滋賀の良い店やばい店 彦根編 その①

滋賀県中を飛び回っていても、ここまで個性を主張してくる街は他にない。城があり、イカしたコーヒースタンドがあり、老舗の洋食屋があるかと思えば爆盛りの食堂もあり、都会の真ん中にあるようなセレクトショップも古本屋も焼き菓子屋も予約の取れないイタリアンも揃っている。彦根は彦根だけで街が完結してしまう、完全な独立国家なのだ。彦根は滋賀の前に彦根であって、個人的にはローマにあるバチカン市国的な位置付けだと思っている。(例えの一つ)

しかもやたらとセンスの良い独立系店舗が多いだけでなく、ガラスの鮎が突き刺さっているグラスを制作する作家やガラスの廃材を用いたテラリウムを制作する「ハコミドリ」、ピンク以外の色を失ったアクセサリー店など、超エッジの効いた個性派アーティストがわんさかひしめいている。彦根という街は正直群を抜いている。

そう、この街には観光地とは別の文化がある。個性を育てる土壌がある。この街の裾野は計り知れず、その可能性はびわ湖のごとくどこまでも広がっていくのである。

良い店★★★★★
MICRO-LADY COFFEE STAND
東京でスペシャルティコーヒーなるものが持てはやされるずっと前から駅ナカにあるコーヒースタンド。ブルーボトルの日本第一号店がオープンしたのは2015年、この店がオープンしたのは2013年。彦根には清澄白河より2年も前にスペシャルティコーヒーが浸透していたのだ。駅構内の倉庫を改装した空間にイギリスのヴィンテージ家具を配した店内もかなり流行を先取りしていて、都会のあらゆるコーヒースタンドはこの店を参考にしたのではないかと疑いたくなる。
ジャンル:コーヒースタンド

良い店★★★★★
The Good Luck Store
彦根市民の豊かな暮らしを支え続けて来た名店。誰もが入口のオーラで全てを悟る。しかし店主が直接現地を訪ねセレクトして来た日本各地の作家ものもさることながら、リトアニアの陶器やインドのハンモック、西アフリカのカゴにここ彦根で出会えるとは、多くの人は想像しないだろう。発酵BARや小さなインドマーケット、麦わら帽子即売会などナイスなイベントも多数開催。俊彦窯や牧谷窯など国内屈指の人気作家の器も揃い、自分の部屋を模様替えしたくなる衝動に駆られる。
ジャンル:生活道具

良い店★★★★★
半月舎
The Good Luck Storeから徒歩5歩。本の豊かさを教えてくれる、古本屋だけど雑貨もある彦根の宝箱。雑誌、絵本、歴史、民俗、宗教など、小さいながらそのラインアップは半端ない。地元の人から持ち込まれた本も多数あり、一部郷土資料館的役割も果たしている。極小空間ながらはちみつとチーズの会や詩であそぼうワークショップなどの素敵イベントも開催し、街の本屋代表としてなぜかこっちが胸を張りたくなる。
ジャンル:古本

良い店★★★★★
&Anne
洋菓子店、雑貨店、ギャラリー、本屋が一つになった洗練され過ぎた空間にそわそわ。逆に何か滋賀らしいオチが欲しくなるけど、そんなものは一つもない。料理、暮らし、旅、生き方、デザインなど、完璧にセレクトされたコンセプチュアルな本棚に圧倒され、高い確率で本を買う。手前の洋菓子部門では種類豊富な焼き菓子、ショーケースに並ぶマフィン、ちょこんとイチゴがのったショートケーキなど結局一通り購入し、複合ショップという迷宮でこの日一番の散財をする。
ジャンル:洋菓子、ギャラリー、書店

やばい店★★★★★
すぎもと
これぞ滋賀盛り!と叫びたくなる満腹食堂。砂利道と舗装道路の間のような不自然な狭さの道沿いにあり、彦根城の目と鼻の先なのに観光客に気づかれにくい。からあげ定食はこぶし大のからあげが皿の上にてんこ盛りで650円。滋賀=爆盛りの方程式を全力で体現している。ちなみにおかずの大盛りはプラス50円。
ジャンル:食堂 ランチ:◎

やば良い店★★★★★
SUN-BURGER 彦根クレープ
2007年にオープンしたハンバーガーの店と2012年にオープンしたクレープの店が一緒になった、パンケーキの美味しい店。アメリカのハンバーガー店を思わせるウッディな佇まいながら、数歩引いてみると古き良き昭和の面影を残す食堂・すぎもとと同じ建物になっている。このカオスこそ滋賀の醍醐味。ハンバーガーが食べたかったのに気づいたらからあげ定食を食べていた、なんて珍事件も発生しかねない。彦根を代表する絶品バーガーか、爆盛りからあげ定食か、究極の選択を迫られる。
ジャンル:ハンバーガー、クレープ、パンケーキ 

やば良い店★★★★★
グリル・フレーバー
外観や入口のショーケースだけで泣けてくる、彦根というか滋賀が誇るべき洋食店。中に入れば感動もひとしお。そしてハンバーグ、オムライス、ビーフシチュー、ハヤシライスなんて超正統派メニューを差し出されたら、もうただただ感謝するしかない。とにかくメニューはなんでもOK。どれを食べてもそのひと口目で、街の文化遺産とはこういうことだと思い知らされる。特にあの波線を打ったポテトには胸が熱くなる。ハニカミ笑顔が最高のシェフと、いくよくるよ並みのコントを繰り広げる女性2人組は親しみやすさ200%。裏口の哀愁漂う路地も必見。
ジャンル:洋食 ランチ:◎

やば良い店★★★★★
パーラー風月
グリル・フレーバーの対岸にある秘密の階段を見つけたら最後、きっと誰もが吸い込まれていく。1階は彦根の一大産業である「バルブ」を具現化した銘菓「バルブもなか」を販売する風月堂。その2階にあるのが、これまた足を踏み込んだだけで泣きそうになるThe・飴色の喫茶店。ここで生搾りのレモンスカッシュを飲んだ日が、真のレモンスカッシュ記念日となる。
ジャンル:喫茶店

良い店★★★★★
Calo Angelo
彦根の文化レベルの高さを物語る、花屋&セレクトショップ。何せ都会のカフェがこぞってドライフラワーを飾る10年も前から、店の天井いっぱいにありったけのドライフラワーを吊るしていた。2階のセレクトショップも秀逸で、独創的なデザインが人気の服飾ブランド「masaco.」シリーズや一点もののアクセサリーなど、代官山のオサレなショップも顔負けの品揃え。ちなみにドライフラワーの花束は数百円~1000円ちょっとくらい。同じくらいのドライの花束を東京のカフェで数千円で売っているのを見たことがある。
ジャンル:フラワー&セレクトショップ

やばい店★★★★★
MARLEY KITCHEN
どこを切り取っても絵になりそうな空間なのにインスタグラマーがいないのは、ここが彦根という街だから。大きな倉庫を改装した超開放的な空間でシャッター音を気にすることなく、レコードの音に耳を傾ける贅沢がここ彦根では可能なのだ。時折レゲエ調の音楽が流れ、店名の綴りからボブ・マーリーのファンかと思いきや、読み方は「マーレーキッチン」でまさかの「みんなあつマーレー!」の意。願い叶ってか店には全国を旅する自転車乗りや街の背景に馴染みにくいアメリカ人2人組など珍客も度々訪れる。
ジャンル:カフェ ランチ:◎

やば良い店★★★★★
スイス
これぞ彦根の顔。彦根城を目指すか、スイスを目指すか二者択一を迫られてもおかしくない地元が誇る名店。ロッジ風の建物の外観一面を蔦が覆う様相は、あのラ・コリーナにも負けず劣らずのインパクト。そして扉を開ければ目に飛び込んでくるTHE・クラシックな世界に拍手喝采を送りたくなる。しかしここまで客を魅了しておきながら、絶品ハンバーグ500円という脅威の価格設定でひと山もふた山も越えてくるところがさすが滋賀。いやさすがスイス。
ジャンル:喫茶店 ランチ:◎◎

やばい店★★★★★
市場の食堂
畑の真ん中で海鮮丼を食べる、なんとも滋賀らしいチグハグな思い出を作れる場所。卸売市場の中にもう一つ箱がある、マトリョーシカ的空間が市場の食堂。マグロやらイクラやら7種の海の幸がてんこ盛りで790円と、新鮮な海の幸も滋賀の手にかかればこの価格。ちなみにマグロの中落ち丼は890円。築地で2000円で海鮮丼を食べたこと思い出した。
ジャンル:海鮮丼 ランチ:◎

やばい店★★★★★★★★★★
やきとりまんま工務店
昼間は大工、夜は焼き鳥。前後の脈絡がないのは滋賀では慣れっこ。大工である店主が隣のテナントを工事したことで物件を譲り受けたという珍エピソードだけで満足なのに、ここでまさかの元料理人である店主が手腕を発揮。大工なので内装はもちろん、米、野菜、焼き鳥のタレまで全て手がけてしまった。ふなずしも仕込めば鴨も狩る。2020年現在現存が未確認であるものの、口に出して言いたくなる名前を紹介したいのでピックアップ。ちなみに水曜レディースデー。映画を取るか、焼き鳥を取るかは苦渋の選択。
ジャンル:やきとり ランチ:無

良い店★★★★★
Clap dining
滋賀県立大のキャンパス内にあると言っても過言ではない一見ナチュラル志向のカフェ。しかしどんな腹ペコ大学生も迎え撃つAランチは爆盛り食堂といい勝負。カフェと言いながらイタリアン出身で料理が本格的なのも好印象。そしておすすめは自家製角煮の石焼豚キムチという前後左右の噛み合わなさも滋賀らしくてグッド。極め付けは店主がダイアン津田氏のお兄さんと言う小ネタもあり。そこを全くウリにしていないところに料理人としての心意気を感じる。
ジャンル:カフェ ランチ:◎

良い店★★★★★★★★★★
VOID A PART
ガラスの廃材を利用したテラリウム「ハコミドリ」のアトリエ兼カフェ。滋賀を代表するカルチャーの発信基地とかいうものすごく陳腐な言葉しか思い浮かばないのが不甲斐ない。とにかく倉庫改装系意識高いコーヒー店も、本家ブルックリンのアーティストもびっくりの洗練空間。そしてきっと家賃は彼らの1/10ほど。改めて思う。滋賀の可能性は無限大。
ジャンル:アトリエ、カフェ ランチ:無

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