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私学における働き方改革の先駆的取組み

こんにちは。
今回は私学における働き方改革についてです。

2019年1月、中央教育審議会で学校における働き方改革に関する答申が取りまとめられ、文科省は上限ガイドラインや休日の「まとめ取り」の推進など「公立学校における働き方改革の推進(全体イメージ)」を提示しました。

こうした流れを受けて、全国の教育委員会が公立学校における労働環境の改善を進める一方、私立学校での取り組みは行政も十分に把握しておらず、不明な部分が多いのが現状です。

そんな中、外部の民間企業との連携など、上からの改革に縛らず私学の特性を活かした働き方改革を進める学校もあります。今回はこうした先駆的取組みをおこなう私学を紹介していきます。

学校法人滝学園(愛知県)

愛知県にある滝中学校・高等学校では総合印刷会社のDNP(大日本印刷株式会社)と連携した働き方改革がおこなわれています。

改革の背景には2000年度から普通科のみの中高一貫校となり、地域・保護者から大学進学実績を求められるようになった一方、多大な業務量による教員の疲弊があるようです。

具体的には、日常のテストから入試まで紙のテストをスキャナで読み取ってPC上で採点できる「デジタル採点支援システム」が採用されています。このシステムは「選択式問題」は自動採点し、「記述式問題」は一覧表示して串刺し採点できることが特長のようです(下図)。

気になる導入後の効果としては、多くの教員の採点時間が2分の1~3分の1ほど軽減されたようです。採点に関しては、教員の「手作業」こそが生徒との対話、といった理念・信念を持つ教員もいるかもしれませんが、自分自身はテスト後に採点をしながら、教材研究の時間を確保することに苦労しているので、そのせいで授業がおざなりになるのであれば、システムに任せるられる部分は任せるべきかと思います。

滝学園のこうした取り組みは教員のスキルアップを図るための時間確保だけでなく従来のテストを見直す意識改革にも繋がることが期待できるでしょう。

(2)聖光高等学校(山口県)

山口県にある聖光高等学校は全館Wi-Fiの整備、電子掲示板システムを活用した情報共有の効率化とともにコンピューター会社のHP(ヒューレット・パッカード)と連携した働き方改革がおこなわれています。具体的にはタブレットが教員用デバイスとして導入され、授業中のプロジェクターへの投影、生徒への行事の連絡、教員同士の情報共有、副教材やテストの作成、成績情報の管理、部活のミーティング(下図)などに使用されているようです。

教員間の情報共有を電子掲示板システムに切り替えたことで、毎朝15分以上かかっていた職員会議が5分かからずに終わるようになったとのことです。また、校内のどこでも仕事ができる環境になったことで、教員が職員室にいる時間が減り、その分生徒と一緒にいる時間が増えるといった教育的効果もあるようです。

こうした私学以外にも、全館Wi-Fi整備、情報共有の効率化、定時の16時20分に退勤できるタイムスケジューリングなどの働き方改革がおこなわれている神奈川県の聖光学院の事例などもあります。

また、2020年6月から私学の労務改革を支援する私学労務研究会によって、私学の働き方改革の取り組みや実現の度合いを労務診断し、「宣言校」・「実践校」・「優良校」の3段階で認証マークを付与する「私学の働き方改革認証制度」が始まりました。私学が労務コンプライアンスを遵守し、教職員の働き方改革の優良校であることを社会に示すことで、社会的信頼力を高め、昨今の採用難の時代において優秀な教職員の募集・採用にも繋げる狙いがあるようです。

公立と比べて遅れをとっている私学の働き方改革を考えていくうえで、上記の私学のような取り組みは、ウィズコロナ・ポストコロナ時代においても求められるモデルケースとして非常に参考になるかと思います。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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