役に立つ!
ということじゃないでしょうか。
お金やお給料はもちろん大事です。
しかしお金や給料とはまた別のところにも、
未来への宝物が必ずあると信じています。
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