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スタンダード復帰録:閑話休題 何が残るのか

閑話休題ということで、今回のイベントについての現状の成否、そしてこれからについてでも。

・まずは前提から

マジックの数あるフォーマットの中で、WoCの売上的な意味で一番重要なのがスタンダードです。TCGメーカーが売り上げを得るには新製品を買ってもらう必要があり、新製品を買ってもらうには既製品を駆逐しないといけません。本来はカードパワーのインフレによるゲーム性の変化や過去カードとの相互作用検証による開発費の上昇と戦う必要があるわけですが、それを古いカードをスッパリと使えなくすることで解決するのがスタンダードというフォーマットです。ユーザーとしても絶版カードの再録を待つ必要がないためいつでも同じ金額で遊べるメリットがあり、悪い話ではありません。
ところが、最近テーブルトップでのスタンダードプレイヤーが減少していることが問題になっています。MTGアリーナの普及、統率者をはじめとしたエターナルフォーマットの人気、競技シーンの盛り下がりなどなど要因は複合的なもので、すぐに改善とはいきません。しかしスタンダードは大動脈、放置するわけにはいかないのです。

・目標の達成

経緯から考えるに、スタンダードプレイヤーを増やすことが最終的な目的であり、今回のイベント施策はこれにつながるものであると言えます。つまり今イベントの要旨は「とにかく普段スタンダードを遊んでいないプレイヤーにスタンダードを遊ばせること」だったわけです。そしてこの目標はおおよそ達成されました。普段スタンダードに触れてすらいない多くの人がスタンダードのデッキをわざわざ用意して集まったのです。全国で1000人規模の大イベントとなった今企画は成功と言えそうです。…自ら設定した目標を達成したから成功、というのはマッチポンプみたいですが。
しかし、本来の目的に立ち返ると違う面が見えます。WoCの目的はスタンダードプレイヤーを通して新しいパックを継続的に買ってもらうことです。そのため、一段目の目標としてスタンダードで遊ぶ機会を提供したに過ぎません。つまり今回の参加者がスタンダードを遊び続けてくれることが大切なのではないでしょうか?

・後に残るものは?

今回多くのプレイヤーにスタンダードに触れる機会を提供しました。ではこれらのプレイヤーのうち、どれだけがスタンダードを続けてくれるでしょうか?
スタンダードを続けるのに必要なものを列挙してみましょう。勿論コミュニティが存在しない前提です。既にスタンダードで遊んでいるコミュニティがある店ならば、そのコミュニティへどう導くかが全ての鍵を握ります。まだコミュニティがない店に新たなコミュニティを作ることが、スタンダードを続けてもらうための条件になります。
ひとまず必要になるのは、定期的に開催されるイベントのあるお店、そのお店でイベントに参加してくれる他のプレイヤー、スタンダードのカードを集められる在庫状況あたりでしょうか。もともと存在するなら何かしらコミュニティが出来てて然るべきなものなので、恐らくどれか、または全てが足りないのでしょう。プレイヤーの用意は今回の機会を活用するとして、イベントと在庫の用意はお店の仕事です。負担はそれなりに大きいものになりますが、それを店が受け入れられるだけの貢献を今回のイベントで見せたでしょうか?まあそうはなっていないでしょう。
結局卵が先か鶏が先か。今回参加したプレイヤー達がスタンダードを続けることを当てこんで在庫を用意するには、それらのプレイヤーがその店でスタンダードを続けられる環境を整えておく必要があります。その説得材料として今イベントの動員数が使われるわけですが、この結果をもってそこまでの環境整備に頷く経営者は多くはないでしょう。
結果として、多くのプレイヤーを集める機会を提供したしそこには大量の新規プレイヤーもいましたが、その後の定着についてはお店に丸投げということです。今回の施策を以降の商売につなげるのはあくまで小売店の仕事であるという意図、またそれぞれに事情が大きく違うのですから公式も支援しようがないという意図も見えます。

・後に残せるかはお店とユーザー次第

結局公式でできることなんてそんなものなのです。マスマーケティングに対応する大きな広告、数字の分析とアンケートや売り場状況を見た製品の最適化、そしてなにより面白いゲームを提供するのが本業であり、売り方については小売りに頑張ってもらうしかありません。そして小売りの下に我々ユーザーがいます。今回のイベントを通じてユーザーコミュニティが残るのが最上ですが、スタンダードイベントが成立する日が出てくるだけでも成果はあったと言えます。そのための努力をしましょう。
可能なら、イベントの後にお店と参加者の間でスタンダードイベントがどの曜日にどのようなスパンで行われれば参加できるかを話し合いましょう。実際それをもとにイベントを申請して成功しているお店は非常に多いですし、特に開始時間については参加者間のコンセンサスが取れていることはとても大切なことです。
乱暴な言い方をすれば、今回のイベントは「これだけのプレイヤーを無理やり集められんだぞ」という公式の示意であり、そもそもユーザーがいないという店舗の言い訳を蹴っ飛ばすものでした。「こんなイベント何も残らない」ではなく、「これだけのことをやってくれたんだから、何かに繋げないと勿体ない」と思っていただけたらと願います。

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