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国立新美術館「こいのぼりなう!」インスタレーション&トークイベントレポート〈1〉

5月13日(日)国立新美術館で開催されている『こいのぼりなう!』という展示を見にいきました。

わたし的メインイベントは、その会場で開催されるトークイベント。登壇者は、この展示を制作演出したおふたり、テキスタイルデザイナーの須藤玲子さんと、ライゾマティクスの齋藤精一さん。

正直なことを言うと、須藤さんのことはほんのちょっとだけ知ってるくらいだし、ライゾマティクスといえばPerfumeの演出をしている真鍋大度さんの方が有名なのでは…というくらい失礼なわたしの知識レベル。加えて、”こいのぼり”にはなんの思い入れもない…

なぜそんなわたしが、わざわざ新幹線に乗ってまで行ったかというと、理由は以下2点です。

・筋金入りの『布好き』なので。
・ベテランテキスタイルデザイナーとテクノロジーの先端を行く人のトークって何を話すの?という好奇心。


当日は大雨予報でしたが、さいわい降り出す前に会場に到着。とはいえ地下鉄直結ですから、つくづく大きな施設は便利ですね。入り口で目線を上げると、なんか、いる。

会場に入ると「広っ!!」と、一瞬ひるむ。もうちょっとこぢんまりした展示かと思っていました。だって、無料だし。

トークイベントの前にたっぷり1時間は鑑賞時間を設けていたので十分かと思いきや、正直わたしには全然足りなかった。

広大な空間をのびのび泳ぐ、目の前を横切る大量の”こいのぼり”。大きな目があってひれがあって…というステレオタイプな”こいのぼり”が頭のなかにあると、こいのぼりというか、ぱっと見、筒です、が。ここまで削ぎ落としたフォルムにしたのは、フランス人”展示デザイナー”のアドリアン・ガルデール氏の発案なのだとか。

フランス人からしたら「なぜ男の子の成長を祝うためにデカイ布製の魚を空に泳がせるのか?」そもそも謎だったそう。そりゃそうだろうし、今回の展示はシンプルなボディだからこそ、テキスタイルの色や柄や織などの質感が効果的に浮かび上がっています。

ちょっと薄暗い照明具合。広さと量に圧倒されますが、だんだん目が慣れてくるととても居心地よい。

会場図で見ると、入り口の外側から白いこいのぼりが入って来て、ぐるりと回りながらカラフルに色を変え、最後に出て行く個体は黒。グラデーションの魚群。

展示物の間も自由自在に動けるので本当に間近で見られるし、群の中に潜り込むと自分も一員になったような視点にもなれます。…ちょっとわたし感情移入しやすい”憑依型”共感タイプなのですっかり魚群の一員でしたが、他の人たちはどんな感じで見てたのかな…

”こいのぼり”はシンプルな筒状なので、覗いて見ると不思議なトンネル感。

(↑ドラえもんでタイムマシンに乗って時間を移動するときって、こんなんじゃなかったっけ?…曖昧すぎる記憶に基づく感想)



そして、会場床には無印良品の”人をダメにするソファ”が…!!至れり尽くせりか!!と思ったら、水の中の岩を模しているのだと後で聞きました。

そうと知ってか知らずか、多くの人がダメになっていました。わたしも御多分に洩れずダメになってきましたが、それにしてもかなり広い空間だったので、なかなか大量のソファです。が、そこはさすが無印良品のアドバイザリーボードを務める須藤さん。協賛万歳。

着物をお召しのお客さんもなぜかとても多くて、ステキ。テキスタイル好きなのでしょうか。わかりますわかります。その気持ちよくわかります。

ステキテキスタイル・オン・ステキテキスタイル。

ただ、お着物…帰りの大雨を思うと心配で仕方なかったけど。

全部で319匹、すべてが異なるテキスタイルでできている

布好きとしてはテンション上がりすぎてもはや息切れ。でも美術館展示なので触れない…様々なテクスチャーを前に触感を駆使できないこのツラみ…

なんて思っていたら!なんと!壁の向こうにすべての使用サンプル生地が!尊い!一日中どころか、わたしはここに一週間いられます。

こんなふうに、生地のスワッチがずらり319種類吊られています。さらに生地と、デザインコンセプトがセットになっていて、こんなかわいいストーリーもあったりして…めまいです。わたくし、幸せすぎてめまいを起こしました

呼吸困難です。ゼエゼエ。


這々の体で”岩”ことソファでゴロンとしながら冷静に眺めていると、布製の筒が、天井からワイヤーで吊られているのです。それが”こいのぼり”に、さらに”魚群”に見えてくるのです。不思議でした。

これが禅文化で言う見立ての美学?とか思ったりして、もう思考回路もはちゃめちゃですが、禅かどうかは置いといて、これが、完全に計算された配置の妙。

この空間に設置された300超の”こいのぼり”のレイアウトが完璧だからそう見えるわけです。流れるような配置、前後左右の程よい距離感がどこも自然で自由さを感じる。天井は決められたポイントからしかワイヤーを張れないし、さらに密集している、という制約の中で一番美しく見せる、自由自在に泳ぐニュアンスを表現するためには、相当な熟考と数々のトライアンドエラーと、苦労があったはず。わたしも曲がりなりにもデザイナーなので、ものすごく響くものがありました。

メイキング動画があるのでぜひ見てほしい。設計・設営の苦労たるや…リスペクトでしかない。

読売新聞が公開しているプレス公開時の動画もありました。上から見る角度は会場になかったからとても新鮮。これ見ると、本当に水族館のイワシの群みたいじゃないか…ワイヤーの束を見てもらえば、いかに緻密な作業か想像できるかと。

もう一度言っておきますけどこれ、無料なんですよ。まあね、私だって相当な布好きでありながら「…こいのぼり?」と最初は食指が動かなかったくらいですからね?でもこれ、いいですよ。色、キレイだし。ご覧の通り撮影可なので、インスタ映え女子、カメラ男子にはおすすめです。(というか、いっぱいいた)


案の定ボリューム過多で対談まで届きませんでした。対談も学びが多すぎたので次の機会にたっぷりと。(また息切れ必至か)

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国立新美術館『こいのぼりなう!』は、5月28日(月)まで開催中です。時間があるひと、六本木〜乃木坂界隈へ用事がある人、営業外回りでちょっと疲れちゃった人。”こいのぼり”の大群を眺めながら、無になるもよし、自分と会話するもよし、ですよ。


さらに、5月26日(土)16:00~16:30/18:00~18:30
『六本木アートナイト2018』に合わせて、サウンドデザインを手掛けているSoftpadがこの日だけのスペシャルライブパフォーマンスを行います。当日は22時まで開館時間も延長です。『六本木アートナイト2018』は街中でアートを楽しめますしね。
…行きたかった!(悔)


国立新美術館のオフィシャルサイトはこちらから。


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