託した鍵は、2つある。
コロナ禍でオンラインでの対話活動のボリュームが多くなっていたNPOだっぴですが、今月から学校現場での対話活動も再開しました。
その中で改めて感じたことがあるので、書き残しておきたく、綴ります。
中高生が異なる他者と対話する
僕らがやっている、中学生×大学生×大人の多世代交流プログラム「中学生だっぴ」(高校生は「高校生だっぴ」)では、普段会うことの少ない異なる他者がお互いの経験や価値観を対話の中で共有しながら、学び合う時間を過ごしています。
学校の授業として実施することが多いのですが、学校の中につくられた非日常空間において、中高生たちが表出するペルソナ(仮面)は、普段の学校生活のそれとは異なります。
先生方が、いつもの学校とは違う表情で大学生や大人と話をする中高生の姿を見て、多角的な生徒理解につながっていたりもします。
中高生の表情と鍵の種類
彼らの表情について、大別して2種類あるなと感じています。
それは、「分かりやすい表情」と「分かりにくい表情」です。
なんだそれって感じですがw
展開される対話の中で、大学生や大人たちは、自分の言葉をいくつかの鍵として中高生に託しているようだと、僕は受け取っています。
鍵の種類は、「現在の鍵」と「未来の鍵」の2種類。
言い換えると、「今、目の前の扉を開けるための鍵」と「いつか現れるかもしれない扉を開けるための鍵」です。
託された鍵によってその表情は異なり、それが「分かりやすい表情」と「分かりにくい表情」に対応しているなぁと感じています。
■現在の鍵
「今、目の前の扉を開けるための鍵」は分かりやすい表情(例えば笑顔)をその反応として導きます。
それは、鍵を託した側(話し手)の手応えにもなりやすい。話をして反応があると、嬉しいですよね。
「今、目の前の扉を開けるための鍵」は、中高生にとって刹那的に必要だったものなんだと思います。
今の悩みを解消できることだったり、今の欲求を満たせるものだったり。
■未来の鍵
もう一方で重要なのは、「いつか現れるかもしれない扉を開けるための鍵」で、こっちの場合は、中高生の表情変化として反応が表れることは少ないです。
その鍵が自分にとって必要かどうかを現時点では判断できないので、最適な表情が何か分からないので、反応として表れにくいことは必然だと感じています。
それゆえに、鍵を託した側(話し手)も「伝わってるのかな?」と不安になります。でも、その鍵は今必要じゃないだけで、いつか必要になるかもしれないもの。その鍵は必要となる扉は、どこかの未来で現れるかもしれない。
『下流志向〈学ばない子どもたち 働かない若者たち〉』によると、
学習したことがすぐ役に立って勉強した意味をもつかどうかは分からず、未来のどこかの時点で、学習した過去に意味が付与されることで、等価交換が成立したりする。(と僕は理解しました)
「いつか現れるかもしれない扉を開けるための鍵」もそんな性質をもっているんだと思います。
その言葉は、どっちの鍵だったか
という状況があり、僕が感じたことは、「どっちの鍵も、大事な託したいものである」ということ。
話をしていると反応が欲しいし、無いと不安になります。(少なくとも僕は)
若者と話をしてみて、反応があったら、
「あ、今自分は現在の鍵を託したんだな」
と思い、
反応がなかったら、
「あ、さっきの鍵は未来の鍵だったんだな」
と思えると、託す側の気持ちも楽になるのかなと。
なので、大人から若者へ託す鍵は、きっと誰しもが2種類持っているんだろうなと思うのです。
あと、
①2種類の鍵のバランスも重要
②「託したもの」が全て「受け取られる」わけでもない
という点も大切だなと思います。
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