「1番大切なのは、町の人の共感を得られるかどうか」ゼミ生インタビューvol.2 牛島隆敬さん
自分らしい地域とのかかわり方を模索するオンラインゼミ「滋賀ゼミ2020」。
2020年は、滋賀県の「高島市椋川」と「多賀町」を舞台に8名のゼミ生が参加し、地域に向き合い、アイデアを考えました。
この記事では、ゼミの参加者にインタビューをして、「ゼミを受けて、どう変わったか?」それぞれの視点での気づきを深掘りしていきます。
第2回目
牛島隆敬さん(36歳)
茨城県出身・神奈川県横浜市在住
現在は建築設計事務所を主宰している
ー今回、滋賀ゼミに参加しようと思ったきっかけは何ですか?
妻が仕事で滋賀県の長浜市に転勤になってから、妻から「滋賀県はすごく良いところ」とよく聞いていました。それから僕も妻と一緒に滋賀県を回るようになって。すごく景色が綺麗だなと、良いところだなと感じていました。
僕自身、仕事があれば、滋賀県に移住することも検討していました。なので、ずっと滋賀の移住サイトに登録していたんです。そしたらそのサイト経由で滋賀ゼミの情報が流れてきて、「参加したら、何か仕事のつながりもできるかもしれない」と思って参加しました。
ー奥さんが転勤する前は、滋賀県を訪れたことはありましたか?
転勤する前は、滋賀県にはあまり訪れたことがありませんでした。
旅が好きなので、いろんな場所に訪れていたのですが、滋賀県は旅の途中で通過したり、駅で休憩したり……という感じだったので、観光したこともありませんでした。
ー滋賀県への移住も考えているとのことですが、神奈川県から滋賀県となると、かなり環境が変わりますよね。そのあたりの心配はありませんでしたか?
特に心配はありません。
設計の仕事は、図面を書くこと自体はどこでもできるんです。このような社会情勢になる前からリモートワークも増えていましたし、僕自身、個人事業主なので働く環境に関しては「自由」なんです。
あと、僕も長浜市に通っているうちに、妻がいつも言っていた「長浜にずっといたい」という気持ちがすごく分かるようになったので、移住したいと思うようになりました。
ー牛島さんからみた長浜市の魅力は何ですか?
僕は建築の仕事しているので、建物や民家を見ることが好きなんです。
今住んでいる地域は、建物に安い建材を使っていたり、ハリボテの街並みが続いているんです。それに違和感があって。
長浜市の建築物は、とても良い建材を使っているものが多く、今建てようとするとすごい貴重なものが多いです。何より街の構成がすごく綺麗なんですよね。伊吹山があって、その山脈に沿って並行に田んぼや民家が立ち並んでいて……そういった街の構成は、僕の住んでいる街には無いものだなと感じました。
▲長浜の風景
今まで言語化できていなかった「自分なりの視点」を言葉にできたゼミ
ーゼミを受講をした感想を教えてください。
率直に、すごくためになりました!
こういった講座って有料のものが多いのですが、滋賀ゼミは無料でビジネススキルを学べて、アットホームな雰囲気のゼミですごく良かったです。
また、アイデアを生み出すまでのフローが体系化されていたのも魅力的でした。
ー牛島さん自身、お仕事で地域と関わる事も多いと思うのですが、その中でもゼミで印象に残っている内容はありますか?
講師の岩嵜さんの講座の中で「Finding」という概念が出てきたんですが、それが印象に残っています。
フィールドワークをしていると、「街の課題はこうである」という事実(Fact)はすぐに見つかるんです。でも、1番大切なのは、課題ではなく「自分なりの視点・自分なりの発見(Finding)」で、ゼミの中で、初めて自分の「Finding」を言語化することができました。
また、街の「課題」となると、ネガティブなものに着目してしまうことが多いのですが、「Finding」はポジティブなことも見つけることができるので、すごく前向きな気持ちで取り組めましたね。
▲ゼミでは、フィールドワークに行った後、気づきをみんなで出し合い、自分の発見を言語化し(Finding)、アイデアを生み出すという流れでアイデアの創出を行いました。
ー牛島さんは、Findingでどんな気づきがありましたか?
僕はフィールドワークで多賀町に行きました。多賀町は土地の85%が森林のため、木材が強みの地域なんです。僕は、林業を生業としてきた多賀町の人々が、「どういう風に木を扱ってきたのか」というところに着目しました。
その時に気づいたのは、多賀町の人々は、木材を人のために、他人のために使ってきたということです。この気づきを基にアイデアを考えました。
ーフィールドワークで多賀町にいったのは初めてですか?
いえ、多賀町には何度か訪れていて、多賀町の川沿いを車で走った時に、すごく水が綺麗だったことが印象に残っています。
木を使ってアイデアを考えるという部分に関しては、今回のフィールドワークで着想を得ましたね。
今回のフィールドワークでは、多賀町の色々な人とお話しするきっかけがあったのですが、誰ひとりとして嫌な顔をする人がおらず、皆さんあたたかく迎えてくれたのが印象的でした。
自分のアイデアに「共感」してくれる人がいるかどうかが大切
牛島さんは、多賀町の人々がこれまで「木」を縁起物として扱い、「他へ」使ってきたことに着目し、多賀町の人々が木を「他が為」に使うことを地域のブランドとし、贈り物の製品を作る「たがため」という事業アイデアを考えました。
▲牛島さんのプレゼンテーション資料
ーアイデアを作っていく中で、重視していた点は?
必ず周りの反応をみるようにしていました。僕は、自分のアイデアに対して、周りからの共感が得られなかったら、どんなにFactやFidingが正しくても、そのアイデアは良いものじゃ無いと思っています。仕事でも、みんなでアイデア出しをする場面があるんですが、良いアイデアの時は満場一致で「これいいね!」となることが多いです。なので、今回も自分のアイデアを周りの人に話して、反応をみるようにしていましたね。
ーアイデアを考える中で、大変だったことはありましたか?
アイデアを考えるまではスムーズだったのですが、今後、実行していくことを考えた時に色々とハードルがあるなと感じています。
多賀町発信のブランドを作りたいと思っているので、多賀の町の人からの共感が得られるかどうかが1番大事だと考えています。色々なハードルの中で、そこが1番難しい部分ではないかと感じています。
滋賀県は、どんどん人がつながっていく場所
ー今回、ゼミに参加してみて、滋賀県のイメージに何か変化はありましたか?
妻が滋賀県を好きになった理由の1つに「人が良い」というのがあって。それを僕自身もすごく感じました。滋賀ゼミの運営の中山さんとは、飲みにいく仲にもなりました(笑)
ー現在住んでいる場所と滋賀県の違いはどのようなところがありますか?
今はマンションに住んでいることもあって、地域の関わりがあまり無いんです。それは少し寂しく感じますね。
一方で、滋賀県は、どんどん人がつながっていく感じがあります。中山さんと飲みに行った時も、「今日、もう1人呼んでもいいですか?」みたいな感じで、人の輪がどんどん広がっていきます。
妻も、長浜市の人とすごく仲良くなっていますよ。
ー今後挑戦してみたいことはありますか?
本業は建築の設計なので、地域のコンサルティングや、地域づくりから建物を作るまでを一貫して滋賀県でやってみたいと思っています。
ほとんどの公共事業は、建物を作るだけ作って、そのあと何をするのか決まっていないことが多いんです。なので、建物を作る理由やどういう建物を作っていくのか、というディスカッションを行いながら、建物を作っていきたいと思っています。
ーたくさんの学びがあった滋賀ゼミ、どんな人に参加してほしいと思いますか?
滋賀県が好きな人に参加して欲しいです。
地域に興味がない状態で参加すると、アイデアに自分のビジネスを絡め過ぎたり、スキルアップのための参加になってしまって、地域そのものに向き合うことが難しくなるでのではないかな?と感じます。
なので、純粋に滋賀県のことを考えられる人だと、地域に向き合いながらアイデアを考えることができると思います。
ーありがとうございました!
人の想いを大切にしながらアイデアを形にした牛島さん。
「共感」に重きをおいている牛島さんだからこそ、多賀町の人々を置いてけぼりにせずに、多賀町の人と一緒に成長していける事業を生み出せたんだと思います。
「たがため」が形になる日がとても楽しみです。牛島さん、ありがとうございました!(インタビュー・テキスト 南 歩実)
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