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すじこの思い出


最初に来た二匹

 すじこというねこがいた。
 預かりボランティアを始めた当初に預かった二匹のうちの一匹で、もう一匹のすももは長めに滞在することになったけれども、すじこはすぐに里親が見つかった。だから、すじこが会社にいたのは、おおよそ二週間くらいだったと思う。
 下の写真のキジトラがすももで、長毛がすじこである。すじことすももはそれぞれ別々の多頭崩壊現場からレスキューされてきたねこで、もともと一緒の暮らしていたわけではないけれども、会社では仲がよかった。
 こんな風にくっついている写真を見てもらえばわかってもらえると思う。

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物怖じしない性格

 ねこにも人間と同じように個体差があって、性格もそれぞれである。人馴れすれば変わっていくものだというのがいまはもう経験としてわかったけれども、預かった当初はそういうこともあんまりきちんと把握しておらず、「かわいいのが二匹きた! しっかりお世話しなきゃ!」という責任感のようなものが先に立っていたように思う。
 ただ、すぐに二匹ともそれぞれ個性があることはわかった。すじこはもう二日目くらいからあちこち歩き回ったし、簡単に撫でさせてくれたし、二階の社長室(便宜上の名称)にある、僕の匂いが染み付いた椅子に置いてあるドーナツ型のクッションがお気に入りになった。
 それに比べて、すももは臆病というか警戒心が強いタイプだなと思った。なお、このすももの性格はのちに大転換するが、それはまた別の機会に書こうと思う。

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セレブになったすじこ

 いったい、保護猫の世界においては、長毛種というのはあまり多くないらしい。すじこは完全に長毛かつ耳折れだし、もう明らかにかわいいので、「この子はきっとすぐ里親が見つかるから、いなくなるのも早いはず。里親が見つかったら笑って送り出そう」と毎日言い聞かせていた。
 日に日に人馴れしてくる様子は、本当にかわいいものである。ただ、預かりボランティアの役目は、「たくさん愛情を注いで、人馴れを進め、そして(譲渡会などを通じて)幸せを掴めるようにする」ことだ。だから、基本的に別れは避けられない。
 そして、別れの日は思っていたよりも早くきた。兄妹と一緒に引き取りたいという人が現れたのだ。善は急げと言うし、すぐ搬送することになった。
 最後に抱っこして別れを惜しみ、会社に来たときよりも少し重くなったケージを抱えて、搬送ボランティアさんに託す。「いいことだけど、お別れつらいですね」「いやまあ、覚悟はしていたんで……」そんな会話を交わしたことを覚えている。
 すじこはいま、立派なタワーマンションの高層階で、セレブ生活を送っている。見事に幸せを掴んだのだ。彼女のねこ生に、弊社は少しだけ貢献できただろうか?

(平林)

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