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『木簡学入門』、好評発売中です

 こんにちは、平林です。
 新刊が出たのにここでお知らせするのがすっかり遅くなってしまいました……。
 コロナを乗り越え、ようやく出せた新刊ですので、遅れましたがちゃんと紹介します。


大庭脩先生ってどんな先生?

 まずは、本書の著者であるところの大庭脩先生について、簡単にご紹介したいと思います。

 大庭先生は1927年のお生まれで、生後間もなく京都市から大阪市に移られました。
 1950年に龍谷大学文学部東洋史学科を卒業され、53年に同大学院を修了。その後は聖心女子大学文学部(小林分校)専任講師・助教授を経て、1960年に関西大学文学部助教授、65年には教授に昇任されました。
 1997年に関西大学を定年退職されたのち、2000年に皇學館大学学長に就任され、在任中の2002年11月27日に急性白血病のため逝去されました。

 大庭先生の学問は、ご本人曰く「大きく分けて三つ」あるのですが、本書はそのうち「中国古代、特に漢代の法制史研究」と深く関わる書物です(他のふたつは「唐代の告身の研究」「江戸期に大陸より輸入された書籍の研究」)。
 20世紀後半より、中国古代史研究には地下から発見された文字史料──すなわち簡牘帛書の活用が必須のものとなりました。
 そうすると、制度史の研究のためにもこれらを読みこなし、使いこなすことが必要となってきます。
 このような状況の到来に、当時若手研究者としていち早く接した大庭先生が一般向けに書かれたのが『木簡』(1979年、学生社)であり、本書『木簡学入門』(1984年、講談社学術文庫)でありました。
 大庭先生はほかにも、多忙ななか多くの一般向け書籍を出版されています。大庭先生は、超一流の研究者であるとともに、優れた啓蒙書の書き手でもあったということができるでしょう。

 研究者としての大庭先生は、「実証」の人として知られました。
 龍谷大学大学が輩出した大庭先生と同世代の歴史学者として、日野昭先生(日本古代史)、網干善教先生(考古学)がいらっしゃいますが、この三人は「史学科三羽烏」と呼ばれたと伝わります。


『木簡学入門』ってどんな本?


 前節で少し触れましたが、大庭先生は多くの一般書を出版されました。
 木簡学分野では、一般書以外にも概説的な文章を多く遺されたのですが、本書は1984年の出版であるにもかかわらず──その後多くの新出史料があったけれども──いわゆる入門書として必要な要素が備わり、現時点でもしっかりと通用するものである点が最大の特徴であるといえます。

 下記に目次を掲げますが、①木簡の定義、②木簡の形式/内容による名称、③西域探検に始まる研究史、④各種木簡の内容、⑤文献であり考古遺物でもある木簡をどう扱うか、⑥書体をめぐる問題……と、よくも一冊でここまで網羅されたなという充実ぶりです。

 また、とりあげられる史料も、初学者が読んでいて非常に面白いものが多いです。
 史料はすべて現代語訳が付されていますので、安心してお読みいただけるかと思います。
 旧版は刊行された時代的にDTP(desktop publishing)が未発達だったこともあり、少々読みにくいところもあったのですが、今回はずいぶん読みやすくなっております。
 さらに、巻末には荊木美行先生による解説と、大庭先生の愛弟子である吉村昌之先生による随筆を書き下ろしていただき、大庭先生について深く知ることができるようにもなっています。


それで、どこで買えるの?


 以前、こちらのエントリで書かせていただきましたが、弊社出版物は「委託配本」をやっていませんので、大きな書店さんだから並んでいるとは限りません。
 都内の方は、神保町の内山書店さんや東方書店さんが確実です。

 もちろんAmazonでもお買い上げいただけます。


 送料が少しかかりますが、弊社でも直販をやっております
 こちらはオマケとしてわらび社長名刺がつきますので、ねこ好きの方はよろしければ……。


まだまだ復刊したい!


 本エントリで何度も書いてきましたが、大庭先生は多くの一般書を書かれました。
 それらのなかには『木簡学入門』に劣らずまだまだ寿命を迎えていない本があります。
 このまま埋もれさせておくにはあまりに惜しく、できることならば復刊を……と考えています。
 ここまで長々と書いてきても、うまく魅力を伝えられたか今ひとつ自信がありませんが、『木簡学入門』が堅実に売れれば、大庭先生の他の本も復刊します
 「ちょっと興味あるけど……」という方は、ぜひ図書館へのリクエストなどをお願いできましたら幸いです。
 
 そうそう、カバー袖に一部を入れましたが、2021年はたくさん本を出します。
 日本史分野にも進出していきますので、どうぞご期待ください。

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