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ダブルイリミネーション方式の大会運営を考えてみる。


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オリンピックが終わり、パラリンピックの番になるわけですが、
野球の種目において、分かりづらい方式だというコメントがありました。

実際はこちら

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これは結果ではあるが、上から見ると日本とアメリカが対戦したにも関わらず、トーナメントの下にもアメリカが出てきており、結果として決勝でもう一度日本と対戦している。

日本とメキシコ以外同じ国が2回登場しているトーナメント。
初見だと確かに分かりづらい。


ただ、これはほぼダブルイリミネーション方式のトーナメントなのだ。

今回は、このダブルイリミネーションの大会について見ていく。


ダブルイリミネーション方式とは?

毎度のことから、言葉の説明から。

イリミネーションとは、もともとは排除という意味の言葉で、転じてスポーツの予選の意味があります。

それが、ダブル、2回という意味ですが。


しっかり話すと、優勝者以外2回負けるまで行う方式になります。
つまり、1回負けてもチャンスがあることになります。


敗者復活戦は、一部について1回負けてもチャンスを与えることですが、それが全チームに1回負けられるチャンスを与える方式です。


具体的にトーナメント表を使いながら説明すると、
はじめは、全員Winners トーナメントからスタートします。

そして、普通に1回戦を行います。

スクリーンショット 2021-08-22 181348


当然、試合を行うので、勝者と敗者がでます。勝者は普通にWinners トーナメントを勝ち上がります。


そして、ここから変わってきます。普通のトーナメントであれば、敗者はそこで終わりなのですが、ダブルイリミネーション方式は1回負けてもチャンスがあります。


敗者は全員Losers トーナメントに移動します。

スクリーンショット 2021-08-22 181408

敗者はこのLosers トーナメントを勝ち上がり、優勝を目指すことになります。


ただ、このLosers トーナメントは普通ではありません。Winners トーナメントは進むごとにどんどん敗者が出てくることになりますが、負けたところに応じてLosers トーナメントではシードの形で参加することになります。

当然、Winners トーナメントの決勝で負けた場合も、Losers トーナメントにくることになりますが、いきなりLosers トーナメントの決勝からすることになります。


先にWinners トーナメントの勝者が決まり、あとからLosers トーナメントの勝者が決まります。そして、この2つのトーナメントの勝者がグランドファイナルの形で試合します。


しかし、グランドファイナルの勝者が単純にこの方式での優勝者ではありません。

2回負けるまで行うのが、ダブルイリミネーション方式です。
Losers トーナメントの勝者は、必ず1敗しているため、
Losers トーナメントの勝者が負け、Winners トーナメントの勝者が勝った場合、勝者以外2敗した状態になるため、そのまま優勝者になります。


ただ、Winners トーナメントの勝者は、それまでに1度も負けていないため、グランドファイナルで負けても通算で1敗です。

そのため、まだ1敗同士のため、どちらかが2敗にならないといけないため、グランドファイナルのあとに再度試合をすることになります。

これをリセットともプレーオフとも呼び方は様々です。


以上が、"完全"ダブルイリミネーション方式です。



で、なぜ  ”完全”  と言っているのかというと、

グランドファイナルでの説明で、Winners トーナメントの勝者が負けた場合、もう一度試合を行うと説明しました。


ただ、普通の感覚であれば、2回連続して試合を行うことに違和感を持つと思います。

Losers トーナメントの勝者が勝ったのだから、優勝ではないのか?



そのため、グランドファイナルの扱いについて、グランドファイナルの勝者が優勝という風にすることが多いです。観客側としては優勝が決まる試合だとはっきりわかります。

野球の大会方式は、グランドファイナルに該当する決勝がこのような扱いのため、上では   ”ほぼ”   というふうに説明しました。

以上が、

ダブルイリミネーション方式の説明でした。

ダブルイリミネーション方式と対になる言い方として、通常のトーナメント方式(1回負けたら終了)はシングルイリミネーション方式と言います。



メリット・デメリット


メリット

まず、メリットは、トーナメントの組み合わせ決定で、よく”くじ運”が絡むことがあります。

場合によっては、強豪がトーナメント序盤で激突して、その分強豪が全然いない組み合わせが出てきます。
そのため、くじ運次第で、トーナメント上位に上がる確率が変わってしまいます。

しかし、ダブルイリミネーション方式の場合、”くじ運”により序盤に敗退してしまっても、再度勝ち上がるチャンスがあるため、トーナメント順位に実力が反映されやすくなります。

また、Losers トーナメントを行うため、通常のトーナメントよりも細かく順位がでる点です。通常トーナメントはベスト8、ベスト4という形で、ベスト8の中でも優劣は出ませんが、Losers トーナメントを行うことで、5−6位、7−8位くらいまで絞ることができます。


また、各チーム2敗するまで行うため、どのチームも最低2試合は行うことになり、試合経験を積む意味では、リーグ戦(総当り)に劣るものの、シングルイリミネーション方式よりも良いです。


(2022.09.14追加パート)

シングルイリミネーションのトーナメントとは違い、
Loserトーナメントでの”負けたら敗退決定”というお互いに譲れない試合

という演出ができ、実際もう負けられない中、Loserトーナメントを勝ち進むというドラマが生まれるかもしれません。
つまり、Winnerトーナメントだけでなく、Loserトーナメントでも見せ場・盛り上がりのポイントが生まれるため、それだけ観客を惹き付けることができます。

2022年シーズンのValorant世界大会におけるZETA DIVISIONの世界3位への快進撃は、早々にLoserトーナメントに落ちてから勝ち上がることで生まれました。


ただ、Winnerトーナメントが巨大すぎると、試合数の多さから大会全体が間延びするため、16チーム以下であることが必須だと思われます。

(追加パート 終わり)




デメリット


そして、デメリットですが、直前の試合数が増えるということがそのまま大会期間が長くなるという意味で、デメリットになりえます。

重大なデメリットとして、大会進行上、トーナメント上位になる程、試合待ちの時間ができてしまうことです。


以下に試合進行について番号を振っていますが、Winners トーナメントの勝者は、Losers トーナメントの勝者が決まるまでの間待つことになります。

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これは、特に同日中にダブルイリミネーション方式の試合をすべて終わらせようとすると確実に発生します。



(2022.9.14 追加パート)

参加者人数に対して柔軟に対応できない。

完全ランダムで、トーナメントを作成する場合、ここの話は関係ありません。ただ、参加者の強さを多少考慮してトーナメントを組む方向けです。

大会参加数は定員に満たない場合は、その時々でシードを作るなどして調整する必要があります。

その際、シードにはトーナメント上位有力者を入れておくなどの考慮することがあるでしょう。


もちろん、ダブルイリミネーションにおいてもシードをつくることで、参加者奇数であってもトーナメントを組むことができます。

ただ、奇数であるため、Winner トーナメントだけでなく、Loserトーナメントでもシードを作らなければなりません。
これは、文字ではイメージが湧きにくいため、実際にTonamelで仮想トーナメントを作って説明します。


参加者は9 そのため、1つシードをつくることになります。

WinnerトーナメントのW1-1が先に行われますが、ここでLoserトーナメントに落ちるプレイヤーが出てきます。

そして、当然Loserトーナメントも進めていかなければなりませんが、
W1-1の敗者の対戦相手をどうするかという問題が出てきます。
ここでは、W2-4の敗者を充てていますが、2回戦の他の敗者とそこで差が出てしまいます。

Winnerトーナメント上では、W1-1以外、公平になっていますが、Loserまで考えると、W1-1 以外にW2-4 の敗者も負担が増え、敗者となった場合のみ不利なトーナメントになり、変則的となります。


ある程度、実力を考慮した形でトーナメントを組むとなると、シード以上にこのトーナメントでいう、W2-4の立ち位置を考慮するのが難しくなります。
また、試合進行においてもWinnerとLoserトーナメントの両方で、対戦相手待ちが発生することになり、運営が難しくなります。



デメリットをメリットに変える手立て

待ち時間ができる、大会期間が長くなるというデメリット。

これは、メリットに変えることができます。

待ち時間=休養

正しく、野球が良い例です。高校野球でもプロ野球でも、投手が連投することは怪我のリスクやパフォーマンスの低下など、良くないとされています。

特に、トーナメント方式の場合、試合が連続するため、連投が起こる可能性が非常に高くなります。


しかし、ダブルイリミネーションのWinners  トーナメントの上位は、Losers トーナメントでの試合結果待ちになることが多いです。

しかし野球の場合、この”待ち”の期間が、退屈な”待ち”ではなく、”休養”になるのです。そのため、Winners トーナメントの上位は、Winners トーナメントを勝ち上がった分、”休養”というアドバンテージが得られることになります。

つまり、消耗が激しい種目については、”待ち”=”休養”のため、選手側にメリットがあります。

待ち時間ができないような数日に分けてのスケジュール

次に、デメリットをデメリットではなくなる手立てとして、大会を数日に分け、試合スケジュールを固めてしまうことです。


どういうことかというと、

試合を”待つ”ことにおいて、何が一番ストレスになりやすいかというと、同日中に、試合を行って、2試合くらい待って、再び試合という場合です。

単純にその日に1試合あるものの、出番が夜だという場合は、ストレスの度合いはそこまで高くないということです。


そのため、同日中での試合の合間の待ち時間がないように大会スケジュールを組んでしまうことです。

上に出したトーナメント表を使うと

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①~③までを1日目に行い、残りの④~⑥までを2日目として行うと試合の合間という意味ではなくなります。


試合そのものの時間が短い

(2022.09.14追加パート)

デメリットとして上げている対戦相手待ちが必ず発生し、試合までの開き時間ができることについては、
目下CoDやValorant、この記事の導入でも述べた一般スポーツなど1時間以上試合時間がかかるものを想定しています。

ただ、シンプルに試合時間が極端な話、3分の試合であれば、試合合間の待ち時間も10・15分までに縮小されることになります。

その場合、デメリットになることはありません。むしろ、そのような競技であれば、大会というのに早々とシングルイリミネーションで敗退してしまうと、満足に大会参加したという実感を参加者に与えにくいでしょう。ダブルイリミネーションにすることで、試合回数を増やすことも参加者満足度が上がる要因にもなることでしょう。


ただ、試合時間が短いことで、運営側がスムーズに大会運営できるスキルが必要になります。それは、試合を始めるまでの対戦相手の誘導や試合結果管理などが試合時間が短いことで絶え間なく行うことになります
そのため、人員を増やすや大会運営ツールの利用などを検討し、運営側の負担を減らすことを念頭に置くことが大切です。


オープン参加ではなく、招待制や予選ありとする

参加者問題については、参加者が未定となると、シードの問題が出てくることになります。

そのため、予めダブルイリミネーショントーナメントの参加者を確定してしまうのが、解決策になります。


ダブルイリミネーションのメリットとして、試合数が多くなることや運の要素が少なくなるメリットを組み合わせると、

招待制で観たい観客が多いインフルエンサーや実力者を招待した大会で、本気の試合をしてもらうこと
また、予選を勝ち上がった実力者同士、真の実力をはっきりさせるためのガチ試合を行うこと

に不都合なく、ダブルイリミネーション式のトーナメントを組み込むことができ、またデメリットを解消するどころか、
普段シングルイリミネーションで行うところを、”特別”に行うという印象を与えることも可能となります。


ダブルイリミネーション方式 活用例

ダブルイリミネーション方式を単にやるのではなく、その際のアイディア(Tonamelでの)になります。

普通に考えれば、ダブルイリミネーションなので、必ず最初全チームWinnerトーナメントからスタートします。負けることで、Loserトーナメントに落ちる。


そうではなく、最初からLoserトーナメントスタートの参加者がいるトーナメント方式があります。

私がメイン扱う、CoDにおいては割りとオーソドックスになりつつある形態です。(CDLでは、今年は、通常のダブルイリミネーション、2021年シーズンがそうれでした。)

直近ではAnotherさんがこの形をとっていました。


これについては、上で述べていた、
Winnerトーナメントでシードができると、Loserトーナメントでも変則になることを応用します。

Winnerトーナメントでわざとシードをつくります。
参加者12のうち、4プレイヤーをLoserトーナメントスタートにします。

そして、最初からLoserトーナメントスタートのプレイヤーを1回戦で負けにします。

このようにすることで、2回戦負けのプレイヤーはそれぞれ、Loserトーナメントスタートのプレイヤーと戦うこととなり、
あとは通常通りに運営できます。

(追加パート 終わり)



終わりに

ダブルイリミネーション方式について、色々考察してみました。

勝ち続けたものが、トーナメントに勝ち残っていくという、トーナメント方式の魅力を残しつつ、Losersトーナメントからの勝ち上がりで、下剋上が起こるかもしれないという点もあり、ダブルイリミネーション方式はこれはこれで魅力があります。


その意味では、ダブルイリミネーション方式の最大の敵は、運営方法と視聴者への理解のしにくさではないでしょうか。


途中で図としてだしたトーナメント表は、Tonamel というWeb上で簡単に大会運営ができる主催者向けのサービスです。


シングルイリミネーション方式、ダブルイリミネーション方式以外にもスイスドローやフリーフォーオールにも対応しており、私としても何か制約がないのであれば、一番おすすめしております。
(私が運営するCODESレートは残念ながら、レートという制約から使えていません。)


8チームくらいであれば、おそらく管理できそうですので、ぜひチャレンジしてみたいです。

noteの内容に共感していただければ、ぜひともサポートを宜しくお願いします。今後の記事投稿の励みになります。