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公立、私立の年収(給与)比較

こんにちは。
今回の記事は公立と私立の給与面の比較・考察についてです。
私学の給与については以下の記事を参照ください。


公立教員と私立教員の待遇の違いについて、関心のある人は少なくないと思いますが、ネットで「公立 私立 教員 給与」などと検索しても、掲載されているデータは以下のよう非常にざっくりとしたものに限られています。

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(https://www.e-staff.jp/reading/2761)

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(https://andcareer.co.jp/teacher-salary/)

そのため、こうしたデータだけ見ると「公立よりも私立の方が給与が高い?」と思うかもしれませんが、そんな単純な話しではありません。
そこで、今回は年齢別や手当別、年代別など複数の観点から公立と私立の給与面を比較・検討していきたいと思います。なお今回は対象を東京都の公立高校・私立高校に絞り比較・検討していきたいと思います。

(1)年齢別の比較

まずは年齢別の年収推移です。以下のグラフをご覧ください。

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※ 私立は調整給、扶養手当、住宅手当、入試手当、その他の手当を含む
※ 公立は調整給、扶養手当、地域手当、特別手当、入試手当を含む
※ 私立は都内私立高校の平均
※ 32歳は(配、子1)、42歳は(配、子3)、52歳は(配、子2)、60歳は(配)で計算

青が公立高校、オレンジが私立高校(平均)の年収推移です。東京都の場合、社会人1年目(22歳)では公立と私立であまり差はありませんが、歳を重ねるごとにその差が開き、特に42歳以降の差が大きくなっています。また、私立高校の教員は50歳前後で年収1000万円を超え、その後も60歳まで上がり続けますが、公立高校の場合52歳の約900万円がピークで、その後60歳までは緩やかに減少しています。

(2)手当別の比較

上記のような差がついた一要因は本俸(基本給)の差額にあります。以下の資料のよう、32歳時における公立高校と私立高校の本俸の差は約4.1万円ですが、42歳時では約7,2万円52歳時では約12万円歳を重ねるにつれ本俸の差が大きくなります。

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そのため、扶養手当などの諸手当に大きな差はなく、賞与に関しても私立高校(の平均)が年約4.9カ月、公立高校が約4.5カ月と乗率の差はそこまで大きくないにも関わらず、年収換算すると差額が大きくなります。

(3)年代別の比較

ただ、時代別で年収を比較すると、私立高校の不安要素がみえてきます。以下の資料は平成18年度から29年度までの22歳時(新卒専任)における公立高校と私立高校の教員の年収推移です。上述したよう、公立よりも私立の方が額は高いですが、時代別で見てみると、私立の場合H21年度をピークにその後はゆるやかな減少を続けています。その一方、公立の場合H26年度までは300万台でしたが、H27年度に400万台を超え、その後もゆるやかに増加しています。この傾向はどの年代でも見られます。

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私立高校の減少の背景に少子化があることは間違いないでしょう。生徒数の確保に苦しむ私学で賞与や諸手当の削減がおこなわれたことが平均の減少につながっていると考えられます(本俸は大きな変化なし)。

一方、緩やかな上昇がみられる公立高校の背景には賞与の引き上げが関係していますH28年度に年間4.3カ月から4.4カ月に上がり、翌年度にはさらに0.1カ月引き上げられました。その後も引上げがおこなわれ、令和元年には6年連続となる引上げがおこなわれ4.65カ月まで上がりました。

(4)終わりに

このように複数の観点から公立と私立の給与面を比較・考察してみると、「公立よりも私立のほうが年収(給与)が高い」という単純な話しではないことが見えてきます。

上述したよう、私立教員の年収が減少傾向にありますが、経験上私学では賞与や諸手当が下がることはあっても、上がることは殆どありません。そのため、少子化の進展に伴い私立教員の年収の減少は今後も続いていくことが予想されます。また働き方改革においても私立は公立に遅れをとっているのが現状です。

一方公立教員の年収は増加傾向にありますが、不安要素がないわけではありません。それは景気の影響を受けやすいことです。今年度の公立教員の賞与は新型コロナウイルス流行の影響で景気が後退し、民間企業の支給額が下がったことを受け4.65カ月から4.55カ月に引き下げられました。勤務校の給与面におけるコロナウイスの影響は全くなく、過去のリーマンショック(2008)や東日本大震災(2011)の際もその影響はありませんでした。

比較・考察の結果、公立・私立ともに年収給与)面のメリット・デメリットが見えてきました。また、この傾向は東京都以外の地域でも当てはまる部分もあると思います。今回の記事が教員志望者や転職を志望する先生方などに少しでも役にたてば幸いです。

最後までお読みいただきありがとうございました。



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