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Front Seat / 渡辺貞夫

 今日は、世界的に有名なサックス・プレーヤーである渡辺貞夫の1番のお気に入りアルバム、Front Seatをご紹介します。1989年リリースのフュージョン・アルバムです。後述する参加ミュージシャンがまた豪華。メンバーがすごいと個性のぶつかり合いがあって刺々しいこともありますが、このアルバムではナベサダらしい「和」の力によってうまく個性が溶け合っています。

 この「和」には2つの意味があります。1つは、彼の人柄からくる「人」の和です。もう1つは「日本」の和です。彼のフレーズには、どこか懐かしい日本の旋律が感じられ、それが全体に統一感を与えています。

 プロデューサーは、それぞれ個性的なジョージ・デューク、ロビー・ブキャナン、ラッセル・フェランテが務めています。それでいてバランスを欠いていないのは不思議です。ミュージシャンはパティ・オースティン、ポール・ジャクソンJr、エイブラハム・ラボリエル、ジミー・ハスリップ、ジェフ・ポーカロ、カルロス・ベガ,ジョン・ロビンソン、アレックス・アクーニャ、ポリーニョ・ダ・コスタ、オスカー・カストロ・ネヴィス、ニール・スチューベンハウスなどです。それでもナベサダの明るいアルト・サックスは、様々なカラーの個性の中で埋もれずに煌めいています。

 お気に入りは3曲目のパティ・オースチンのボーカル曲、Only In My Mindから4曲目のMiles Apartのシーケンス。アメリカで仕事している時、夜遅くに車で帰る時の定番でした。今でもベセスダの研究所から郊外のマンションに帰る夜の道を思い出します。

 Only In My Mindはシンプルでロマンティックなラブソングです
‘Love was shining in the dark 
Hiding in your eyes
Someday it would find me’
パティ・オースチンが歌うとこんな歌詞がまたすんなり入ってきます。

 ナベサダらしいボサノバのタイトルナンバーのFront Seat、最後のぶっ飛びシンセソロのTaking Timeもクールです。

 Front Seat はKeith JarrettのThe Melody At Night, With Youとともに私のベスト10に入るアルバムです。ぜひお聞きになってみてください。

おまけ The Melody At Night, With Youの記事です。

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